BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 65巻4号 (2013年4月)

増大特集 Antibody Update

  • 文献概要を表示

特集の意図

 本特集は現時点での神経筋疾患における自己抗体の位置づけを概観することを目的とした。これらの自己抗体が神経系のいかなる分子を標的にしているのか,その病的意義は何なのか,受動免疫によって病気の移入ができるのか,あるいは単なる疾患マーカーとしての位置づけであるのか,その抗体の除去は疾患の進展抑止・根本的治療に直結すると考えるのかなど,自己抗体の持つ多様な意義についてそれぞれの疾患のエキスパートに執筆いただいた。さらに,自己抗体が拓く治療への道という新たな視点から,アルツハイマー病におけるアミロイド抗体療法,各種変性疾患に対する抗体療法の現況についての項目も加えた。神経疾患の自己抗体研究にいま何が起こっているのか,余すところなくお届けする。

  • 文献概要を表示

はじめに

 自己抗体とは自己抗原に反応する抗体であり,それによって引き起こされる疾患が自己免疫疾患である。自己抗体が反応する自己抗原としてはクロマチンのようにすべての自己細胞が有する分子に対する抗原と,甲状腺におけるサイログロブリンのような特定の臓器の分子に特異的に存在する抗原がある1)。本特集で詳述されている免疫介在性神経疾患における自己抗体の多くは,後者の臓器特異的抗原に反応する抗体である。

 免疫系は病原体などのさまざまな外来抗原に対処する必要性から,リンパ球の一種であるT細胞およびB細胞をつくり出し,自己の防御にあたっている。これらの細胞は1つにつき1種類の受容体を持っており,それぞれT細胞受容体(T cell receptor:TCR)およびB細胞受容体(B cell receptor:BCR)と呼ばれる。TCR,BCRともに抗原を認識することで細胞本体が活性化され,免疫反応を引き起こす。また,さまざまな抗原に対応するために,多様なバリエーションを持った膨大な量が体内に存在している。

 T細胞やB細胞がつくられる過程で,外来抗原に対してではなく,自己抗原に対して反応するリンパ球(自己反応性リンパ球)が産生される機会も数多くあるが,自己トレランス(self-tolerance;自己免疫寛容)と呼ばれる機構が働き,その産生を回避している(具体的なメカニズムは後述)。自己トレランスは,中枢性トレランスと末梢性トレランスの2つに分類されており,前者はT細胞やB細胞がつくり出される一次リンパ組織(胸腺・骨髄)で行われ,後者は一次リンパ組織でつくられたT細胞やB細胞が免疫系の働きをみせる二次リンパ組織(リンパ節など)で行われる。自己免疫疾患の発症にはこれらの自己トレランスの破綻が関与しており,その破綻の原因としてさまざまな因子が考えられている2)(Table1)。

 しかし実際には,ほとんどの免疫介在性神経疾患における自己抗体の産生機序はまだ十分に明らかにはなっていない。その中で比較的研究が進んでいるのは,中枢性トレランスの異常が主体の重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)と末梢性トレランスの異常と関連する分子相同性(molecular mimicry)機序が明らかになっているギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)であろう。本稿ではこの2つの疾患を中心に自己抗体の産生機序について,最近の知見をまとめてみた。

 さらに,ほとんどの免疫介在性神経疾患は後天性であり,自己トレランスの異常を起こす引き金となる免疫異常の発症が必要となる。近年ウイルス,細菌などの外来抗原に対する自然免疫(innate immunity)が自己免疫疾患の引き金になっていることが示唆されており,この点についても触れたい1)。ただ筆者は免疫学の専門家ではないので,免疫学的な詳細は文献を参照していただきたい。

  • 文献概要を表示

はじめに

 視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,その疾患名に表されるとおり,重度の視神経炎および脊髄炎を臨床的特徴とする疾患である。詳細な病態は不明であったが,病理学的検討によって,中枢神経系における炎症性脱髄性疾患の範疇として捉えられ,その代表疾患である多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)との臨床的,病理学的異同が長年議論されてきた。2004年,本疾患に特異的な自己抗体“NMO-IgG”が発見され,NMOがMSとは異なる疾患であることが強く示唆されたが,翌年その対応抗原が,アストロサイトの足突起に高密度に発現が認められる水チャネル,アクアポリン4(aquaporin-4:AQP4)である(すなわちNMO-IgG=抗AQP4抗体)ことが同定された。この発見は,当初NMOをMSと明確に区別することを可能としたバイオマーカーとして,その診断的有用性が注目された。

