皮膚病診療 39巻12号 (2017年12月)

特集 乾癬-2017

臨床例

外陰部尋常性乾癬 赤石 奈保美 , 田中 厚
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<症例のポイント>inverse psoriasis(flexural psoriasis)は通常の尋常性乾癬と臨床像が異なり、ときに診断に難渋する。自験例は外陰部、肛囲部、臍部を中心に発赤、びらん、臀裂部に亀裂が出現した。病理検査で乾癬に特徴的な所見であったため、屈側部、間擦部中心に出現した反対型尋常性乾癬(以下、inverse psoriasis)と診断した。

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<症例のポイント>乾癬性紅皮症の治療経過中にnarrow band ultraviolet B(以下、NB-UVB)照射療法を行い膿疱性乾癬が誘発された。IL36RN遺伝子変異検索ではp.Asn47Serのヘテロ変異を認めた。通常はキャリアと解釈されるヘテロ変異症例でもなんらかの複合要因のもとに炎症反応が強く働き、膿疱性乾癬の皮疹が発症する可能性があり、自験例は光線過敏症が要因と考えた。

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<症例のポイント>自験例は25年前に尋常性乾癬として発症し、ステロイド外用やエトレチナート内服、PUVA療法にて加療されていたが12年前に汎発性膿疱性乾癬に移行した。汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン36受容体拮抗因子(IL-36Ra)の機能欠損がみられるものは、IL-36受容体拮抗因子欠損症(deficiency of interleukin-thirty six receptor antagonist、以下、DITRA)と呼ばれている。自験例は尋常性乾癬から移行した汎発性膿疱性乾癬であるが、IL36RN遺伝子複合ヘテロ接合体変異がみられた点でまれな症例と考えられた。

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<症例のポイント>Behcet病とほぼ同時期に発症したと考えられる尋常性乾癬の症例を報告した。Behcet病の病勢と一致して尋常性乾癬の皮疹の改善と悪化がみられた。両疾患の病勢が一致していたことについて、IL-23/Th17軸を介した共通の免疫変調の関与が推察された。

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<症例のポイント>IgG4関連疾患に乾癬様皮疹が出現した症例が報告されているが、自験例では尋常性乾癬にIgG4関連疾患を発症した。尋常性乾癬の経過中に肝機能障害を併発した場合、IgG4関連疾患も鑑別に入れ精査すべきである。

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<症例のポイント>varicella zoster virus(VZV)による神経障害は神経痛が広く知られているが、まれに髄膜炎・脳炎・脊髄炎などの中枢神経系合併症を発症する。われわれは尋常性乾癬に対するadalimumab(ADA)投与中に、VZV髄膜炎を発症した症例を経験した。自験例では、頭痛や髄膜刺激症状が先行し、2日後に左胸背部に水疱が出現した。髄液と水疱内容液のPCRにてVZV-DNAが多量に検出されたため、VZVによる帯状疱疹性髄膜炎と診断しえた。アシクロビル(ACV)を2週間投与した結果、後遺症を伴わずに治癒した。生物学的製剤投与中は帯状疱疹の罹患率が上昇するとの報告もあり、注意が必要である。

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<症例のポイント>生物学的製剤は乾癬、炎症性腸疾患、関節リウマチなどの炎症性疾患に対する高い有効性が認められ、近年、投与例が増加している。生物学的製剤では、さまざまな有害事象が報告されている。このうち、主にTNF-α阻害薬投与中に乾癬様皮疹や膿疱性皮疹の新たな発症もしくは再燃、炎症性腸疾患、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患、血管炎などが出現する現象を逆説的反応(paradoxical reaction)という。逆説的反応に伴う乾癬様皮疹、膿疱性皮疹は重篤な症状を呈する症例もある一方で、適切な治療により、生物学的製剤の継続投与が可能となる場合も多いとされている。今回われわれは、Crohn病に対するインフリキシマブ(レミケード)投与中に頭部に逆説的反応と考えられる乾癬様皮疹が出現した1例を経験したので報告する。

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<症例のポイント>初期において掌蹠角化症と判断しエトレチナートを内服したが効果がなく、角層下、表皮上層の好中球浸潤に注目して、掌蹠の乾癬としてアダリムマブ投与に変更したところ皮疹が顕著に改善した症例を経験した。掌蹠の乾癬(palmoplantar psoriasis)は非常に治療抵抗性と知られているが、自験例は生物学的製剤の使用により長期にわたり良好な経過を維持できている。

