日本老年看護学会誌(老年看護学) 10巻1号 (2005年11月)

巻頭言

看護の力の立証 井上 郁
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 昨年の春から20年ぶりに「病院」という職場に勤めることになった.職場が回復期リハビリテーションという新しい考え方のもとに開設された病院であるというだけでなく,20年という時の長さが,医療現場の状況を大きく変貌させ,同時に私自身をも大きく変えていたことをいまさらながらに実感した.新しい驚きや学びも多く,「日々新た」という言葉がぴったりの毎日で,それはまさに,私にとってはリハビリテーションの1年であったように思う.

 今,実践の場で看護や介護のスタッフたちを毎日見ていて感じるのは,人の日々の営みを支えることのすごさである.その第一歩が寝,食,排泄,清潔の徹底的な分離だと思う.ベッドは寝るための場所であり,食事や排泄の場所ではないことは誰でも知っている.ベッドのうえで排泄をしたいとは思わないし,ベッドの上で体を拭くよりはゆっくりと浴槽に浸かりたいと思うのは当然のことである.急性期の場合には病状的に無理なこともあるだろう.しかし,看護師は「病院だから…」「病気なんだから…」を言い訳に使っていないだろうか.患者(patient)にまさに我慢(patience)を強いていないだろうか.文字どおり24時間,患者のペースで,“普通の人”と同じように,おいしいと思って食事をし,トイレで排泄をし,ゆったりと湯船に浸かるという日常の活動を支え続けているスタッフを見ていて,そして表情豊かに,身体的にも精神的にも“立ち上がっていく”患者を見ていて,看護の力と看護師にできることがいかに多いかということを改めて教えられた.

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 本研究では,移動能力があり,身体の障害も軽いにもかかわらず閉じこもっている高齢者には,心理的要因が大きく作用しているとの観点から,その心理的要因の構造を明らかにすることを目的とした.なお日常的な外出頻度が週1回以下の者を「閉じこもり」と定義した.

 A県O村に居住する65歳以上の高齢者を対象に,質問紙調査を行い,252名(男性109名,女性143名,有効回答率は80.5%)の回答から以下の結果を得た.

 1.閉じこもりの有無と関連のある心理的要因は「生活創造志向」「人生達成充足感」「穏やかな高揚感」「外出志向」の4項目であった.閉じこもり群は非閉じこもり群に比べ,この4因子が有意に低かった.

 2.「生活創造志向」の低さを予測する要因は,年齢が高い,1km歩行ができない,日常の時間が決まっていない,手段的サポートがない,の4つであった.

 3.「人生達成充足感」の低さを予測する要因は,年齢が低い,現在の体調が悪い,外出の不安がある,手段的サポートがない,の4つであった.

 4.「穏やかな高揚感」の低さを予測する要因は,現在の体調が悪いことであった.

 5.「外出志向」の低さを予測する要因は,性別が男性であることと,何らかの身体的不自由感があることであった.

 閉じこもり予防を目指した活動では,こうした心理的特徴をふまえた関わりが必要となる.

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 研究目的は,要介護高齢者の家族介護者に対する心理・教育的介入プログラムの介護負担感と介護満足感における効果を検証することである.対象者である要介護高齢者の家族介護者54名を続柄と介護度で無作為に介入群と対照群に割り付けし,ベースラインと2週間後に個別面接にてデータを収集した.介入群に対しては,ベースラインデータ収集後の面接で,平易な文章で介護の知恵を記載したパンフレットを用いて教育的支援を,面接と1週間後の電話にて自尊心の支援,自己効力感の支援,モチベーションの支援を含む心理的支援で構成する心理・教育的介入プログラムを実施した.結果として,介護負担感は介入群で有意に減少したが対照群では変化せず,介護満足感は,両群で変化していなかった.この結果は,本研究における心理・教育的介入プログラムが介護負担感減少効果はあるものの,満足感には効果がみられないことを示唆している.

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 本研究の目的は,積雪寒冷地において雪や氷が原因で骨折した高齢者の特徴を明らかにすることである.対象者は,北海道上川地域の2病院に,平成14年11月から平成15年3月の期間に骨折で入院した65歳以上の高齢者51名で,調査票を用いた診療録からの調査と面接聞き取り調査を行った.結果,雪や氷が原因で骨折した高齢者は,比較的若く,心身機能の障害が少なく,高い活動能力をもっている者であった.積雪寒冷地において雪や氷が原因で骨折した高齢者への入院中の支援として,退院時のADLを可能な限り入院前に近づけること,安全かつ自立した日常生活を視野に入れた退院指導,退院後のリハビリテーションの継続,関係職種間の連携強化の重要性が再確認された.また,雪や氷が原因での骨折を予防するための保健活動としては,比較的若く活動的な高齢者が参加しやすい講座の企画や広報活動,健康支援活動を体系的かつ効率的に推進する健康づくり支援システムの構築が必要であると考えられた.

