呼と循ゼミナール
心筋の保護と冠状動脈血流(10)
平野 禎造
1
1高知市立市民病院麻酔科
pp.286
発行日 1981年3月15日
Published Date 1981/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203736
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3.右の冠状動脈血流と右心機能
古典的ではあるが有名な実験で,右心室の自由壁を急速に破壊し,その筋肉としての機能を失なわせても,肺動脈圧が正常ならば,肺循環は充分に保たれると言うStarr (1943)の報告以来,右室自由壁の収縮が,右心機能にどの程度貢献しているかという問題は,多くの研究者を悩ましてきたようである。例えば,犬の右冠状動脈を墓始部で結紮すると,右室自由壁にsystolic bulgingがおこるが,右心機能の低下はみられず,静脈還流を増やすとそのまま拍出量の増加を来す。この解釈として,右心室の機能が,心室中隔の収縮に大きく依存しているためである1)とする考え方がある一方,中隔を非収縮材料で置換しても,心機能にはほとんど影響がみられず,中隔は心室を左右に分割して,両心室の容積を決定する機能の方が主要であるという報告2)もみられるなど,心室中隔の収縮と右心機能との関係は,まだ明確にされていないようである。
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