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はじめに
福岡市が2019(令和元)年に行った高齢者実態調査1)では、要介護状態になった主な原因として、女性ではロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)に関する病気や症状が最も多かった。一方、成人女性(特に20〜40代の若い世代)のロコモ認知度は低く、運動習慣を持つ者の割合は3割程度にとどまっている2)。
このような現状を踏まえ、福岡市の行政区の一つである東区では、2021(令和3)年度、区内A小学校保護者(20〜69歳女性)を対象にロコモに関する意識と生活の現状について調査し、分析を行った。その結果、ロコモをよく知っている者や運動習慣がある者は、ロコモのリスクが低いことが示唆された。また、この調査から、この世代の女性はロコモへの漠然とした不安を抱きながらも、日常生活における運動の優先度が低く、運動習慣を持つまでに至らない者が多くいるという現状も見えた。
そこで2022(令和4年)度、調査結果をもとに本市が募集していた「エビデンスに基づいた市民の健康づくり促進事業」へ応募、予算要求し、区内の成人女性をターゲットにロコモ普及啓発のポピュレーションアプローチ「東区ロコモ啓発実証事業」(以下、本事業)を行った。
この事業のコンセプトとして、人生100年時代を見据え、若いうちから健康づくり・介護予防に取り組むことができるよう、「ロコモを知らない、運動習慣もない30〜40代女性(約2万7000人)が、ロコモを知って運動を始めてみたくなる!」を掲げ、自然と運動してみたくなるきっかけづくりのために、行動経済学における「ナッジ理論」を活用して事業を計画・実施した。本稿では、その取り組みについて紹介したい。既存事業から2022年度までの取り組みの流れは、図1にまとめた。
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