 この有用性は現在も変わらず,本抗体の測定なしにMS/NMOの診療は不可能といえるほど,重要な役割を果たしている。また一方で,近年同抗体の病原性に関する報告が相次いでおり,NMOの本質的な病態が抗AQP4抗体による自己免疫性アストロサイト障害であることを明らかにし,そのメカニズムが徐々に明らかとなっている。本稿では,抗AQP4抗体の発見とその後の研究によって得られた,NMOの病態に対する理解とその意義について,またその知見から考えうる治療戦略について概説したい。

  • 文献概要を表示

はじめに

 抗グルタミン酸受容体抗体はグルタミン酸受容体(glutamate receptor:GluR)に対する抗体で,1994年にalpha-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid(AMPA)型GluRの1つのサブユニットであるGluA3(GluR3)に対する抗体がRasmussen症候群で報告されたのが,疾患との関わり研究の始まりである1)。2002年になると筆者らは,N-methyl-D-aspartate(NMDA)型GluR(NR)の1つのサブユニットであるGluN2B(GluRε2)に対する抗体(抗GluRε2抗体)の存在を,非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(non-herpetic acute limbic encephalitis:NHALE)を含む脳炎症例で報告し2),2003年には抗GluRε2抗体のRasmussen症候群でのデータを報告した3)

 2007年になると,Dalmauら4)はNMDA型GluR複合体抗体の卵巣奇形腫を伴う急性辺縁系脳炎(NHALE-OT)における報告を行い,NMDA型GluRの脳炎における意義が注目されるところとなった。2009年には抗GluA1/GluA2抗体が傍腫瘍性辺縁系脳炎で報告され5),抗GluR抗体の疾患との関わりが広がってきている。

 現在では8種類以上の自己抗体介在性の脳炎(脳症)が知られているが(Table1),英国での前方視的疫学調査によると,脳炎の原因は単純ヘルペス脳炎(19%)>急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)(11%)>抗NMDA型GluR抗体脳炎(4%)>水痘-帯状疱疹ウイルス脳炎(4%)>抗VGKC抗体脳炎(3%)の順で,自己抗体の関係する脳炎では抗NMDA型GluR抗体によるものが多いとされる6)。本稿では抗GluR抗体の中の抗NMDA型GluR抗体についての知見を中心に述べる。

  • 文献概要を表示

Ⅰ.腫瘍随伴性免疫性小脳失調症

 悪性腫瘍の0.2%に小脳症状が出現することが知られている1)が,その歴史は1934年のGreenfield2)の乳癌と肺癌を伴う「亜急性小脳変性症」の記載にさかのぼることができる。多くは亜急性に小脳性運動失調が出現し,数週から数カ月で進行し,徐々に小脳の萎縮を示す。小脳性運動失調が出現したときには悪性腫瘍を認めず,約1年以内に悪性腫瘍が発見されることが多い。

 その原因については,「遠隔効果」という表現でさまざまな可能性が議論されてきたが,1980年代以降,腫瘍と神経細胞の共通抗原の関係が注目されるようになった。1983年には,GreenleeとBrashearが卵巣腫瘍を伴う小脳失調症患者において,小脳プルキンエ細胞の細胞質と反応し,さらに,神経組織免疫ブロットで58kDaと34kDaに反応バンドが生じる抗体(抗Yo抗体)を報告した3)。これ以降,免疫組織化学法と免疫ブロット法を用いて,さまざまな抗体が見出され,それらが認識する抗原蛋白の特徴も明らかになっている。

橋本脳症と自己抗体 米田 誠
  • 文献概要を表示

はじめに

 橋本 策が,内分泌と自己免疫の2つの顔を持つ疾患として慢性甲状腺炎(橋本病)を提唱してから100年の歳月が流れた。本稿で取り上げる橋本脳症は,この橋本病に伴う自己免疫を背景とした脳症である。橋本病に精神神経症状を伴うことは日常診療上珍しくなく,多くは甲状腺機能低下に伴う粘液水腫性脳症である。しかし,甲状腺機能にかかわりなく生じる自己免疫性脳症の存在が知られるようになり,“橋本脳症”と呼ばれるようになった1-3)

 橋本脳症は早期診断と早期治療によって軽快する疾患にもかかわらず,臨床徴候が多彩であるため診断は容易ではなかった4)。近年,筆者らは,橋本脳症に疾患特異的な血清の診断バイオマーカーとして,αエノラーゼのN末端領域に対する自己抗体(抗NAE抗体;NH2-terminal of alpha-enolase)を見出し,血清診断が初めて可能となった5,6)。現在,筆者らの施設に全国から多数の抗NAE抗体解析の依頼があり,それらの臨床的解析から橋本脳症の臨床像の全貌が明らかになりつつある。本稿では,筆者らの多数症例の検討から見出された橋本脳症の臨床的特徴を自己抗体との関連から述べる。