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<症例のポイント>生後1ヵ月の乳児に発症した汎発性膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis、以下、GPP)の2例を経験した。乳児発症のGPPは、頸部や鼠径などの間擦部の皮疹から全身に拡大することが多い。確立された治療はないが、外用と全身療法の組み合わせにより集学的に治療を行う。乳児発症GPPはcircinate & annular form psoriasisとの鑑別が困難な軽症例が多い可能性が高く、症例数の少ない本症において、circinate & annular form psoriasisもGPPとして長期間経過を追う必要があると考える。

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<症例のポイント>激しい胆石疝痛発作に伴い発症した汎発性膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis、以下、GPP)の1例を経験した。自験例では肥満、アダリムマブ中止、紅皮症、膿疱化を繰り返していた既往があり、そこに胆嚢由来の炎症が加わり全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome、以下、SIRS)(38℃以上の発熱、脈拍90/分以上、呼吸数20回/分以上、WBC12,000/μl以上)を伴うGPPを発症したと考えた。GPPの誘因増悪因子としては感染症やステロイド投与が多いと報告されている。自験例では胆石疝痛発作後、急速に高度な炎症と膿疱化を生じた。画像所見、血液培養では明らかな胆嚢炎の所見は確認できなかったが、プロカルシトニン(以下、PCT)の上昇を伴っており、感染症の可能性は否定できなかった。胆嚢由来の炎症は乾癬を悪化、膿疱化させる要因であり、注意が必要である。

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<症例のポイント>膿疱性乾癬はしばしば死の転帰をとる重篤な炎症性疾患である。自験例はもともと膿疱性乾癬に罹患していた患者が、急性腎不全により長期臥床となった後、リハビリ開始直後に肺血栓塞栓症を発症し死亡した。長期臥床となるような患者、血栓形成のリスクが高い患者については、離床の際に肺血栓塞栓症に注意する必要があるという。教訓となった症例である。

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<症例のポイント>顎関節に生じた乾癬性関節炎(PsA)により、開口障害を生じた1例を報告した。自験例は皮疹、末梢関節痛の増悪とともに、顎関節痛が出現した。顎関節痛、開口障害を有する乾癬性関節炎患者では、顎関節病変についても精査を行う必要がある。

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<症例のポイント>自験例は末梢および体軸に関節炎の及ぶ重症の関節症性乾癬(PsA)で、疾患活動をコントロールすることに非常に難渋してきた。発症20年後、難治性の腹痛・下痢を生じた。血清アミロイドA蛋白(SAA)の上昇、大腸粘膜生検組織でアミロイド沈着がみられたことから、PsAに続発したAAアミロイドーシスと診断した。アダリムマブの投与を行ったが、腸間膜動脈血栓症により死亡した。まれではあるが、重症のPsAはAAアミロイドーシスの可能性を念頭に置くことが重要である。

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<症例のポイント>指趾炎を伴い、仙腸関節の全強直と竹様脊柱を呈した乾癬性関節炎の症例を経験した。尋常性乾癬と診断されてから10年後に乾癬性関節炎を発症した。ウステキヌマブ開始後、皮疹は改善し、関節炎に効果がみられたが、経過中に手関節と右膝の腫脹・疼痛が生じたため、二次無効と判断しアダリムマブに変更した。アダリムマブ開始後、頸部の運動改善がみられ、関節痛が消失し、皮疹は紅斑のみとなった。

英文抄録

editorial

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乾癬性関節炎(psoriatic arthritis;PsA)は,近年の有効な生物学的製剤の登場によりここ数年たいへん脚光を浴びている. 乾癬はfrom bench to clinicと,from clinic to benchという言葉が両方当てはまる分野に入るだろう.有効な治療薬の参入に伴いPsAの注目度が上がったのは喜ばしいことだが,学会のセミナーをみても,バイオが効いたという当たり前の内容のものばかりで面白くない.昨今の有効な治療薬は,基礎研究があったからこそであることを忘れてはならない.筆者は,2007年に他誌に「関節症性乾癬」というタイトルで総説を書いた1).当時はまだ, 日本語で書かれたPsAの総説論文がほとんどなかった.だったら自分で書いたほうが早い,という思いから書いたが,それから10年経ち,病態に関する新しい知見も次々に報告されている. 本稿では,PsAの病態研究を振り返り,その変遷と最近の研究の動向,ならびに今後の展望について述べる.(「はじめに」より)

topics

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乾癬の病態は,まだまだ未解明な部分は多いが,ここ10年ほどの間での,分子生物学,免疫学の進歩とトランスレーショナルリサーチの発展に伴って,急速に深化をとげた.同時に,病態に深く関与するサイトカインをターゲットにした抗体療法や,その下流のシグナルを抑制する分子標的薬の開発が一気に進んだ.この項では,乾癬の病態理論が,どのように発展深化し,治療がどのように変遷したかについて,その概略を述べる.(「はじめに」より)

