臨床放射線 66巻12号 (2021年11月発行)

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特集　診断の決め手となった画像・所見Ⅱ―消化器

肝胆道―肝細胞癌北尾　梓 , 米田　憲秀 , 小坂　一斗 , 五十嵐　紗耶 , 井上　大 , 扇　尚弘 , 吉田　耕太郎 , 香田　渉 , 小林　聡 , 松井　修 , 蒲田　敏文 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1363-1370

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肝細胞癌は原発性悪性肝腫瘍として最も頻度が高く，我が国における腫瘍死の原因の第5位を占めている。肝細胞癌の診断は背景肝疾患や血清腫瘍マーカーなどの臨床情報を元に，血流画像を中心とした複数の画像所見の組み合わせにより総合的に行われる。肝細胞癌は様々な組織像を反映した多彩な画像所見を呈し，他の結節性病変との鑑別に難渋することもまれではない。本稿では肝細胞癌に特徴的なCTおよびMRI所見のバリエーションについて，症例を提示しながら解説する。

肝胆道―胆管病変鶴﨑　正勝 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1371-1379

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胆管病変と一言に言っても様々な病態が存在し，すべてが画像診断で診断されるわけではない。しかし，胆管が体幹部の深部に位置しているため画像診断の役割は大きい。胆管の良性疾患で最も多いものは胆管結石症である。それに伴う炎症性病態として急性胆管炎，閉塞性黄疸やMirizzi症候群などがある。他に，Lemmel症候群，様々な原因による胆管狭窄，胆管拡張，それに膵・胆管合流異常症を伴うもの，そして肝内結石症が挙げられる。特殊な病態として自己免疫疾患である，原発性硬化性胆管炎（primary sclerosing cholangitis：PSC）やIgG4関連硬化性胆管炎がある。一方，腫瘍性病変はそのほとんどが胆管癌であり，良性の腫瘍性病変は腺腫（adenoma），乳頭腫（adenomatosis，papillomatosis）などがあるがまれである。近年では前癌病変として胆管内上皮内腫瘍（biliary intraepithelial neoplasia：BilIN），胆管内乳頭状腫瘍（intraductal papillary neoplasm of bile duct：IPNB），胆管粘液嚢胞性腫瘍（mucinous cystic neoplasm：MCN）が提唱され注目されている。本稿では主な胆管病変において診断の決め手となった画像・所見について解説する。

肝胆道―良性肝腫瘤市川　新太郎 , 五島　聡 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1381-1389

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良性肝腫瘤の中で圧倒的に頻度の高い疾患は嚢胞と血管腫である。いずれも典型的な画像を呈した場合には診断に迷うことはないが，出血を反復した嚢胞や染まりの遅い血管腫など非典型的な像を呈することもある。また，その他の良性肝腫瘤は多血性の像を呈して肝細胞癌との鑑別が問題となることがある。これら良性肝腫瘤は悪性疾患とは治療方針が異なるため，正確な画像診断を行うことは臨床的な意義が大きい。診断に難渋することもあるが，診断の手がかりとなる特徴的な画像所見を正確に拾い上げることが重要である。本稿では良性肝腫瘤の中で特徴的な画像所見を呈する疾患について症例とともに概説する。なお，本稿で提示するMRI画像はすべてEOBを使用したものである。

肝胆道―びまん性肝疾患原留　弘樹 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1391-1413

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びまん性肝疾患の画像所見は，肝形態異常（肝腫大，変形など），肝実質濃度/信号異常，肝内血流/血管異常，肝内胆管異常，グリソン鞘領域異常（periportal collar/periportal abnormal intensity）などから主に構成される。これらの所見は，各びまん性肝疾患でオーバラップし非特異的であり，血液検査所見などの臨床情報を合わせて総合的に診断する必要があるが，各疾患に特徴的な画像所見も認識されている。また，近年のMRIによる定量的評価のアプローチも進んできており，びまん性肝疾患の診断において，MRエラストグラフィ（MRE），proton density fat fraction（PDFF），R2^＊mapなどの有用性が示されている。本稿では，総論として上記のびまん性肝疾患でみられる画像所見のうち主なものについて概説し，各論として主なびまん性肝疾患について実際の症例を提示しながらキーとなるCTやMRI画像所見などについて解説する。

膵臓―膵管癌神吉　昭彦 , 玉田　勉 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1415-1424

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膵管癌の画像診断において重要となる危険因子やCT・MRI所見について解説する。

膵臓―膵癌と鑑別を要する疾患鈴木　皓佳 , 佐野　勝廣 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1425-1434

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腹部画像診断において膵癌を正しく診断することは極めて重要であるが，逆に膵癌ではないものを正しく膵癌ではない他の疾患であると診断することも侵襲の大きな膵臓の手術や化学療法を安全に避けることにつながり，極めてその臨床的意義の大きなものである。本稿では膵癌と鑑別を要する疾患というテーマで，特に重要と思われる疾患についていかにして「膵癌らしくない」，またより「その他の疾患らしい」を判断していくかを解説していく。

膵臓―膵嚢胞性病変高司　亮 , 山田　康成 , 松本　俊郎 , 浅山　良樹 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1435-1447

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近年の画像診断の進歩，CTやMRIの普及により，偶発的に診断される膵嚢胞性病変は増加の一途をたどっている^1-3）。膵嚢胞性病変には非腫瘍性嚢胞と腫瘍性嚢胞があり，腫瘍性嚢胞には良性から境界悪性，悪性まで様々な種類が含まれ，早急に手術が必要となるものから経過観察が選択されるものまで治療方針も大きく異なる。したがって，不必要な治療介入や適切な治療の遅れを防ぐためにも正確な画像診断を行うことは重要である。

