助産雑誌 74巻12号 (2020年12月)

特集 臨床現場での“触れる”の今後を考える

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「手当て」という言葉があるように,人は触れられることで癒されるのは,助産・看護を志した皆さんであればよく理解されていると思います。今,新型コロナウイルスの世界的な蔓延で,人との距離を取らざるを得ず,人に触れることにためらいが生じてしまうようになりました。心理的な壁にならないことを祈るばかりです。

このような事態を助産の現場ではどのように捉え,どのような代替策を講じているのか,さまざまな工夫と,妊産婦や家族に安心を届けている実際をご紹介します。気兼ねなく,妊婦のそばにいられるようになるまでの模索を,読者の皆さんと共有したいと思います。

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飛沫を避けるために距離を取る,不必要に人と会わないなど,新型コロナウイルスの影響で,従来のような社会生活を送ることが困難になっています。しかし,助産・看護の臨床現場では,触れずにケアは提供できないこともあります。本稿では,どのように工夫したらよいかの示唆をいただきました。

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新型コロナウイルス感染拡大の中で不安を抱える妊産婦のために,助産の現場では「触れる」ケアは通常以上に意識して行われていることを,ヒアリングによりまとめていただきました。また,触れるだけでなく,声や視線,共感する気持ちを活かした助産ケアも有効であることを,オキシトシンの分泌に着目して提案いただきました。

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5月2日より,オンライン立ち会いを実施した矢内原医院。当初はオンラインによる立ち会いに対し,スタッフの中には否定的な意見があったそうです。実施を経て,立ち会うことの本質を考え,何が産婦と家族にとって大切なのかを改めて見つめ直した,その思いを述べていただきました。

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2020年4月,米国ニューヨークで新型コロナウイルス感染者・死亡者数が急激に増えていく様は,目が離せませんでした。そのニューヨークでドゥーラとして活動されている伊東清恵さんに,現地での産婦の様子や,ドゥーラとしての思い,そして市民が「声を上げる」ことの大切さをご紹介いただきました。

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世界中で経験のない新型コロナウイルス蔓延下での,母親と新生児の接触や母乳育児に関する推奨が多々発表され,改定されてきました。筆者は今年2月からそれらを読み,翻訳をし,発表することに携わってきました。そこから見えてきたことと,今後の母子の触れ合いについての課題をまとめていただきました。

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2020年5月9〜10日にかけて,24時間という長時間のオンラインイベントを主催された西川直子さん。1時間30分ごとにテーマを変え,16のセッションを行いました。テーマごとにファシリテーターを立てましたが,西川さんはその間もほとんど寝ずに参加し続けていたそうです。助産師たちの熱い想いが飛び交う中で感じた,このオンラインミーティングの意義をまとめていただきました。

トピックス

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 2020年4月27日,清水ルイーズさんが米国メリーランド州ノース・ベセスダのご自宅で亡くなりました。72歳でした。

 ルイーズさんは1980年代から90年代にかけ,日本で在日外国人妊婦を支援するバースエデュケーター(出産準備教育の専門家)として活躍し,日本の医療者に「ラマーズ法」「バースプラン」「イメジェリー」などを米国の出産シーンから紹介するという大きな仕事もなさいました。がんで亡くなられましたが,病気を告知された後もルイーズさんのポジティブで勇気のある,温雅な態度は変わらず,当初予想された余命よりはるかに長くご家族との穏やかな時間を過ごされたそうです。

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はじめに

 HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)はATLL(成人T細胞白血病リンパ腫)やHAM(HTLV-1関連脊髄症)の原因で,ATLL発症には,母乳育児が重要な感染経路であることから,本邦では2010年より妊婦健診においてHTLV-1抗体検査を公費で実施している。内丸は齋藤らの調査による推定を引用し1),毎年2000名以上の妊婦がHTLV-1キャリアないしキャリアの疑いを指摘している。国の政策でスクリーニングが始まった当初,HTLV-1キャリアと判明した妊婦に対し,母子感染を予防する授乳方法として,完全人工栄養・3カ月(90日)までの短期母乳・凍結母乳の説明が行われ,各自がそれぞれの授乳方法の利点や欠点を考慮し,選択することが望ましいと言われていた。しかし,短期母乳選択後の断乳困難例が報告され,感染リスクが上がってしまうことが危惧されたことから2),2017年に『HTLV-1母子感染予防対策マニュアル』が改訂され,原則として完全人工栄養が推奨される方針となった。

 その一方で,妊婦健診によって自身がHTLV-1キャリアと知った妊婦は,将来自分が白血病や難病を発症する可能性を知ると同時に,次世代に感染させないように自身の母乳制限について決断を迫られる。そういった妊婦や家族の相談支援は,HTLV-1総合対策の重点施策の一つで,佐賀県では2012年にA大学病院にHTLV-1専門外来(以下,専門外来)が設置された。専門外来はHTLV-1に特化し,血液・腫瘍内科のスタッフ(医師・臨床心理士)がHTLV-1感染者の健康状態の評価に加えて,HTLV-1キャリア,ATLLやHAMなどの関連疾患患者,家族のいろいろな悩みに関する相談を受け付けている。2012年5月から2017年12月までに新規で専門外来を受診した人は245名で,そのうち29.8%(73名)は妊婦であった。