蝶の博物詩

生態30 西山 茂夫

治療

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 乾癬は皮膚の慢性炎症性疾患であり,日本における有病率は人口の0.34%と報告されている1).乾癬では皮疹以外にも爪や関節に症状がみられることがあり,爪症状に関しては乾癬患者の66%でみられたとする最近の調査結果もあり,生涯を通してみれば90%近くの患者で認められると推計されている2, 3).一方,皮膚や関節に症状を伴わない爪乾癬の割合は全体の5~10%であり, その場合には爪の臨床所見から爪乾癬を疑い,他の疾患との鑑別を行ったうえで総合的に診断することになる4).そのためには, 特殊な皮膚の付属器官である爪の解剖などの基礎知識に加えて,爪乾癬に特徴的な臨床所見や病理組織学的所見を理解しておく必要がある.また,爪乾癬は一般的に難治性であるものの,局所外用療法でも十分な治療効果が期待でき,免疫抑制薬や生物学的製剤はもちろんのこと,最近ではホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬も有効であることが示されており,重症度や合併症,さらには患者の社会経済状況なども加味したうえで治療戦略を練る必要がある.本稿では,爪症状から爪乾癬を診断するために必要となる基礎知識として,爪乾癬に特徴的な臨床ならびに病理組織学的所見を整理する.そして,爪乾癬に有効とされる治療法をまとめるとともに,治療法の選択や治療に際しての注意点についても述べたい.(「はじめに」より)

学会ハイライト

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この度,東北大学皮膚科学教室が主管を務め,第116回日本皮膚科学会総会を6月2日(金)~4日(日)の3日間,仙台国際センターを会場に開催させていただきました(図1).学会開催の数日前までは,不順な天候が予想されていましたが,会が近づくにしたがい天気予報が改められ,3日間恵まれた天候の中で開催できました.終わってみれば,降り続いていた雨のおかげで,杜の都仙台の魅力を満喫していただけたのではないかと思います.当初,地方開催ということで参加者の減少が懸念されましたが,私たちの予想を上まわる5,000人近い学会員,関連企業の皆様にご参加いただくことができました.(「はじめに」より)

New Drugs

アメナリーフ®錠200 mg
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アメナリーフ®錠200 mg(以下, アメナリーフ錠)は,本邦で創製された非核酸類似体のアメナメビルを有効成分とする新規作用機序の抗ヘルペスウイルス剤である.これまで本邦で承認されている経口抗ヘルペスウイルス剤は,アシクロビル(以下,ACV),ACVのプロドラッグであるバラシクロビル,ペンシクロビルのプロドラッグであるファムシクロビルである.いずれも核酸類似体であり,デオキシグアノシン三リン酸と競合拮抗してウイルスDNAの複製を阻害する.アメナメビルは,ヘルペスウイルスDNAの複製に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することで,抗ウイルス作用を示す.新規作用機序であり, またACV低感受性の水痘・帯状疱疹ウイルス(以下,VZV)にも効果を示すことから,新たな治療の選択肢になり得ると考え,世界に先行して本邦でのアメナリーフ錠の開発を行い,2017年7月に効能・効果を帯状疱疹として製造販売承認を取得し,2017年9月に販売を開始した.

Drug Information

コセンティクス®皮下注150 mg
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セクキヌマブ(遺伝子組換え,以下省略)は,ノバルティス社で開発されたヒトIL-17Aに対するヒト免疫グロブリンG1/κモノクローナル抗体である.セクキヌマブは,IL-17Aを標的とした世界初の薬剤で,IL-17Aに結合しその生物活性を中和することで効果を発揮する.IL-17Aは,Th17細胞に加え,γδT細胞,肥満細胞,好中球などから産生される炎症性サイトカインの1つで, 尋常性乾癬や関節症性乾癬/乾癬性関節炎(psoriatic arthritis,以下PsA)などの自己免疫性あるいは炎症性疾患との関連が示唆されている.セクキヌマブは,2014年12月に本邦において「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬および関節症性乾癬」を効能または効果として承認され,2015年12月には膿疱性乾癬の適応も追加された.

皮心伝心

NEtosisと自己抗原 杉浦 一充

診察室の四季

日記買う 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第150回 浅井 俊弥

ヒアリ刺症にどう対応するか 夏秋 優

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目次

訂正

編集後記・次号予告

皮膚病診療Vol.39 (2017)索引

基本情報

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皮膚病診療
39巻12号 (2017年12月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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