腎と骨代謝 30巻4号 (2017年10月)

特集 副甲状腺─ 病態解明と治療法の進歩

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副甲状腺は,人体でもっとも小さく,同定されたのも遅かった臓器の一つであるが,細胞外液カルシウムイオン濃度の変化を感知し,維持するために不可欠な臓器と考えられている1).このことは,原発性副甲状腺機能亢進症や低下症を想起するだけでも明白であろう.一方で,副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンD の両方の効果が発揮されないと,腎臓でのカルシウムの保持が不十分になることもわかっている2).さらに,腎不全で副甲状腺の腫大が起こることが早い時期に認識されてからは,腎臓と副甲状腺の深い関係がさらに注目を集めてきた3).

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副甲状腺疾患は日常診療で比較的一般的であり,副甲状腺疾患を有する患者の研究により副甲状腺の分化運命決定に関連する多くの分子的シグナル経路が証明された.

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副甲状腺ホルモン(PTH)の合成は,血中カルシウム(Ca)やリン(P)濃度,1,25-水酸化ビタミンD,線維芽細胞増殖因子23 により調節されている.血中Ca濃度の上昇は,Ca 感知受容体の活性化を介し,PTH 産生の抑制,PTH 蛋白の副甲状腺細胞内での分解,PTH 分泌の抑制を惹起する.一方P 濃度の上昇は,PTH mRNAの安定性の促進によりPTH 合成を促進する.1,25-水酸化ビタミンD や線維芽細胞増殖因子23 も,PTH 合成を抑制することが報告されている.これらの因子の作用により,血中PTH 濃度は厳密にコントロールされることになる.

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副甲状腺機能亢進症は,副甲状腺そのものに病因があり,過剰なPTH 分泌により高カルシウム血症を呈する原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)と,慢性腎臓病(CKD)等の二次的な要因により発症する二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)とに分類される.PHPT も,発症機序により家族性と非家族性に大きく分けられ,種々の遺伝子異常が報告されている.CKD に伴うSHPT は,まず副甲状腺過形成を発症し,体細胞突然変異がそれらの増殖を加速することで腫瘍化する.本稿では,PHPTとSHPT の腫瘍化機構について概説する.

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副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)は血中で全長の1-84PTHほか,大小のフラグメントとして存在している.CKD 患者ではリンの蓄積,低カルシウム血症,活性型ビタミンD の減少などにより,代償的にPTH が分泌されるが高度となると二次性副甲状腺機能亢進症を発症する.PTH はCKD 患者の生命予後に影響することから血中PTH 値を適切に評価しコントロールする必要がある.PTH アッセイは現在,第二世代(intact PTH),第三世代(whole PTH)が主流となっている.intact PTH は臨床データが豊富なため使用頻度が高いが,複数の固相抗体,標識抗体の認識部位と測定原理が存在するため測定結果が大きく異なること,1-84 PTH のほか,生理活性の異なる7-84 PTH も認識することが問題となる.またintact PTH の程度,腎機能,CKD-MBD 治療によりwhole PTH の相関が変化する.whole PTH は理論上もっとも正確にCKD 患者の副甲状腺機能を評価できると思われるが,臨床研究からのエビデンスは十分ではなく広く普及していない.PTH アッセイは未だ大きな問題が残されており,引き続き研究会,学会レベルでの前向きな議論が必要であろう.

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PTHの古典的標的臓器は腎臓と骨である.PTH は遠位曲尿細管遠位から接合尿細管にかけて,経細胞性のCa 能動輸送を,ヘンレの上行脚では細胞間隙を介するCa 再吸収を促進する.近位尿細管ではP 再吸収を抑制するとともにCYP27B1 を活性化する.PTH は骨芽細胞への作用を介して破骨細胞形成を促す.骨細胞に対しては,持続的に作用すれば破骨細胞形成を促進し,間欠的に作用すれば骨形成を促進する.PTH 作用の本質は細胞外液のCa 濃度を低下させないことにある.

