呼と循ゼミナール
心筋の保護と冠状動脈血流(8)
平野 禎造
1
1高知市立市民病院麻酔科
pp.56
発行日 1981年1月15日
Published Date 1981/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203702
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冠状動脈血流の灌流圧を上昇させることは,病的な心筋組織への血流を維持する上に必要であるが,血圧を上げたことによって,同時に心臓の被る不利な面も併せて考えてみることにする。心筋の活動は酸素を消費するが,その消費の場はSonnenblickらによれば,基礎代謝や脱分極に要する消費から,筋収縮性の発現,それに張力と心拍数で代表されるinternal contractile element work,負荷と筋の短縮が主な因子とされるexternal contractile element workなどであると言う。そして,これらの中でも大部分は,張力と収縮性の発現によって消費されると考えられている。一般に血圧を上昇させる手段として,循環血液量を増加させたり,血管収縮薬を投与するなどの処置がとられるが,心臓を中空の球と仮定した場合,心室壁に生じる張力はLaplaceの法則から内圧と半径に比例するため,preloadの増大は,左心室の拡張終期容積の増大,内圧の上昇,さらに心筋の伸展によるStarling効果などによって,酸素消費の増大がおこると考えられている。
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