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 本研究では,認知症高齢者の家族介護力評価指標の作成とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.家族の介護力について構成概念を規定し,42項目の質問肢を作成した.認知症高齢者の介護者123名に自記式質問紙調査を行い(4件法,0〜3得点化),回答に偏りの大きい項目,類似項目,項目-全体相関係数の低い項目,因子負荷量の少ない項目を削除し最終的に20項目を選定した.介護力合計得点と各項目の相関係数は0.483から0.813,Cronbachのα係数は0.921であった.因子分析では固有値1以上である認知症ケア能力,介護生活を安定させる能力,関係調整能力,自己管理能力,QOL向上能力の5因子を抽出し,累積因子寄与率は56.8%であった.これらの因子はあらかじめ規定した構成概念とほぼ一致していた.

 介護力得点の関連要因を分析した結果,介護者の健康状況,認知症高齢者の自立度,デイケア/デイサービスの利用,認知症の相談希望,認知障害の対処に関する相談,認知症介護に関する学習の機会の有無が認知症高齢者の家族介護力に関連することが推察された.

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 本研究の目的は,大腿骨頸部骨折患者のせん妄に関する看護の構造と病棟管理上の課題を明らかにすることである.整形外科病棟看護師長11名を対象に面接調査を行った.インタビューの内容は,①大腿骨頸部骨折患者のせん妄をどのようにアセスメントしているか,②せん妄の予防および発症時のケアの内容,③病棟管理者としての対応やスタッフ教育,④せん妄ケアにおいて困っていること,とした.分析は,逐語録から質問項目に沿ってカテゴリー化し,アセスメント,予防ケア,発症時のケアに含まれるカテゴリー間の関係性を検討した.その結果,大腿骨頸部骨折患者のせん妄に関するアセスメントは,せん妄発症の身体因子よりも環境の変化や不動に関連した促進因子に注目して行っていた.また,せん妄の予防ケアは患者の日常性を維持する関わりが多く,発症時のケアはせん妄から二次的に起こすおそれがある転倒・転落,点滴類の自己抜去などの事故防止対策が主体であり,せん妄の身体因子を取り除いたり軽減する援助は少なかった.また,管理上の問題として,せん妄患者の入院期間の延長,ケア環境の不整備,せん妄ケアが標準化されていないことがあげられた.今後は,せん妄の発症要因を系統的にアセスメントし,予防ケアに結びつくようなアセスメント・ツールの開発,ケアの標準化,ケアに必要な人員や環境の根拠を明確にしていく必要性が示唆された.

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 本研究の目的は,老人性難聴をもちながら地域で生活している高齢者の体験の意味を明らかにすることとした.対象は耳鼻科医に老人性難聴の診断を受け,地域で生活している高齢者17名である.方法は半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,難聴高齢者は何とかして聞きたいと積極的に工夫して聞いていた.一方では,すべてを聞こうとは思わないと聞かなくてもよいと思えることを自ら選択していた.また,聞こえづらさにより趣味や仕事,人との関わりに影響を受けるだけでなく,身の危険も感じていた.補聴器は思いどおりにならないとしながらも,自分が補聴器に合わせて慣れなければならないと,聞きたい場面で補聴器を利用していた.さらに,難聴高齢者は聞こえそのものや他人と比較し自分を捉え,今後も何とか死ぬまで聞こえを保持したいと思いながら,地域で生活していることが明らかになった.以上より,難聴高齢者がさまざまな思いをあわせもち地域で生活していることを理解し,「聞きたい」という強みを支える援助の必要性が示唆された.

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 介護老人福祉施設の長期入所者に対するEnd-of-Life Care(終末期にその人らしく生きることを支えるケア)において,看護師が行う看護の実際と特徴を明らかにすることを目的に,介護老人福祉施設の看護師4名に対してEnd-of-Life Careのプロセスについて半構成的面接を行い,質的に分析した.

 看護師は,日常生活にあらわれる生命力の変化から死を予見しEnd-of-Life Careを開始していた.看護師は,嘱託医や介護職との協働の中,入所者・家族の思いを尊重した看護を展開しており,その看護行為の原動力には,数年以上の長期にわたる関わりを通して生まれた入所者に対する家族のような愛情が関連していた.しかし,一方で看護師は,入所者にとっての最善を考える中で,医療ニーズへの対応や認知症に伴う意思確認の難しさについてジレンマを抱えていた.