抗大脳基底核抗体 林 雅晴
  • 文献概要を表示

はじめに

 古くから,A群β溶血性連鎖球菌(以下,溶連菌)感染後に,シデナム舞踏病に代表される不随意運動などの神経症状,精神症状が急性発症することが知られていた1)。病態としては分子擬態(molecular mimic)による自己免疫機序が推定され,患者の血清,脳脊髄液などの生体試料を用いたヒト脳での免疫組織化学染色(以下,免疫染色),ヒト脳ホモジュネートを用いたウエスタンブロット解析で,大脳基底核をターゲットとする自己抗体の存在が報告され,抗大脳基底核抗体(anti-basal ganglia antibody:ABGA)が提唱された2)。さらに慢性チック障害であるトゥレット症候群,同症候群に併発する強迫性障害(obsessive-compulsive disorder),化膿性連鎖球菌感染に伴う小児自己免疫性精神神経障害(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections:PANDAS)においても,溶連菌感染と関係したABGAの関与が推定されている3)。従来,蛍光免疫染色,ヒト脳ホモジュネートを用いたウエスタンブロットやELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)による解析が行われてきたが,近年,ドパミン神経やドパミン受容体に対する自己抗体に関する解析も進められている4)

 本稿では,ABGAと関連する大脳基底核の解剖,シデナム舞踏病,トゥレット症候群,強迫性障害,PANDASでのABGAの歴史的経緯と意義,ABGAの病態に関して解説する。加えて筆者らによる小児の亜急性自己免疫性脳炎での解析結果も紹介する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS)とは,腫瘍と神経組織に共通の抗原に対する自己免疫的機序,具体的にはこれらに対する自己抗体(onconeural antibodies;腫瘍/神経共通抗原認識抗体)や反応性リンパ球により生じる神経症状のことであり,腫瘍の転移や浸潤,圧排,癌治療に伴う副作用によって生じるものではない。PNSは担癌患者の0.1%程度に生じる比較的稀な病態とされている。

 辺縁系脳炎,亜急性小脳変性症,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群,脳脊髄炎,亜急性感覚性ニューロパチー,ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)が代表的な症状で,亜急性に進行することが多い。これらの症状は,単独もしくは2つ以上の組み合わせ,あるいは時期を変えて出現することがある。これらの症状をみた場合には,PNSを疑い血清,髄液中の自己抗体を測定するとともに,症状と自己抗体をガイドにした背景腫瘍の検索が重要である1,2)

 診療上しばしば問題となるのは,神経症状が背景腫瘍の発見に対して先行する例が多いこと,また背景腫瘍が微小であるために腫瘍発見が困難な場合である。初期の腫瘍スクリーニング検索においては,50~60%の症例で腫瘍を指摘できなかったと報告されている3)。そのため,背景腫瘍の検索を時期を変えて繰り返し行う必要がある。おおよその目安としてはPNSと考えられる症状の発症から4年間,6カ月に1回程度のスクリーニング検査が必要1)で,腫瘍検出率向上の点からは,18F-FDG-PETを含めた腫瘍検索2)が推奨されている。

 1980年代以降,PNSに関連する自己抗体の発見により病態解明が飛躍的に進み,2004年には,Paraneoplastic Neurological Syndrome Euronetworkによって,PNSの臨床診断基準(Fig.)1)が提唱されるに至った。

 このPNS臨床診断基準1)では,典型的な臨床像で,腫瘍の存在を強く疑う根拠となる神経症候群を古典的症候群と定めている。また,臨床的意義が十分確立されているonconeural antibodiesを“well-characterized onconeural antibodies”と位置づけ,腫瘍発見のマーカーになるとした1)。また,PNSのマーカーとして一定の意義が確認されている抗体を“partially-characterized onconeural antibodies”と位置づけた1)。具体的には,抗Hu抗体,抗Yo抗体,抗CV2/CRMP5抗体,抗Ri抗体,抗Ma2抗体,抗アンフィフィシン(amphyphysin)抗体を前者に分類し,抗Tr抗体,抗Zic4抗体,抗PCA-2抗体,抗ANNA-3抗体,抗mGluR1抗体を後者に分類している(Table1)。このうち,抗mGluR1抗体以外の自己抗体はいずれも細胞内抗原を認識する自己抗体である。

 現在,well characterized onconeural antibodiesについては,ravo PNS-blot(RAVO Diagnostika社,ドイツ)というリコンビナント抗原を用いた免疫ブロットキットを使えば,比較的安価かつ簡便に検出可能である。