 筆者(柘植)は専門外来で受診者のカウンセリングを担当していたが,妊婦健診で自身の感染を知った人から,感染に対するショックや授乳方法選択の不安,自分の思いを十分に話せるような相談の場がなかったという訴えを聞いていた。これまで,妊婦健診によってHTLV-1感染が判明したり,その疑いとなった人の母乳制限にまつわる思いや実際の経験に関する調査や研究は少ない。本稿では,妊婦健診がきっかけで妊娠時に専門外来を受診した人が,妊娠中や出産後の生活で抱いた不安や相談体制に寄せる希望について明らかにする目的で調査を行い,考察と共に報告する。

連載 続・いのちをつなぐひとたち・24

石田聡さん
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コロナ対応の最前線で闘う医療チームに約3カ月間で2万1000食を届け,「食のチカラ」で励ますプロジェクトを実施

コロナ禍の中,食に関わるシェフや飲食店経営者が「自分たちにできることはないか」と考え,賛同者を得て動き始めた「Smile Food Project」。コロナと闘う医療現場に質の高い「食」を無償で届け,感謝と応援のメッセージを伝えることがプロジェクトの大きな目的でした。プロジェクトリーダーを務めた石田聡さんに,その経緯を伺いました。

連載 宝物,教えてください・58

二人の姪 中川 有加
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新人助産師時代,陣痛室で産婦の腰をマッサージしていると「助産師さん,産んだことある?」と聞かれ,「ないです」と答えると「じゃあ,このつらさ分からないわよ!」と言われてしまったことがある。単純な私は,「出産を経験しなければ」と思い,月2件くらいお見合いを繰り返していたころ,姉が私の尊敬する開業助産師の助産院で1年ごとに続けて出産した。年子の育児は大変で,姉は行き詰まると実家によく帰ってきていた。そのため私にとっては,「おっぱい飲んでる時以外は泣いている」といった教科書からは得られないさまざまな知識を得た。自分のことは後回しで,わが子に向き合っている姉の姿を通して,育児とは無償の愛,ここまで自分を滅して捧げるものなのだと分からせてもらえた。また,姪たちが新生児から乳幼児,幼児,学童へと成長していく過程を間近で見ることができ,成長過程での気付きや心配事,育児での工夫も知ることができた。

連載 医療コミュニケーションことはじめ・5

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 「平静の心」(Aequanimitas)は,米国ジョンズ・ホプキンス大学で内科学教授を務めたウイリアム・オスラー(William Osler,1849〜1919)が,1889年に前任のペンシルベニア大学を辞任する際に行った告別講演の題名です。オスラーが行った講演をまとめて出版した本のタイトルにもなっています

 オスラーは,この講演の中で,医療者は「平静の心」を持って医療の世界で働くことの重要性を強調し,「沈着な姿勢に勝る資質はない」と述べています。心が動き,揺れることにより,医療者としての冷静な判断ができなくなることはあってはならないとして,戒めたのです。医療者は,冷静に考え,医学的に適切な判断をして,行動に移すことが大切だと言うのです。この言葉に沿うかのように,かつては,医療者は患者の気持ちに共感しすぎてはいけないと考えて,患者の身体的な所見に注意を集中させて,患者の気持ちの動きについては軽視する人もいたように思います。

連載 ワタナベダイチが解説!両親学級アイスブレイク集 こんな時,どんなアイスブレイク?・8

テーマを選んで自己紹介 渡辺 大地
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はじめに

 第6回,第7回と,夫婦でペアになった場合のアイスブレイクを紹介してきました。最近は他人とコミュニケーションを取るのが苦手な夫婦が増えてきたため,夫婦を分けないようにすることが増えた,というお話をしました。ただ,やはりせっかく同じようなマタニティ期の夫婦と出会えるチャンスに一切会話をしないのはもったいない,という意見もあろうかと思います。

 そこで,夫婦を離さずに,数組の夫婦でグループを作る,というやり方はいかがでしょうか? 第8回,第9回では,そんなアイスブレイクを紹介していきますね。先に右ページの進め方をご覧ください。

連載 未来の助産師を育てています わたしたちの教育現場・64

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沿革・理念

 千葉県立保健医療大学(以下,本学)は,高い倫理観と豊かな人間性を備え,地域の健康づくりに関わることができる保健医療専門職の育成を理念に掲げ,2009年に開学しました。健康科学部看護学科は,必修の保健師と看護師の国家試験受験資格取得に加え,助産師国家試験受験資格が得られる助産課程を開講しています。前身である千葉県医療技術大学校助産学科の学習資源を引き継ぎ,千葉県内の主要な産科医療機関を実習施設として,地域医療に貢献できる助産師の育成を目指しています。

連載 りれー随筆・431

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 私は現在,産婦人科クリニックでの助産師業務と,難病小児訪問看護ステーションの訪問看護師の二足のわらじを履きながら働いています。これまでずっと,産科病棟で分娩・産褥期を主に奮闘してきましたが,いつの頃からか,もっと母子やその家族に密着した働き方をしたいと考えるようになりました。いつか,開業助産師となり地域の駆け込み寺的存在になることが夢です。そのために,今は「ジャンルを問わずやってみたいことに挑戦する」時期として,非常勤を掛け持ちしながら,時には育児支援のボランティア活動をしてみたり,自由に楽しんでいます。そんな私が,病院を飛び出して見えてきたことを,つらつらとお話しさせてください。

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次号予告・編集後記

助産雑誌 第74巻 総目次

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助産雑誌
74巻12号 (2020年12月)
電子版ISSN:1882-1421 印刷版ISSN:1347-8168 医学書院

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