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 わが国は,類をみない速さで男女とも世界の長寿国となった.寿命の延長に伴い,100歳以上の高齢者(百寿者)も増え続けている.増加し続ける百寿者であるが,I県における百寿者の生活実態は把握されていない現状にある.そこで,百寿者の生活実態を明らかにすることを目的に,百寿者名簿で氏名と在住する市町村名が公表されている百寿者303名を対象として,質問紙調査を行った.データ分析は,質問紙に回答した時点で満100歳を超える180名を対象とした.基本属性,職業の有無,健康状態,日常生活動作および認知機能,食事摂取内容,介護認定状況,利用しているサービス,性格傾向,長生きの秘訣について質問紙調査を行った.今回は,日常生活動作および認知機能と,健康状態,居住形態,退職後の趣味・社会活動の関連性について検討した.

 居住形態については,自宅で生活している人のほうが有意に日常生活自立群が多く,自宅で生活している人のほうが有意に認知機能保持群が多かった.

 本研究の調査では,I県における百寿者の生活実態が明らかとなり,健やかな長寿を達成する要因を検討するための基礎資料となった.

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 施設の入浴環境と看護職の入浴ケアに対する意識と実践を,生活の継続性・健康管理・基本的看護の構成要素を整える手段としてのケア(以下:基本的看護の側面)の3側面から調査した.そして,3側面から入浴ケアを捉えている看護職と捉えていない看護職の背景の違いを探索することを目的とし,今後の施設ケアのあり方を検討した.

 県内のすべての特養110施設と老健70施設の看護職(1施設3〜5人)を対象に郵送調査を行った.施設からは120施設(66.7%),看護職からは346名(特養179名,老健167名)の回答が得られ,これを分析対象とした.

 その結果,3側面からみた意識は健康管理的側面の直接介助に関する項目にのみ差がみられた以外は,両施設ともに同様の意識をもっていた.しかし,実践では老健のほうに実施するものが多く,特に健康管理的側面の事故防止の点において著しかった.生活の継続性の側面や基本的看護の側面は両施設において十分には行われていなかった.3側面から入浴ケアを捉える看護職の特性は,経験年数が5年以上と長く,夜間入浴の実施についても実施したいと意欲的な考えをもつ看護職であった.

 ケア提供方法や特養の人員配置基準の見直し,個別性を重視したケアの重要性が示唆された.

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 本研究の目的は,在宅療養中の高齢脳卒中患者の食に関する意識構造を明らかにし,再発予防にむけた食事指導について検討することである.方法は,通院中の高齢脳卒中患者7名を対象に半構成的面接による質的帰納的研究法による分析を行い,さらに臨床栄養データを統合させて検討した.その結果,脳卒中の《原因の認識》のうち原因の内在的気づきは『再発をおこさないための食』,『疾病コントロールのための食』であった.一方,原因の外在的気づきは『現在の関心に関連させた食』であり,3つの《意味づけした食意識》が抽出され,その背景には《再発の脅威》が影響していた.全対象とも低栄養状態はみられなかった.

 高齢脳卒中患者の再発予防にむけた食事指導は,食に関する意識構造である《原因の認識》と《意味づけした食意識》および《再発の脅威》に着目することの重要性が示された.

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 本研究の目的は脳梗塞の治療を受けている高齢患者を対象に,せん妄発症の実態と発症に関与する因子および年齢との関連を明らかにすることである.調査を行った脳神経外科病院1施設において,診療記録,看護記録などから,基本属性,せん妄発症状況などに関する19項目をデータ収集した.対象者158名をせん妄発症群とせん妄非発症群の2群に分け,単変量解析を行い,有意差のあった因子についてステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った.せん妄の発症は,22.2%にみられ,入院直後に発症し持続期間が1日間の場合が多かった.年齢階級別の発症率は,前期高齢群が17.9%,後期高齢群25.3%であった.単変量解析により有意差のみられた因子は「入院時間帯」「ライン類の本数」「集中治療室の利用あり」「意識レベル」「入院前に睡眠導入剤の使用あり」で,ロジスティック回帰分析の結果,「17時から翌朝9時までの入院」(オッズ比2.59;95%信頼区間1.18〜5.67),「ライン類が2本以上」(オッズ比4.63;95%信頼区間1.88〜11.40),「意識レベルJCSI-2以下の水準」(オッズ比3.12;95%信頼区間1.42〜6.84),「入院前に睡眠導入剤の使用あり」(オッズ比2.63;95%信頼区間1.16〜5.95)の4項目が採択された.さらに,オッズ比の高い「ライン類が2本以上」「意識レベルJCSI-2以下の水準」を含む組み合わせを保有する者に発症率が高く,この4因子中いずれか1因子をもつ場合の発症率が9.8%であったのに対し,4因子すべてをもつ場合は75.0%であった.