 また近年,従来の免疫組織化学,ウエスタンブロット法による抗体検出に加え,プロテオミクス解析による新たな抗原分子同定法や,培養細胞に細胞表面抗原のcDNAをトランスフェクションし,立体構造を保ったまま抗原を発現させ,三次元構造を認識する抗体を検出する方法が開発されてきた。これらにより,細胞表面受容体やチャネルに対する抗体を検出することが比較的容易になった。この結果,傍腫瘍性もしくは自己免疫介在性脳炎とされていた症例の血清,髄液中から,新規の自己抗体が続々と発見された。傍腫瘍性神経症候群は,より広範な自己免疫介在性の神経症候群という枠組みの中で見直されるようになった。

 こうした流れから,古典的症候群の1つである辺縁系脳炎の中でも,新規の自己抗体を加え,抗体を切り口としたサブグループに分類が進んでいる。以前から自己抗体,臨床像,背景腫瘍の種類に関して一定の関連が知られていたが,抗体ごとに臨床経過,治療反応性もやや異なることがわかってきた4)

 治療反応性の面からは,自己抗体の認識する抗原が,細胞内分子であるのか,細胞膜表面の分子であるのかが重要視されており,自己抗体の種類とその標的分子について理解しておくことがPNSの診療に直結するようになってきた。

  • 文献概要を表示

はじめに

 Stiff-man/person症候群(SPS)は,1956年にMoerschとWoltmanが筋硬直と歩行障害を呈する13例に対してstiff-man症候群と命名した疾患である1)。1963年にはHoward2)が本症でジアゼパムが有効であることを初めて報告し,1971年には,病理学的に脳幹と脊髄に炎症所見を呈する例が報告された3)

 1999年,BrownとMarsdenはstiff-man症候群に加え,経過や主たる症候が異なるSPSを3群に分けてstiff-man plus症候群という名称を提唱した4)。すなわち,①亜急性の経過で生じる筋硬直・脳幹症状と進行性脳脊髄炎を呈するprogressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus(PERM),他の2群は比較的慢性の経過で,②脳幹由来のミオクローヌスを主とし四肢にも波及していくjerking stiff-man症候群と,③四肢末梢優位に有痛性痙攣と硬直を認め,特に下肢に優位で体幹の症状が少ないstiff-limb症候群を区別して示した。硬直が一側下肢から始まった場合stiff-limb症候群と診断される。多くの症例では経過とともに硬直は全身に広がっていくが,一部に下肢の硬直が際立っている症例が存在する。

 SPSでは,経過中に種々の神経症候を呈する症例が存在しSPS-plusとされるが,Dalakas5,6)の経験では10%に小脳症状を伴い,5~10%にてんかん,眼球運動障害を伴う。SPSに小脳症状を伴う症例では,強い硬直と痙縮を呈し,小脳症状は体幹失調と構音障害,歩行は下肢と体幹に強い硬直を伴う運動失調性歩行を呈し,急速眼球運動の障害と追跡眼球運動障害,さらには水平注視時の眼振を認めた。以上のように,SPSは古典的なstiff-man症候群に加え,stiff-man plus症候群,さらに傍腫瘍症候群としてのSPSが加わり徐々に本症候群の概念が確立されていった。

 本症では神経組織に炎症所見を生じる例があることから,ステロイドホルモン投与7),血漿交換療法が試行され8),奏効する例が報告されたことより,自己免疫学的機序の可能性について検討が加えられた。Solimena, De Camilliら9,10)はSPSの約60%にグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamate decarboxylase:GAD)に対する自己抗体の存在を見出した。また,悪性腫瘍を背景とし,SPSを呈する傍腫瘍性神経症候群で抗アンフィフィシン(amphiphysin)I抗体が検出された例が報告され11),縦隔腫瘍にSPSを合併した1例でゲフィリン(gephyrin)抗体が見出されたとの報告もある12)

VGKC関連抗体 渡邊 修
  • 文献概要を表示

はじめに

 電位依存性カリウムチャネル(voltage-gated potassium channel:VGKC)関連抗体の代表的なものは,VGKCのリガンドである125I-αデンドロトキンを用いたRIA(radioimmunoassay)法により検出される抗VGKC複合体抗体である。この抗体は,以前は,単に「抗VGKC抗体」と称されていたが,その後の研究でVGKCそのもののみならず,VGKCと複合体を形成する種々の分子に対する抗体を網羅するものであることが最近の研究で明らかになった(Table1)。

 このRIA法によるスクリーニング検査で検出されないVGKCに関連する新たな抗体の報告もあるが1),本稿では,抗VGKC複合体抗体を中心に取り上げ,作用機序や疾患との関連性について概説する。また,てんかんや疼痛との関連や,クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)や筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と本抗体との関連性についても触れてみたい。

