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編集後記
山本 伸一
pp.968
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201046
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今月の特集は,「緩和ケアを通じてみる作業療法の世界」である.緩和ケアという言葉から,終末期や緩和ケア病棟をイメージする方も多いだろう.しかし今さらではあるが,「緩和ケア病棟=看取り」だけではない.診療報酬においても緩和ケア病棟入院料の「通知」に「緩和ケア病棟は(中略)緩和ケアを行うとともに,外来や在宅への円滑な移行も支援する」と記されている.リハビリテーション機能といっていい.また,非がんに対する緩和ケアも注目されるようになってきた.疾患の範囲が作業療法のすべての対象へ広がりをみせている.緩和ケアという概念を正しく理解しなくてはならない.そう思う.
今から約30年前,私が新人OTであったころ,町で運営されていた訪問リハとして対象者のご自宅にうかがったことがある.発症から10数年経っているということのみが知らされていた.私は恐る恐る室内へ.寝たきりのようだ.布団をめくってみる.四肢が過剰に屈曲したままの姿勢で短縮している.上肢は下顎を突き上げるかのよう.苦しそうな声を発する.何もできない私がいた.苦しかった.しかし,それ以上に対象者のつらそうな表情が私の胸に突き刺さった.たった一度だけの訪問で終了した.今でも目に焼きついている.忘れられない経験であった.
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