連載 医療コミュニケーションことはじめ・5
医療者に必要な「共感」する能力とは?—脳内にあるミラーニューロンシステムの機能との関連
中野 重行
1
1大分大学
キーワード:
「情動的共感」と「認知的共感」のバランス
,
感情の動きの傾向を理解する
,
「共感」へのミラーニューロンシステムの関与
Keyword:
「情動的共感」と「認知的共感」のバランス
,
感情の動きの傾向を理解する
,
「共感」へのミラーニューロンシステムの関与
pp.938-941
発行日 2020年12月25日
Published Date 2020/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201689
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「平静の心」(Aequanimitas)は,米国ジョンズ・ホプキンス大学で内科学教授を務めたウイリアム・オスラー(William Osler,1849〜1919)が,1889年に前任のペンシルベニア大学を辞任する際に行った告別講演の題名です。オスラーが行った講演をまとめて出版した本のタイトルにもなっています*。
オスラーは,この講演の中で,医療者は「平静の心」を持って医療の世界で働くことの重要性を強調し,「沈着な姿勢に勝る資質はない」と述べています。心が動き,揺れることにより,医療者としての冷静な判断ができなくなることはあってはならないとして,戒めたのです。医療者は,冷静に考え,医学的に適切な判断をして,行動に移すことが大切だと言うのです。この言葉に沿うかのように,かつては,医療者は患者の気持ちに共感しすぎてはいけないと考えて,患者の身体的な所見に注意を集中させて,患者の気持ちの動きについては軽視する人もいたように思います。
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