保健師ジャーナル 75巻1号 (2019年1月)

特集 外国人への健康支援の最前線

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在留外国人の数は250万人を超えて増え続けており,保健活動の対象としても一定の割合を占めている。そして外国人労働者の受け入れ拡大の議論が進む中,今後も感染症対策や母子保健の重要性が高まることが予想され,さらに2020年東京オリンピック・パラリンピックや2025年大阪万国博覧会開催など,訪日外国人の健康支援のニーズも増すと考えられる。本特集では在留外国人への対応を中心に,支援の根拠を学ぶとともに,自治体等の取り組みの最前線を共有する。

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在留外国人の多くを占める外国人労働者について,日本における受け入れの現状と今後の動向,健康に関する問題について解説し,外国人労働者とその家族に対する保健・医療・福祉等の支援の必要性について考えを述べる。

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在留外国人への保健医療サービス提供がなぜ必要なのか,感染症対策を中心とした近年の動向や制度の観点から,その根拠を解説する。また,外国人が置かれている状況や今後予測される健康課題を踏まえ,保健師ならではの役割への期待も述べる。

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東京都新宿区では日本語学校生の結核対策として,保健所,学校,医療機関の三者連携による結核健診や,対策マニュアルの作成などにより,成果を上げている。取り組みの概要や学校DOTSの事例を紹介し,日本語学校生の支援の特性と保健師の役割を考える。

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愛知県一宮保健所では,結核を発病した技能実習生への服薬支援とともに,関係機関と協力して発病予防および早期発見に向けた取り組みを行っている。発生事例における支援の実際と,実態調査の結果等を踏まえた取り組みについて紹介する。

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東京都では,増加傾向にある外国出生結核患者や海外からの入国者への対応として,多言語による結核対策用の動画とリーフレットを開発した。その経緯と内容を紹介する。

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言葉や文化の壁などにより,外国人の母子が妊娠期から子育て期までに直面する課題は多い。かながわ国際交流財団では,市町村保健師等と連携して,外国人母子を支える活動を行っている。その取り組みを大和市・綾瀬市との連携事例も含めて報告する。

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2018年3月の沖縄県における外国人旅行者がもたらした麻疹の感染拡大と,その後の全国各地での麻疹発生は記憶に新しい。麻疹発生時対応ガイドラインに沿って那覇市保健所および沖縄県の対応を振り返るとともに,今後に向けた課題も挙げる。

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全国保健師長会は2019(平成31)年3月に発足から40周年を迎える。それを記念して2018年(平成30)年度は,「みる・つなぐ・動かす—保健師の原点から住民とともに創る未来」をテーマに各種の事業を展開している。ここでは11月10日に愛知県名古屋市で開催された40周年記念事業を中心にその取り組みを紹介する。

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はじめに

今成知美

■FASDの予防と対策に関する国際フォーラム開催の背景

 胎児性アルコールスペクトラム障害(以下,FASD)とは,妊娠中の母親が摂取したアルコールの影響によって,胎児に先天性疾患として出現するさまざまな障害のことである。その予防と対策に関する国際フォーラムを「平成30年度厚生労働省依存症対策全国拠点機関設置運営事業」として,2018(平成30)年9月15日に開催した(図)。

 国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長から特定非営利活動法人ASK(以下,ASK)に,この「胎児性アルコールスペクトラム障害の予防と対策に関する国際フォーラム」共催の依頼があったのは,2018年春だった。これには経緯がある。15年前の2003(平成15)年11月,ASKが胎児性アルコール症候群(以下,FAS)の国際シンポジウムを主催。樋口院長の協力のもと,米国からエドワード・ライリー博士(研究者)とデボラ・エベンセン氏(支援者)を招いて講演していただき,私たちは初めて,アルコールの胎児への影響のすさまじさを知った。

 当時の母子健康手帳には,「妊娠中は飲酒を控えましょう」と表記され,飲酒を減らせばいいと誤解される危険性があった。そこで翌2004(平成16)年2月,ASKは「シンポジウムの報告書」等を添え,厚生労働省に要望書を提出した。その結果,母子健康手帳の表記が「妊娠したら,飲酒をしないようにしましょう」に改定された。

 また,酒造酒販団体にも対策を要望。2004年から,容器に「妊娠中や授乳期の飲酒は,胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」との警告表示が入り,2010(平成22)年からは広告やCMにも「妊娠中や授乳期の飲酒はやめましょう」という文言が入った。この15年間,若い女性の飲酒率が上昇する中で,妊婦の飲酒率が大きく下がったのには,これらの対策が貢献したものと推測できる。

 しかし,妊婦の飲酒はゼロではない。また,FASDのハイリスク層への介入,診断,調査も進んでいない。その原因は,FASDは海外の問題と考えられているためではないか。対策を進めるためには,日本に問題が存在するという実感が必要なのだ。