 以上より,高齢脳梗塞患者に対するせん妄発症の予測と予防的看護介入は高齢者の入院と同時に開始されることが望ましく,前期高齢者と後期高齢者のせん妄発症因子の差異に考慮した介入法と,さらに詳細な因子およびその因子の組み合わせの特定が予防的看護ケアに寄与する可能性が示唆された.

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 われわれは,認知症高齢者の家族2組とその高齢者をケアしている8名のケアスタッフに,2つの異なる回想法場面の編集映像を提示し,面接調査を実施し,回想法の中での認知症高齢者の変化を再現したDVD媒体がもたらす効果について検討した.面接内容の特徴的な発言内容から回想法の効果について現れている表現を抽出した.その結果,認知症高齢者の家族への回想法場面の編集映像の提示で主な発言内容の表現として,《誌知症高齢者の実像の受け止め》と《映像でみた高齢者に誘発された語り》が抽出された.さらに認知症高齢者の豊かな表情,たくさんの発言,そして堂々とした態度という映像を,家族に提示した後の主な表現として,《回想法の効用の実感》と《回想法への期待》が抽出された.ケアスタッフへ回想法場面の編集映像を提示した後の表現として,日常生活と回想場面の比較から,《現在の姿の二面性への気づき》と《高齢者の過去の把握》が抽出された.さらにケアスタッフは,回想法の場面の編集映像に対し《回想法の効用の実感》と,回想法を連続的に実施することによる認知症高齢者に対する《新たなケアの糸口の発見》に関する表現が抽出された.誌知症高齢者の変化を再現する媒体として編集された回想場面の編集映像がもたらした効果として,家族にとっては認知症高齢者とともに過ごした人生を想起する自分の変化に気づく機会となると考えられる.ケアスタッフにとっては,回想法による誌知症高齢者の変化を日頃の個別ケアに適用する手がかりになると考えられる.

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 本研究は,誌知症に対する社会的理解や制度が十分整っていない時代に介護を経験し,同時に家族の会役員として活動してきた5名を対象として,介護経験と役員活動をつなぐ内面的理由を明らかにすることを目的とした.研究方法は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.その結果,介護経験と役員活動の相互作用として,認知症者の介護に対する「絶対的直接経験性」という共通認識,共通経験者の出会いにより開放されていく「閉塞感からの解放」,介護経験を家族の会役員として生かしていく「メディアとしての介護経験」,介護経験を再現し再活性化し,意味づけていく「経験の現在化」,介護経験で得られた能力を他者に伝える「経験の連鎖的伝承」があった.また家族の会への取り組みの特徴として「はじけるようなアドボカシー」があった.

 これらの結果から,家族の会役員が経験的に積み重ねてきた独自の援助機能を生かせる協働活動のあり方を検討していくことが看護職にとって重要な意味をもつことが示唆された.

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 基礎看護教育における技術教育のあり方の示唆を得ることを目的に,看護学生78名の老年臨床看護学実習における看護技術の習得状況と実践能力ならびに実施要点の自己評価の実態を明らかにし,両者の関係を検討した.主体的実施率の高い技術は日常生活援助とバイタルサインの測定であり,実施率の低い技術は検査や処置に関わる技術であった.主体的実施率と実践能力ならびに実施要点の自己評価との間には,有意な正の相関がみられた.また,主体的に実施した者の実践能力の自己評価は,見学した者や看護師・教員と一緒に実施した者より有意に高かった.実施要点の自己評価は,主体的実施率の高い技術は自己評価も高い傾向であったが,患者の個別性や危険の予測に関わる実施要点の評価は低かった.以上より,看護技術の性質や学生の状況により主体的な実施が可能な場合は,積極的に取り組めるよう指導すること,学生個々の実践内容にふみこんで指導することの重要性が示唆された.