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近年の研究により,副甲状腺ホルモン(PTH)は従来から知られている標的臓器の腎臓や骨以外にも作用し,ミネラル代謝以外の作用を発揮することが明らかになった.たとえば,脂肪細胞に作用するとカヘキシアの病態形成に関与し,小腸に作用すると尿酸の蓄積を促進する.これらの作用はいずれもPTH 受容体を介したものであることから,今後ますます,さまざまな臓器でPTH の新たな生理作用が見出されてくるかもしれない.

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PTHを上げる古典的因子は三つに大別される.一つ目はP 負荷あるいは高P血症,二つ目の因子は低Ca 血症あるいはCa 摂取不足,三つ目は低25(OH)D または低1,25(OH)2D 血症である.保存期では,たとえば間質性腎炎において低1,25(OH)2D 血症とそれに伴う低Ca 血症によりPTH は高いことが多い.これらの古典的MBD 因子以外の因子にも最近注目が集まっている.肥満やアルドステロン系の亢進や心不全は重要なリスク因子であり,二次性副甲状腺機能亢進症の病態に拍車がかかっている可能性がある.長期透析患者ではおもにMBD 因子が長期に影響した結果,副甲状腺の自律的増殖が完成し,結節性副甲状腺腫大になると,これらの因子を補正するだけでは改善しない.また腎移植後は,びまん性過形成は改善しても結節性の部分は残存し,遷延性副甲状腺機能亢進症となる.

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二次性副甲状腺機能亢進症はCKD 患者,とくに透析患者においてもっとも頻度の高い合併症の一つであり,高回転型骨病変,血管石灰化を介してCKD 患者の予後に深刻な影響を及ぼす.二次性副甲状腺機能亢進症の治療手段はシナカルセト塩酸塩の登場により大きな転換期を迎えたが,新たなカルシウム受容体作動薬の開発により,さらなる管理成績の向上が期待される.近年,二次性副甲状腺機能亢進症の内科的・外科的管理が患者予後の改善につながることが相次いで報告されており,従来以上に根拠に基づいて二次性副甲状腺機能亢進症を管理することが可能となりつつある.本稿では二次性副甲状腺機能亢進症の内科的・外科的管理,およびこれによって期待されるアウトカムへの影響に関して,最近のエビデンスを交えて概説する.

9.PTHrP の新しい役割 竹内 靖博
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副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の惹起因子として同定されたが,その後の研究から,軟骨,血管平滑筋や乳腺など多くの組織において多彩な生理的役割を果たすことが明らかにされてきた.最近ではさらに,悪性腫瘍以外の疾患におけるPTHrP の病態生理学的な意義や,治療の標的としてのPTHrP 作用が注目されている.

巻頭言

メカニカルストレス 田中 栄
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「メカニカルストレス」とは生体内の細胞や組織に負荷される物理的・力学的な刺激を指すが,外来刺激のみならず,細胞や組織の移動,あるいは形態変化に伴って生じる内因性の刺激もこれに含まれる.メカニカルストレスに呼応して,生物には無機的な物質とは異なった反応が生じる.これは組織・細胞がメカニカルストレスを受容した際に,物理的刺激をさまざまな生物学的反応へと変換させる機構を有することによる.動物がメカニカルストレスのない状態で生命を維持することは不可能であり,発生から成長,恒常性維持とその破綻である疾患,そして老化や死に至るまで,すべてのライフステージを通じてメカニカルストレスは根源的な役割を果たす.

連載 Co-medical staffsのためのROD

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アルミニウム(Al)製剤の使用が禁止されて25年 慢性腎臓病(CKD)や透析患者の高リン(P)血症の治療薬として,以前はAl 製剤が世界的に大量に使用された.Alが腸管内でPと不溶性の化合物を形成して,Pの吸収を阻害する効果を利用して,血清P濃度を低下させるための治療法である.おもに水酸化Alゲルとして投与されたが,これは現在でも制酸剤および市販の胃薬(胃散)として,広く使用されている.

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目次

投稿規定

編集後記

第30 巻総目

著者索引

Key word 索引

基本情報

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腎と骨代謝
30巻4号 (2017年10月)
電子版ISSN:2433-2496 印刷版ISSN:0914-5265 日本メディカルセンター

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