■国内のFASDの現状と課題に関するシンポジウムを設ける

 そこで今回の国際フォーラムでは,第1部で海外の研究者や支援者による教育講演を行った後,第2部にシンポジウムを設け,実際に国内でFASDの子どもとその母親を支援した経験を持つ方々に登壇していただくことにした。

 幸い,2003年のFASの国際シンポジウムでフロアから発言された長沼豊氏(元福祉施設職員)と連絡が取れ,同氏が連携した女性保護施設長の横田千代子氏や,児童精神科医の井上祐紀氏にも発表をお願いできた。

■FASDの支援における保健師への期待

 アルコール依存症などで,妊娠が分かっても飲酒を続ける妊婦さんがいる。また,妊娠に気付く前にたまたま大量飲酒をした人もいるだろう。妊婦健診や乳幼児健診に現われない人々の中に,あるいは乳児院や児童福祉施設で育つ子どもにこの問題が隠れているかもしれない。

 保健師さんは,母子保健・育児・虐待防止・障害者支援まで,幅広い領域に関わっている。ぜひともFASDの知識を持って,予防や介入,支援に活かしていただきたい。

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支援事業開始の背景

 2011(平成23)年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所での事故により,福島県では多くの地域住民が放射線被ばくに関するリスクにさらされた。国や自治体により,被ばくによる発がんなどのリスクに対し,さまざまな対応が取られたが,その後の調査などにより,放射線被ばくによる影響は限定的であることが明らかとなった1)。しかしながら,東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故に伴い生じた健康リスクは,放射性被ばくによる健康被害に限らず,避難に伴う老人施設居住者の死亡率の増加2),不安などによる精神的健康度の低下3,4)や,生活環境の急激な変化などに伴う糖尿病などの生活習慣病の罹患5,6)など,多岐にわたる。

 地域住民の身近なところで健康の維持・増進を担う保健師には,地域住民が災害に関連する健康リスクについて自身に最適な意思決定を行うことを支援するコミュニケーションが求められる。一方で,上述のような多様なリスクの把握とその対処には,多面的な視点や知識が求められる7)。これには高度な専門性も求められることから,保健師が日々の保健活動に加えて新たな知識を獲得・更新し続けることは容易ではない。

連載 数式不要!はめ込み統計学 保健師のための統計これだけ・1【新連載】

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はじめに

 私は統計学の専門家ではありません。統計学の専門家でもないのに,このシリーズを執筆した理由について述べたいと思います。

 私は長年,医学部の内科学講座で学生教育や大学院生の研究指導および自身の研究を行ってきました。また,医学部附属病院の内科で,多くの患者さんの診療にも携わってきました。これらの教育・研究活動や診療活動には,医学的知識はもちろん,統計学や疫学の最低限の知識が必要でした。それらを知っていることは特殊な能力ではなく,当たり前のことでした。

 山形市が2019(平成31)年4月に山形市保健所(仮称)を開設したいとのことで,私は2017(平成29)年3月に医学部を退職し,山形市役所の保健医療監に就任し,保健所開設の準備に当たりました。その間,市役所の保健・健康事業に携わる職員(多くは保健師)に医学・医療の勉強会を定期的に主催してきました。そこで強く感じたのは,「ほとんどの人は,統計や疫学の知識がない」ということでした。彼らの多くは,市民の健康に関するデータを取り扱い,平均値を算出し,棒グラフなどを作成していますが,疫学や統計学の知識・技術がないため,それらのデータが十分に生かされていませんでした。

 この現状は,彼ら個人の責任というより,むしろ,彼らに十分な教育の機会を与えなかった指導者層にも責任があると思います。しかし,視野を山形市役所の外部に向けてみると,同じような状況が県内のみならず,県外の自治体にも認められることが分かりました。

 保健師の多くは,学生時代に統計学の授業を受けたはずです。しかし,彼らが異口同音に訴えることは,「難しい数式が出てきた途端,授業が別世界のように感じられ,それ以降,全く理解できなくなった」ということです。したがって,現在の学生が受ける授業にも問題があるように感じています。

 市町村役場や保健所は,住民の健診データを集計・解析・評価し,それに基づいて住民の健康対策や健康行政の指針を立てることがきわめて重要です。この住民の健診データを集計・解析・評価する過程は,疫学・統計学そのものと言っても過言ではありません。今後,その重要性はますます大きくなっていくことは間違いありません。

 以上のような現状を少しでも改善したいと考え,自身の浅学を顧みず,本連載を執筆した次第です。本連載は,統計解析法の全体像を網羅するものではありません。あくまで,初心者を念頭に,地域の保健統計で必要な最低限の項目を厳選し,「保健行政の現場で,実際に統計解析ができる」ことに重点を置きました。したがって,数式は一切使用せずに解説しました。本連載が終わるころには,あなたが統計ソフトを使って統計解析を行っている姿を想像してみてください。きっと,うれしいと思います。私もそのような保健師さんの姿を拝見したいと切望しています。