  • 文献概要を表示

はじめに

 ニューロパチーを呈するパラプロテイン血症患者において,血清IgMがヒトミエリン関連糖蛋白および糖脂質糖鎖に反応することが1984年に見出されて以来1),自己免疫性ニューロパチーにおいてヒト末梢神経成分の糖鎖に対する自己抗体が広く検索されてきた。特にギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)ではシアル酸を持つ糖脂質であるガングリオシドに対する抗体の病的意義に関する研究が精力的に行われ,補体介在性神経障害などの神経障害機序が明らかにされつつある。同様に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)をはじめとする慢性自己免疫性ニューロパチーにおいても糖鎖に対する自己抗体が検索されてきたが,現在の段階ではその出現頻度も低く病的意義は明らかになっていない。近年では抗糖脂質抗体以外にランヴィエ絞輪を構成する膜蛋白を標的とする抗体も検索されつつある。本稿では,これらの自己免疫性ニューロパチー,特にGBSとその亜型における抗糖脂質抗体の病的意義に関して,最近の知見を加えて解説する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 急性汎自律神経異常症(acute pandysautonomia:APD)は,基礎疾患を有さない,特発性自律神経ニューロパチーの代表格であり,(亜)急性の経過でかつ広範な自律神経障害をきたす。非常に稀であるだけでなく,以前からさまざまな名称で報告されてきたこともあり,他の自律神経疾患との異同ですら明らかにされていなかった。当然,病態機序についても不明な点が多く,先行感染症状の存在や脳脊髄液での蛋白細胞解離などの存在から,ギラン・バレー症候群と類似した自己免疫機序が想定されている程度であった。そのような中,最近10年余りの研究成果により,APDは病態解明が最も進んだ疾患とまでいえる存在となった。その原動力となったのが,自己抗体の同定である。

 自己抗体の標的分子は,自律神経節に存在するニコチン作動性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor:nAChR;自律神経節nAChR)で,重症筋無力症における自己抗体の標的分子(筋膜上のnAChR:筋型nAChR)とは抗原性が異なり,原則として交差反応性はない。重症筋無力症において筋型nAChR抗体が疾患惹起性を有することが動物実験などを通じて証明されたように,自律神経節nAChR成分の感作によりAPD類似の臨床所見を呈する動物モデルが作製され,また,患者血清IgGを実験動物へ受動免疫することで自律神経障害を再現できることまで示された。さらに,自律神経節nAChR抗体がAPDに限らずさまざまな病態で検出されることが見出され,「自己免疫性自律神経性ガングリオノパチー(autoimmune autonomic ganglionopathy:AAG)」という用語が汎用されるようになった。AAGは非常に広範な臨床スペクトラムを有する,従来なかった新しい疾患概念である。

 本稿では,診断マーカーとして有用というだけでなく,エフェクター分子としての病態への関与まで証明され,自律神経疾患の枠組みを変えるきっかけとなった自律神経節nAChR抗体を中心に,自律神経ニューロパチーに関して概説する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は,病原性自己抗体の種類によって,①抗アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)抗体陽性MG,②抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(muscle-specific receptor tyrosine kinase:MuSK)抗体陽性MG,および,③前述の抗体が検出されないdouble seronegative MGに分類されてきた(Fig.1)1)。古くは,1976年にLindstromら2)がMG患者の血清中にAChR抗体が検出されることを報告した。その後,AChRαサブユニットのN末端外側部にある主要免疫原性領域(main immunogenic region:MIR)が同定され,その病態機序が詳細に解明されてきた3-5)。現在では,自己抗体による補体介在性膜破壊がアセチルコリン受容体の数を減らすことよって,MG症状が出現すると考えられている。

 一方,2001年にHochら6)が抗AChR抗体陰性の全身性MG患者血清中に抗MuSK抗体が検出されることを報告した。その後の10年間に,一過性新生児MGを含む多くの臨床研究7-9)と動物モデル研究10-12)がなされ,その病原性はほぼ証明された。しかしながら,その作用機序はいまだ不明のままである。

 今回,2011年にわが国から低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質4(low-density lipoprotein-receptor related protein 4:Lrp4)に対する自己抗体が報告され13),AChR/MuSK抗体に次ぐ第3番目の病原性自己抗体として注目されている。Table1にこれらの自己抗体の特徴と作用機序を要約した。ここでは,Lrp4抗体に焦点を当てて,発見の背景,臨床的意義,および,その作用機序について解説した。

  • 文献概要を表示

はじめに

 1970年代にアセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体が発見されて以来,多くの神経筋疾患で自己抗体が関与することが明らかになった。その後,リガンド蛋白や電位依存性イオンチャネルに対する自己抗体が発見され,神経筋接合部疾患との関わりが明らかになってきた。

