活動報告
—地域住民と健康リスクを考える—東日本大震災後の保健活動の向上を目指したリスクコミュニケーション支援事業
吉田 和樹
1
,
小林 智之
1
,
後藤 あや
2
,
竹林 由武
1
,
熊谷 敦史
3
,
安井 清孝
4
,
黒田 佑次郎
5
,
末永 カツ子
6
,
小宮 ひろみ
7
,
前田 香
8
,
村上 道夫
1
1福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座
2福島県立医科大学総合科学教育研究センター
3福島県立医科大学大学災害医療総合学習センター
4福島県立医科大学災害公衆衛生看護学講座
5福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
6福島県立医科大学医学部災害公衆衛生看護学講座
7福島県立医科大学付属病院性差医療センター
8福島県保健福祉部健康増進課
pp.54-59
発行日 2019年1月10日
Published Date 2019/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201100
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
支援事業開始の背景
2011(平成23)年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所での事故により,福島県では多くの地域住民が放射線被ばくに関するリスクにさらされた。国や自治体により,被ばくによる発がんなどのリスクに対し,さまざまな対応が取られたが,その後の調査などにより,放射線被ばくによる影響は限定的であることが明らかとなった1)。しかしながら,東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故に伴い生じた健康リスクは,放射性被ばくによる健康被害に限らず,避難に伴う老人施設居住者の死亡率の増加2),不安などによる精神的健康度の低下3,4)や,生活環境の急激な変化などに伴う糖尿病などの生活習慣病の罹患5,6)など,多岐にわたる。
地域住民の身近なところで健康の維持・増進を担う保健師には,地域住民が災害に関連する健康リスクについて自身に最適な意思決定を行うことを支援するコミュニケーションが求められる。一方で,上述のような多様なリスクの把握とその対処には,多面的な視点や知識が求められる7)。これには高度な専門性も求められることから,保健師が日々の保健活動に加えて新たな知識を獲得・更新し続けることは容易ではない。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.