呼と循ゼミナール
心筋の保護と冠状動脈血流(11)
平野 禎造
1
1高知市立市民病院麻酔科
pp.386
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203751
- 有料閲覧
- 文献概要
冠状動脈の血流量と灌流圧との関係は,先に述べたように,純粋に灌流圧だけを変化させても,autoregura—tionの可能な範囲内で,血流量はほぼ一定に保たれるが,右冠状動脈の場合は,その範囲がかなり狭く,したがって,血流量は灌流圧の変化と,おおむね平衡して推移するとみてもよいと考えている。これには右冠状動脈の太さや,右心室自由壁の張力,右心室内圧などが関係しているらしいが,norepinephrineを用いて灌流圧を上昇させた時,成犬について左と右の冠状動脈の血流波形を,その基始部に血流計プローブを装着して比較してみると,左冠状動脈の場合は,大きく流れる拡張期血流につづいて,等容収縮期に血流は最低となり,収縮期にも血流の増大はほとんどみられない。これはnorepinephrineのような,血管収縮性の薬剤を用いた場合に,一般に観察される波形であるが1),心筋表層を走る動脈から,心筋内のconductive arteryまで緊張の亢進がおこり,しかも,厚い左心室筋層の収縮によって,収縮期に心筋内へ向う血流が著明に減少するためと解釈している。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.