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はじめに
2016(平成28)年度の診療報酬改定では「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を踏まえた認知症患者への適切な医療が評価され,介護保険と医療保険に対応できる訪問看護の報酬が引き上げられた1)。
在院日数の短縮化や在宅療養の推進により,家族介護者の介護負担は大きく,家族介護者の健康や介護力の低下に対する支援は十分でない現状が明らかになっている。また,わが国の家族介護者は,自宅での家族介護意識の高さから,介護負担を溜め込みやすい特徴がある2)。
社会資源は施設・情報としても増えてきているが,家族会や認知症カフェのように多様な集いの場所があっても,家族は介護の合間で利用しづらいなどの状況もある。また,認知症の家族介護者が求める介護支援の在り方3)からもストレスや疲労感について支援を求めている現状がある。
認知症患者の訪問看護では,家族への支援は訪問看護の重要なケア内容であり,小林4)によれば,訪問件数の75%において看護師は家族と関わり,25%は家族に対して直接的な支援を行っている。本人と家族の関係性を整えながら,より認知症家族支援者が求める支援についてニーズを聞き,訪問看護を行う必要がある。また,医療ニーズが高い認知症患者が安心かつ安全に在宅療養に移行し,地域生活を継続するためには,患者とともに介護者への支援が不可欠であり,入院医療機関と地域訪問看護ステーションの連携した取り組みが必要になる。
家族への支援には,心理教育,行動マネジメント(患者への上手な接し方,認知症の周辺症状BPSDへの対応方法),介護者自身のストレス・マネジメントなどの複合的介入が効果的である。複合的介入の中でも,最新かつ大規模な効果検証試験が行われた,ロンドン大学で開発された「STrAtegies for RelaTives(START)プログラム」は参考としやすいプログラムである。筆者らのグループではこのSTARTプログラムを日本の現場で実施可能な形態に修正し,実践と効果検証研究を行っている(プログラムの概略については本誌2018年12月号と2019年2月号で紹介している)5,6)。
今回,認知症の中核症状および周辺症状BPSD(行動・心理症状)の悪化によって入院を余儀なくされたケースに対して,認知行動療法に習熟した病院看護師と地域の訪問看護ステーション看護師が,家族介護者に対する支援の一環として認知行動療法(以下,CBT)を実践したので,紹介する。
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