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 本研究の目的は青年期以降の健常者における身体満足度の年代間差と性差について明らかにすることである.青年期から高齢者までの対象者の背景をある程度均質化するために,教育系大学生366名,現職教諭297名,教諭退職者255名を対象にした.これらの対象者に身体満足度尺度を用いて質問紙調査を実施した.主な結果は以下の3点である.①身体満足度は加齢とともに肯定的な高得点化の有意な傾向を示し,老化による身体の形態的・機能的変化が必ずしも身体満足度に直接に否定的な影響を与えることはないことが示唆された.②身体満足度は各年代を通じて男性のほうが肯定的であるという顕著な性差が認められた.③身体満足度の因子構造は,女性では,どの年代でも一貫して〈体型〉因子が第1因子として抽出されるのに対して,男性では,加齢に伴って〈容貌〉などの外見から〈健康活力〉などの健康や活力を重視する方向に推移するという年代間差と性差が認められた.

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 痴呆性高齢者のターミナルケアに関する研究や実践課題を明らかにすることを目的に,国内の文献を収集・検討した.文献数は2000年以降に増加しているが,文献の精選を経て最終的に21文献が検討対象となり,うち原著は8編だった.これらの文献は,「特異な病像をもつ痴呆性高齢者に対するターミナルケア」「各種療法の取り組み」「特定の場におけるターミナルケア」「医療行為等に対する意識と実態」等に分類された.

 検討結果からは,①痴呆性高齢者のターミナルケアのプログラム開発が必要であり,そのためには医療行為の効果と侵襲に関する実証的な研究が求められること,②これまでターミナルケアの機能を想定していなかった施設,ターミナルケア機能を有するが痴呆ケアの蓄積に乏しい施設,この双方から痴呆性高齢者のターミナルケアを志向する徴候がみられ,ケアの場は多様化の方向にあること,③終末期における医療行為等が痴呆性高齢者自身の意思に基づいて展開されるには,告知や事前指示が有効に機能する仕組み作りとともに,ケア従事者の代弁者役割にも着目する必要があること,が示唆された.

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 本研究は,ケアスタッフが遭遇した夜間における認知症高齢者の行動・精神症候群の出現状況,および,行動・精神症候群に対するケアスタッフの捉え方を明らかにすることを目的とした.対象者は,夜間の認知症高齢者に直接関わるケアスタッフ441名であり,認知症高齢者の行動・精神症候群に関する質問紙調査を行った.その結果,11項目の行動・精神症候群のうち,夜間に遭遇したケアスタッフが多かったのは,「脱衣する」,「暴言・暴力をする」,「便こねする」であり,「破損をする」を除く10項目に半数以上のケアスタッフが遭遇していた.また,行動・精神症候群に対してケアスタッフは,認知症高齢者の生理的ニーズや行動・精神症候群が引き起こされるきっかけを捉えていた.今後は,日中との違いや実際の認知症高齢者の行動・精神症候群との関連を検討する必要性が示唆された.

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はじめに

 平成16年11月6日,日本老年看護学会第9回学術集会において,「老年看護研究の倫理」をテーマにインフォメーション・エクスチェンジを開催した.老年看護の領域において研究を進めていくにあたりさまざまな課題がある.特に,倫理的な課題については多くの研究者が悩み,工夫して行っているのではないかと予想し,参加者とともにその問題点や悩みを拾い出し共有したいと考え,このテーマを出した.

 このセッションでは,グループをつくり,ブレイン・ストーミング法(以下BS法)を用いて意見を出し合う方法をとった.時間内では意見を出し合うことが中心であったが,参加者それぞれが率直に意見を出し合う中から感じ,考えたことは多かったと思う.ここでは,それらの意見,すなわち集まった参加者たちがもつ老年看護研究を行ううえでの倫理的課題と,そこで話し合われた解決策を整理して提示する.これらは,老年看護領域での研究に携わっている者にとって有用な資料となると考える.

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はじめに

 平成12年5月に児童虐待防止法が,平成13年4月に,いわゆる配偶者間暴力防止(DV)法が成立し,それぞれ児童相談所,婦人相談所を実施主体として,本格的な活動が実施されるようになった.高齢者虐待についても,その深刻な実態が明らがになるとともに,法制度の整備の必要性が高まり,平成17年8月には議員立法として法案が衆議院に提出された.衆議院の解散により廃案となったが,総選挙後10月に再提出され,平成18年4月から施行されることになった.一方,改正介護保険法においても,高齢者虐待防止対策は地域包括支援センターの業務として位置づけられ,今後,自治体その他においても,制度化や活動が進展することが期待される.本稿では,ここに至るまでの経過を整理するとともに,「高齢者虐待防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下,高齢者虐待防止法と略す)の主な内容と課題について述べる.

基本情報

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日本老年看護学会誌(老年看護学)
10巻1号 (2005年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1346-9665 日本老年看護学会

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