呼と循ゼミナール
心筋の保護と冠状動脈血流(5)
平野 禎造
1
1高知市立市民病院麻酔科
pp.1102
発行日 1980年10月15日
Published Date 1980/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203643
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第四はnitroglycerinで代表されるタイプで,先に述べたように,左冠状動脈の基始部でみた血流波形は,収縮期に急峻な増大を示して二峰性となり,isoproterenolを投与した時のようにconductive arteryの緊張は低下する。しかし,酸素消費量は増やさないので抵抗血管は弛緩しない。したがって,冠血流量も主に抵抗血管を弛緩させるdipyridamoleの時ほど,著明な増加はみられない,そして,conductive arteryの拡張は側圧を上昇させ,細小動脈血流に対する灌流圧を増大させるため,抵抗血管が弛緩している低酸素領域への血流は促進されると考えている。nitroglycerinでは,さらに前負荷ならびに後負荷を低下させて酸素消費を減らすため,心筋に対する酸素の需給関係はより改善されるであろう。しかし,容量性静脈系の拡張による静脈還流の減少は,心拍出量を減らすため,症例によってはかえって好ましくない結果を招くかも知れない。
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