膵臓―膵炎深松　史聡 , 藤永　康成 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1449-1454

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症例は60歳代，男性。検診にて肝機能障害を指摘された。他院の腹部造影CTで膵腫大を認め，精査目的に当院紹介となった。腹部造影CTでは膵体尾部はびまん性に腫大していた。膵実質は単純CTで低濃度を呈し，造影CTでは漸増性に濃染していた。表層は平坦で，内部の敷石状構造は消失していた。腫大した膵実質はT2強調像では淡い高信号を呈していた。膵周囲には膵実質を取り囲むように単純CTで低濃度構造を認めた。造影CTでは漸増性に濃染していた。同構造はT2強調像低信号を呈していた。MR胆管膵管撮像（MR cholangiopancreatography：MRCP）では主膵管に狭細像や描出不良域が散見された。主膵管拡張は認めなかった。血液生化学検査では，IgG4 33mg/dlで，正常範囲内であった。

消化管―消化管癌村木　俊夫 , 笠井　尚史 , 上田　真信 , 鶴丸　大介 , 石神　康生 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1455-1464

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内視鏡の進歩による内視鏡診断学の発展により，消化管癌の診断の主役は内視鏡になりつつある。しかし，CTやMRIの所見が診断の決め手や一助となることがあり，その所見に気づき適切に診断することが重要である。本稿ではいくつかの症例を提示し，特徴的な所見について解説する。

消化管―消化管ヘルニア竹山　信之 , 永井　京子 , 関本　篤人 , 佐藤　秀一 , 橋本　東児 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1465-1480

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腹部ヘルニアは外（腹壁）ヘルニア・内ヘルニア・横隔膜ヘルニアの3つに分類される^1）。ヘルニアの入口部（ヘルニア門）は鼠径管・Winslow孔・食道裂孔といった解剖学的構造のほか，先天的，術後，外傷性が原因となる。小腸・大腸の腸管や腸間膜・大網などの移動性のあるセグメントがヘルニアの内容として陥入する。ヘルニアの名称については脱出する臓器ではなく，ヘルニアの入口部の解剖学的部位で名づけられる。今回は，外ヘルニアと内ヘルニアについて述べる。

消化管―腸管虚血中村　優子 , 近藤　翔太 , 成田　圭吾 , 谷　千尋 , 本田　有紀子 , 立神　史稔 , 粟井　和夫 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1481-1489

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腸管虚血は時間経過とともに腸管壊死や穿孔をきたし，ときに致死的となりえる。このため画像で腸管虚血を迅速に診断，的確な治療に導くことは非常に重要である。腸管虚血は様々な病態によって引き起こされるが，それぞれの病態で腸管虚血に至る経過が異なっており，この違いを十分に把握したうえで画像診断を行う必要がある。よって本稿ではまず腸管虚血の定義や様々な病態における腸管虚血について紹介し，次にそれぞれの病態に基づいた腸管虚血を疑わせるCT画像所見について症例を提示しながら概説する。

消化管―クローン病の診断北詰　良雄 , 竹中　健人 , 藤井　俊光 , 長堀　正和 , 大塚　和朗 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1491-1498

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クローン病は主に若年者に発症し，小腸・大腸を中心に潰瘍，腸管狭窄や瘻孔を生じる，原因不明の肉芽腫性炎症性疾患である。クローン病の診断基準は，内視鏡所見，病理所見が主要所見であり，CT，MRIは診断時の参考という位置づけである。しかしながら，CT，MRI所見が診断における鍵となることも少なくない。本稿では，クローン病の診断についての基本的な知識と，診断の決め手になった画像・所見について初発例を提示しながら解説する。

症例

CTが診断に有用であった帯状疱疹罹患後の偽性腹壁ヘルニアの1例山田　彩 , 山内　哲司 , 前田　新作 , 大倉　享 , 武輪　恵 , 西村　友紀 , 田中　利洋 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1499-1503

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帯状疱疹後運動神経麻痺として，顔面神経が侵されるRamsay-Hunt症候群がよく知られているが，まれに脊髄神経を侵し，偽性腹壁ヘルニアを生じることがある。偽性腹壁ヘルニアによる腹部膨隆は，皮膚科ではよく知られた病態であるが，皮膚科以外の診療科での認知度は高くなく，原因不明の腹部膨隆として腹壁ヘルニアや軟部腫瘍が疑われて画像診断の対象となることがある。今回，CTで診断し得た帯状疱疹罹患後に生じた偽性腹壁ヘルニアの1例を経験したので，診断に有用と思われる画像所見について文献的考察を交えて報告する。

尿管回腸導管による絞扼性腸閉塞の1例西村　俊輔 , 柿原　大輔 , 渡辺　秀幸 , 伊原　浩史 , 前村　大将 , 笠井　尚史 , 野々下　豪 , 久貝　美由紀 , 田辺　嘉高 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1505-1510

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今回我々は，骨盤内臓器全摘出術後に，再建尿管によって小腸の内ヘルニアをきたし，腸閉塞および水腎症を呈した症例を経験した。

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目次 66巻12号 , 2021年11月

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英文目次 66巻12号 , 2021年11月

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次号予告 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1512-1512

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投稿規定 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1513-1513

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編集後記 66巻12号 , 2021年11月 , pp.1514-1514

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基本情報

臨床放射線
66巻12号
(2021年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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