特集 令和のお父さんのリアル 男性目線で考える父親支援
【令和の男性育児研究】
男性の産後うつのエビデンス—社会実装に向けて
竹原 健二
1
1国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部
pp.334-338
発行日 2024年8月25日
Published Date 2024/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202313
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父親の産後うつ研究の進展
2005年に医学系のトップジャーナルであるLancetに父親の産後うつに関する論文が掲載された。父親の産後うつの頻度と子どもの発育・発達への悪影響を示した,英国の大規模出生コホートのデータを用いた論文である1)。これを一つのきっかけとして,欧米ではさまざまな学術雑誌に父親の産前・産後のうつに関する研究結果が報告されるようになった。2010年には43の研究結果を統合した父親の産前・産後のうつに関する系統的レビューが行われた2)。その後,2016年にはより多くの研究結果を統合したメタ解析の結果が報告され,妊娠期から産後1年までの間に父親が産前・産後うつのリスクありと判定される頻度は8.4%であるという結果が示された3)。この一連の流れとメタ解析の結果は,現在もさまざまな研究で引用されており,父親の産後うつに関する国際的な共通認識だと考えられる。
国内においても父親の産前・産後うつの頻度に関する報告は行われている。日本では,2020年に国内初のメタ解析が実施され,妊娠期は8.5%(95%信頼区間:3.3%-20.3%),産後は8.2%〜13.2%で時期ごとにばらつきがあることや,産後3〜6カ月に最も高い頻度になることが示唆されている4)[図]。また,厚生労働省が実施した国民生活基礎調査のデータを用いた日本における代表性の高い解析結果では,1歳未満の子どもを持つ夫婦の産後うつの頻度は父親が11.0%,母親が10.8%とほぼ同程度であることも知られている5)。
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