連載 ナカイタ発 保健師へのつぶやき・67

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 表記の大会が,「想いをつむぐ」をテーマに,2018年11月30日(金),12月1日(土)に岡山県倉敷市で開催されました。2016年の児童福祉法の大改正を受けて2017年8月に「社会的養育ビジョン」が発出され,本大会ではこの内容を受けた発表やディスカッションも多く見受けられました。ビジョンの柱である家庭養育優先の考え方に基づき,市町村を中心とした家庭復帰支援や在宅養育支援体制の強化,特別養子縁組も含めた質の良い代替養育の推進,そしてそのための関係者の行動指針,今後の法改正への期待などが議論の焦点となっていたようです。いずれにしても,子どもの権利を保障し,健やかな発育・発達を守るという価値を最重要視した改正です。

 筆者は,子ども虐待対応組織(Child Protection Team:CPT)の拡充を図るための方策を探ることを目的にシンポジウムを主催し,CPTの実態,市区町村子ども家庭総合支援拠点や子育て世代包括支援センター,要保護児童対策地域協議会との連携の意義,そして成果について議論しました。発表とディスカッションの内容の一部をご紹介します。

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 北九州市は福岡県の北部に位置します。1963(昭和38)年に5市対等合併により誕生した政令指定都市で,7つの区があります。人口95万5967人,高齢化率は,政令指定都市の中で一番高く,30.1%(2018〔平成30〕年3月31日現在)です。

 保健師は,総数170名(2018年4月現在)で市役所の4局10部16課に38名,区役所7区保健福祉課に132名が配置されています。北九州市は,地区担当制を基本にしていますが,精神保健や感染症等は担当部署があり,一部業務担当制で業務を行っています。

連載 地域・職域の健康課題の見える化と効果的な保健事業・5

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はじめに

 これまでの連載でも述べてきたように,医療保険者が限られた資源,財源の中で医療介護サービス提供体制を維持していくためには,被保険者の医療・介護ニーズに応じてサービスを適正に配分していく必要があります。今回は,ポピュレーションへルスマネジメント(PHM)による階層化で特に医療依存度,重症化リスクが中等度〜高度であると考える被保険者への支援事例として,高リスク層に対する高度ケースマネジメントと,中リスク層に対する慢性疾患重症化予防事業についてご紹介します。

連載 見たい統計 自在に分析! 保健医療福祉計画データウェアハウス・9

病床機能報告 岡本 悦司
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 医療法に基づく病床機能報告が2014年度から導入され,一般病院(精神科病院除く)と有床診療所は,毎年7月1日時点の病棟ごとのデータを都道府県に提出することが義務付けられた。病床機能報告は,地域医療構想実現に向けた有力なエビデンスを提供することを目的に導入されたが,では実際の構想の進捗はというと,2017年度末で対応方針を策定した施設は117施設(一般病院7380施設,有床診療所7629施設,計約1.5万施設の約0.7%),合意された高度・急性期病床の削減数は1512床(2025年までに削減21万床という目標の約0.7%)にとどまっている(表1)*1。今後,地域医療構想調整会議で病床機能報告データを有効活用するためにも,データウェアハウス(DWH)化のようなビッグデータを利用しやすくする工夫が必要となるだろう。

連載 ニュースウォーク・248

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 JR横浜駅西口の繁華街。まだ明るい時刻なのに,会場のホテルがどうにも見当たらない。歩き回ったあげく,通りのコンビニエンスストアに飛び込んだ。手のすいた男の店員さんがいたので,「すみませんが…」と道を尋ねたら,アジア系の若者だった。

 若者は困った老人に親切だった。自分のスマホでホテルを探し出し,画面を見せながら流ちょうな日本語で説明してくれたが,地図が英語版なのでよく分からない。

連載 研究室からのメッセージ・163

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History and Now

どのような機関なのでしょう?

 山口県内で4年制の看護教育を行うことは,山口県看護協会設立以来の悲願であり,1969(昭和44)年から県議会への陳情が続けられ,1996(平成8)年に山口県立大学に看護学部看護学科が新設されました。その後,看護栄養学部に改組し,看護学科55人,栄養学科40人定員の2学科体制となりました。設置母体の山口県立大学は,1941(昭和16)年の山口県立女子専門学校開学に始まり,現在は国際文化学部,社会福祉学部,看護栄養学部の3学部と別科助産専攻,大学院は国際文化学部研究科(修士課程)と健康福祉学研究科(博士前期・後期課程)から構成されています。

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次号予告・編集後記

基本情報

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保健師ジャーナル
75巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-1413 印刷版ISSN:1348-8333 医学書院

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