 神経終末(シナプス前部)に存在するP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(voltage-gated calcium channel:VGCC)に対する自己抗体(抗P/Q型VGCC抗体)が発見され,ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)との関わりが明らかになった。LEMSは神経筋接合部疾患の1つであり,神経終末からのアセチルコリン(ACh)の遊離が阻害され,筋脱力や自律神経障害をきたす。また,傍腫瘍性症候群の1つでもあり,50~60%の症例で肺小細胞癌を合併する。さらに,約10%の症例で小脳性運動失調を認め,病態に関連していると考えられている。本稿では抗VGCC抗体が病態に深く関わるLEMSについて臨床像や治療法を中心に解説する。

筋炎特異自己抗体 藤本 学
  • 文献概要を表示

はじめに

 膠原病では自己抗体の出現が大きな特徴であり,それが自己免疫疾患という概念に分類される大きな根拠にもなっている。膠原病における自己抗体の多くは,核内や細胞内に存在する(細胞表面や体液中には通常は存在しない)分子を抗原とするため,その病因的意義はいまだに明らかではない。しかしながら,多くの自己抗体は疾患特異性が高く,さらに病型や臨床症状とも密接に相関することから,膠原病の診断・分類・治療において重要な役割を持っている。

 関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症においては,疾患特異的自己抗体が大多数(80%以上)の例で陽性になる。ところが,多発筋炎(polymyositis:PM)や皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)では,従来は自己抗体検査があまり有用でないと考えられていた。実際に,筋炎に特異的な自己抗体として日常診療で測定可能である抗Jo-1抗体は,PMでは20~30%,DMでは約5%にしか検出されない。さらに,蛍光抗体間接法による抗核抗体も陰性だったり低力価だったりすることが多く,これは全身性エリテマトーデスや全身性強皮症で高力価の抗核抗体が高率に陽性となるのと対照的である。

 しかしながら,近年になって,PM/DMに特異性の高い新たな自己抗体が同定され,臨床的意義の解析も進んできた。このような筋炎特異自己抗体として,抗アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase:ARS)抗体,抗Mi-2抗体,抗MDA5抗体(抗CADM140抗体),抗TIF1抗体(抗155/140抗体),抗SRP抗体,抗NXP-2抗体(抗MJ抗体),抗SAE抗体などが挙げられる(Table1)1-3)。これらの抗体を合わせるとPM/DMの多くの症例で特異抗体が陽性になることになり,特にDMでは全身性エリテマトーデスや全身性強皮症と比べても遜色のない陽性率となることが明らかになった。

 炎症性ミオパチーは,多様性のあるカテゴリーであり,PMとDMでは異なる発症機序が想定されている。筋症状もさまざまであり,DMの中には筋症状を欠くclinically amyopathic DM(CADM)の病型もある。また,発症年齢をとっても小児に発症するタイプと成人に発症するタイプがある。さらに,「皮膚」と「筋」以外に,悪性腫瘍と間質性肺炎という二大合併症が大きな意味を持っている。筋炎特異自己抗体は,臨床症状や合併症と密接に相関することが明らかになってきたため,このようなPM/DMの分類を考えるうえで,「自己抗体によるPM/DMのサブセット分類」が極めて有用な手段となることが明らかになってきた。すなわち,筋炎特異抗体の同定は,単に診断のみならず経過の予測や治療方針の決定においても有用であり,また,一部の抗体では抗体価が疾患活動性を反映する可能性もある。

  • 文献概要を表示

はじめに

 アルツハイマー病は老人斑としての脳実質への不溶性アミロイドβ蛋白(amyloid β protein:Aβ)の沈着,神経原線維変化としての神経細胞内へのリン酸化タウ蛋白の蓄積,それらに伴う神経細胞死を特徴とする認知症性神経変性疾患である1)。アミロイド前駆蛋白,presenilin-1やpresenilin-2といった遺伝子異常に伴う遺伝性の病型も報告されているが,ほとんどのアルツハイマー病は孤発性であり,加齢に伴い有病率が著しく増加することが特徴である。そのため,平均寿命が著しく伸びた先進諸国においては,介護といった社会的な問題のため,アルツハイマー病に対する有効な治療法の開発が急務となっている2)

 現在,わが国で臨床的に使用可能なアルツハイマー病の治療薬は,病状の進行により脳内で低下するアセチルコリンを増加させたり,グルタミン酸レセプターを調節したりするといった,疾患の進行により機能低下を生じた神経細胞間の伝達を賦活化するものである。しかし,これらの治療法はアルツハイマー病の症状を一時的に緩和する効果しかなく,アルツハイマー病病変の進行を抑制することはできない。これらの治療法とは異なり,アルツハイマー病において中枢神経系に蓄積する異常蛋白を,免疫機能を利用することによって除去し,根本的な治療を行うことを企図したものがアルツハイマー病に対する免疫療法である。

