臨牀透析 33巻2号 (2017年2月)

CKD貧血ガイドライン-二度の改訂を巡って

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CKDに関するガイドライン作成は,KDOQIガイドライン作成上の大反省を経て,世界的なエビデンスに基づくCKDガイドライン作成をKDIGOに託した.わが国はこの流れに乗らず,KDIGOへのcommentary作成はなく,独自の2度目のガイドライン改訂を断行した.その成否に注目していきたい.

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2015年に改訂されたJSDTの腎性貧血治療ガイドラインの作成方針の概略をまとめた.腎性貧血は,慢性腎臓病(CKD)の代表的合併症である.このガイドラインの目的は,腎性貧血治療を行うことでわが国のCKD患者の予後を改善することである.しかし,その治療には多くの課題があるため,臨床重要課題を定め,治療方針を明確にする必要がある.今回のガイドラインでは,次の四つの課題を設定した.(1)腎性貧血治療の開始基準とすべきヘモグロビン(Hb)値はいくつか?(2)腎性貧血治療として維持すべきHb値はいくつか?(3)赤血球造血刺激因子製剤(ESA)投与に先行する鉄補充療法は勧められるか?(4)鉄補充療法の開始基準は何か?上限を設定すべきか?

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2015年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」では保存期慢性腎臓病(CKD)患者の腎性貧血におけるerythropoiesis stimulating agent(ESA)治療の開始基準ヘモグロビン(Hb)値もしくは治療目標の下限値としてHb 11g/dLと明記しており,日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では目標値設定を避けていることから,相違があるように見える.ただし対象とするユーザーが異なることから臨床現場が混乱する可能性は低く,またいずれに準拠しても患者が不利益を受けるような本質的な違いではない.今後の「CKD診療ガイドライン2018」のための改訂作業においては,この目標値について十分に議論する必要がある.

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わが国においては2004年に血液透析(HD)患者を対象として腎性貧血治療ガイドラインが作成され,その後,保存期慢性腎不全(ND)患者,腹膜透析(PD)患者も対象に組み入れ,2008年,次いで2015年と改訂されてきた.その間世界的には,正常ヘモグロビン(Hb)値を目指して高用量の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を使用する風潮から一転して,Hb値10g/dL以上ではESAは投与すべきではないという極端な方向転換となった.しかしわが国では影響を受けることなく,本邦のエビデンスを基にして堅実な治療開始基準と目標Hb値が提唱され続けてきた.治療開始基準とは,それ以下のHb値が持続することで生命予後や腎予後にとって不利益となる値と判断される.これまでの研究報告の集積からはND患者ではHb値11.0g/dL未満,HD患者では,血液濃縮やわが国独特の採血条件を鑑みHb値10g/dL未満と考えられる.PD患者に関してはきわめて報告に乏しいが,体液量の変動が少ないことからND患者に準ずるものと判断される.ただし,ESA投与開始に際しては事前に鉄欠乏や尿毒症など他の要因を十分に検索するべきである.

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透析患者の貧血にはさまざまな原因があるため,形態学的分類に基づいて貧血の鑑別を進め,原因を明らかにする.透析患者の貧血には,エリスロポエチン(EPO)産生低下による腎性貧血のほか,鉄欠乏,炎症などが関与している.透析患者の腎性貧血に鉄欠乏性貧血が合併することがあるため,鉄代謝をトランスフェリン飽和度(TSAT)と血清フェリチン値で評価する.血清フェリチン値が50ng/mL未満では,鉄欠乏の可能性がある.透析患者の貧血治療では,赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis-stimulating agent;ESA)が通常,投与されるが,明らかに鉄が欠乏している場合には,ESA投与に先行する鉄補充療法は可能である.しかし,鉄の過剰投与は副作用を生じるため,注意を要する.

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腎性貧血の治療において,定期的な鉄動態の評価として血清フェリチンとTSATが推奨されている.日本において,TSATの測定方法間変動は小さいが,血清フェリチンの測定方法間変動は大きく,最大で約1.6倍の系統誤差を認める.そのため,同じガイドラインを用いても測定法で治療内容が有意に変わりうる.ガイドラインで示された鉄補充療法の開始基準値や上限値は大まかな目安として利用すべきである.

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わが国では保存期慢性腎臓病(CKD),血液透析(HD),腹膜透析(PD)に対する鉄剤として,経口製剤と静注製剤が承認されている.鉄剤投与により感染症や心血管系合併症のリスク増加や酸化ストレスの惹起が懸念されるが,これらの影響は鉄剤の投与方法により異なると考えられる.また近年,鉄を有効成分とする経口リン吸着薬(クエン酸第二鉄,スクロオキシ水酸化鉄)による貧血改善効果が示されるようになり,経口的な鉄補充の可能性に関心が向けられるようになった.本稿では鉄投与経路による得失を踏まえて,どのような点に注意して両者を使い分けていくべきかについて解説する.

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KDIGO貧血ガイドラインでは,介入の害と益に関しては,全死亡,透析導入,心血管イベントなどのハードアウトカムが重視され,ソフトアウトカムとしてはQOLが採択された.一方で日本では,とくにアウトカムは明示されなかった.一般に欧米人では日本人に比しCRP値が高く,そのためフェリチン値は高い.よって鉄管理基準に関して日本と明瞭な差がある.欧米でのESA使用を曝露因子としたRCTがESAの副作用を白日の下にさらした.一方で鉄剤使用に関するRCTが臨床上重要なアウトカムを改善したという背景もあり,Iron firstが謳われた.日本でもフェリチン<100ng/mL「かつ」TSAT<20%でしか鉄を投与できなかったが,鉄の囲い込みがない状況下では,「または」に変更された.

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症例は66歳男性で、高血圧性腎硬化症を原疾患とする末期腎不全のため、6年前に腹膜透析を開始した。2ヵ月前に腹膜透析用カテーテルトンネル感染を契機として血液透析に移行し、1ヵ月前から外来維待透析を継続した。突然、左腰背部の激痛が出現し、冷汗・嘔吐も出現した。心電図で心房細動を認め、速やかにニカルジピン持続静脈注射による降圧と、ペンタゾシン筋肉注射による鎮痛をはかった。胸腹部造影CTを撮影し、活動性の左腎動脈出血と診断した。血腫は破綻した腎被膜からretromesenteric plane、さらには前腎傍腔まで及んでいた。発作性心房細動のためワルファリンを内服し、PT-INRが過延長していたため、ビタミンK静脈注射による中和を行った。腎動脈造影で、下極側の複数の分枝にextravasationを認め、N-ブチル-2-シアノアクリレート・ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル混和液による動脈塞栓術を行った。2ヵ月後のCTで血腫は概ね消退し、腫瘍病変は認めなかった。

基本情報

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臨牀透析
33巻2号 (2017年2月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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