 アルツハイマー病における免疫治療について,その臨床病理学的背景,動物実験や先行研究での結果,主な副作用,今後の展望について概説する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 抗体を用いた免疫療法は,膠原病や癌の治療から始まり,神経疾患においても徐々に試みがなされている。神経変性疾患では,まずアルツハイマー病において,βアミロイドに対する抗体療法が治験として進行中である。本稿では,アルツハイマー病以外の神経変性疾患における抗体療法に焦点を絞る。アルツハイマー病以外の変性疾患では,まだ開発,実験段階で,ヒトに対する投与はほとんど行われていない。これまでの免疫療法の流れ,実験レベルでの報告,今後の展望について概説する。

  • 文献概要を表示

はじめに

 自己免疫性重症筋無力症(autoimmune myasthenia gravis:MG)は神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体(AChR)あるいは筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)に対する自己抗体が原因となる臓器特異性自己免疫疾患である1,2)。全身の骨格筋における易疲労性と筋力低下などの運動症状がMGの主要な症状である。

 近年,パーキンソン病をはじめとする神経疾患において運動症状以外にも多彩な非運動症状(non-motor symptoms)が認められることが広く知られている。これまで注目されてこなかったものの,MG患者において非運動症状が出現し,運動症状よりも患者QOL(quality of life)に大きな影響を与える可能性がある。

  • 文献概要を表示

 2012年10月3日(水)~6日(土)に,米国フロリダ州オーランドで開催された,第59回アメリカ神経筋電気診断学会(AANEM)に参加してまいりました。AANEMは前身をアメリカ電気診断学会(AAEM)といいましたが,2005年頃からNeuromuscularを学会名に加え,電気診断のみならず神経筋疾患全般を対象とするという立場を示しています。しかし,神経筋電気診断が学会の柱として据えられていることに変わりはありません。学会誌は『Muscle and Nerve』です。

 私個人としては,2003年にサンフランシスコでICCN(国際臨床神経生理学会)とAAEMの第50回記念大会がジョイントミーティングとして行われたときに,この学会に初参加しました。そのときに少人数ワークショップの充実具合に感激し,カルチャーショックを受けて,すっかりAANEMのファンになってしまいました。以後ほぼ毎年のように参加しています。特に若者の教育に最適と考えて,毎年10人前後の当学・関連施設の若者を引き連れて参加しています。本年は帝京大,防衛医大,川崎医大,慶應大,杏林大などから総勢10人がわれわれのグループとして参加しました。本年の総参加者は1,500人近く,アジアでは韓国,中国からの参加が毎年多く,今年は総計162演題のうち,韓国15,日本10,中国6などアジア地域が合計34演題と2割以上を占めていました。

  • 文献概要を表示

 開催地はハイデラバード。インドで6番目に人口の多い都市とのことだ。私にとっては2回目の海外学会で,プライベートの旅行を入れてもたった3回目の海外経験だったこともあり,「インドって,どんなだろう?」と身構えながら(整腸剤など携えて)行ってきた。そこは多くの人々で混沌としていて,クラクションも騒がしい活気に満ちた場所だった。旅の目的である学会はといえば,小規模で,熱いディスカッションもあり,また初参加ながらロビーでの会話もたくさん経験できた。そもそもは当科河村満教授が参加を勧めてくださり,現在ただ2人の大学院生(二村明徳先生と杉本)を引率していただき,とても刺激的な経験になった。

 やはり学会の話を中心にしなければいけないと思うが,今回参加したのはBiennial meeting of World Federation of Neurology Research Group on Aphasia and Cognitive Disorders(WFN-RGACD)という長い名称の,分科会だった。あまり広くない宴会場のような一部屋で,Dr. Warrington EK,Dr. Manes F,池田学先生をはじめ,ご高名な先生方のご講演を朝から夕方まで次々と聞くことができて豪華だった。ポスター発表は,12月中旬にもかかわらず東京の初秋くらいの陽が射す,気持ちのいい庭(!)で行われた(写真1)。研究テーマは,高次脳機能障害の範囲で多様だったが,症状でいえば失語,疾患群でいえば認知症がやや多かったように思う。

連載 神経学を作った100冊(76)

  • 文献概要を表示

 マリネスコ(Georges Marinesco:1863-1938)はルーマニアに神経学の伝統を打ち立てた人である(ルーマニア語ではGheorghe Marinescuであるが,そのほとんどの著作をフランス語表記のGeorges Marinescoで行った)。

 マリネスコは1863年にルーマニアのブカレスト(ルーマニア語ではブクレシュティ)で生まれた。医学の勉強をブカレストのブランコバン病院で始めた。1889年に卒業すると国費の政府留学生として9年間をパリでの神経学研修にあてることが許され,シャルコー(Jean-Martin Charcot;1825-1893)の主宰するサルペトリエール病院で研修を始めた。シャルコーから教えを受けたのは4年間に過ぎなかったが,彼は終生シャルコーを信奉し続けた。1893年にシャルコーが亡くなった後はフランクフルトの神経病理学者ワイゲルト(Carl Weigert:1845-1904)とベルリンの生理学者デュボア・レイモン(Emil Heinrich du Bois-Reymond;1818-1896)の教えを受けた。

お知らせ

  • 文献概要を表示

日 時:2013年4月24日(水)9:00~16:00

会 場:タワーホール船堀(東京都江戸川区船堀4-1-1)

第24回日本末梢神経学会学術集会
  • 文献概要を表示

会 期 2013年8月23日(金)・24日(土)

会 場 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター(新潟市中央区万代島6-1)

International TIA/ACVS Conference
  • 文献概要を表示

会 長 内山真一郎(東京女子医科大学医学部)

会 期 2013年11月15日(金)~11月16日(土)

会 場 東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区丸の内1-7-12)

  • 文献概要を表示

 この本は損害保険会社の顧問医師により書かれたものである。本書で記載されている25のケースはドキュメントファイルと呼ばれ,実際の医療紛争事例を臨場感あふれるドキュメンタリー風のケースシナリオにアレンジしたものであり,なぜ医療事故や訴訟に至ったのかがていねいに解説されている。数多くの医療事故での紛争を観察した著者ならではのことであるが,賠償金の支払いを巡って医師側に責任があるのかないのかなどについてのポイントがわかりやすく記載されており,貴重な教訓が豊富にまとめられている。

 第1章では,診断での思い込みや見落としなどのピットフォール・バイアスによる診断エラーについてのケースファイルが収録されている。続く第2章では,患者さんや家族に対するインフォームド・コンセントのあり方が問われたケースファイルが記載されている。そして第3章では,検査や治療のための医療手技に関連する事故についてのケースファイルが収録されており,CVカテーテルや内視鏡手技に伴う事故などで争われたものが集められている。

  • 文献概要を表示

 本書は日本神経治療学会創設30周年の記念事業として,2008年から順次公表されてきた『標準的神経治療』を合冊したものである。ここに取り上げられている疾患は①手根管症候群,②Bell麻痺,③片側顔面痙攣,④三叉神経痛,⑤高齢発症重症筋無力症,⑥慢性疼痛,⑦めまい,⑧本態性振戦,⑨Restless legs症候群の9つであり,神経内科医だけが診る疾患よりも,より多岐にわたる診療科が関与する疾患に重点が置かれ,また,慢性疼痛・めまいといった神経内科医が日々の診療で困難を感じている症候が積極的に選択されているのがまず目にとまる。日常診療の中ではなかなか接することのできない他科の最先端の考え方も吸収しながら患者を治療したいという,第一線の神経内科医のニーズをよく理解した疾患ラインアップであると思われる。

 本書の題名は『標準的神経治療』であるが,各章の記載の多くは治療指針のみにとどまらず,疾患概念,病態生理,疫学も含めた内容となっている。プラクティカルに治療はどのようにしたらよいかをダイレクトに伝えるだけでなく,疾患の基礎的な理解にも踏み込む内容となっており,より診療ガイドラインに近い記載といってよい。

--------------------

次号予告

投稿規定

「読者からの手紙」募集

あとがき 森 啓
  • 文献概要を表示

 むかし重症筋無力症が自己免疫疾患と知り,認識系の破綻が,今様の言葉でいうと,想定外の病気を引き起こすと理解した。では,どうして破綻するのかという発症メカニズムに興味を持ったが,その特異性はわからずじまいだった。抗原性の高低という言葉やクローン選択説からの議論も聞いたが,なお不明であった。まもなく核抗体,糖脂質抗体などが次々に明らかにされ,最近では,筋炎や視神経脊髄炎(NMO)の病態解明にも大きく貢献する進展もあり,いよいよ神経筋免疫疾患というジャンルが従来考えていたよりもはるかに普遍的で,限局されないことを知った。

著作財産権譲渡承諾書

読者アンケート用紙

基本情報

18816096.65.4.jpg
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
65巻4号 (2013年4月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

文献閲覧数ランキング(
10月7日~10月13日
)