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Ⅰ.はじめに
認知症高齢者は認知症の進行に伴い,感染症や転倒による骨折などの急性疾患を発症しやすく,急性期病院での入院治療が必要となる.身体合併症を有した認知症高齢者が急性期病院に入院した場合,疾患による症状に加えて,検査や治療による多様な苦痛を経験する.また,治療が主体であり住み慣れた家庭とは異なる病院の構造,医療者が発する話し声や足音,消灯や食事など病院のスケジュールを強いられるなどといった日常生活との落差,なじみのない人とのやりとりなど多くの環境の変化がある.これらの背景から,認知症高齢者は不安やストレスが生じやすく,認知症の行動・心理症状(BPSD;behavioral and psychological symptoms of dementia)やせん妄を発症しやすい.BPSDやせん妄は,適切な対応により軽減できることも多いとされているが,日々の変化や個別性があるため,1人ひとりの状況に応じたケアが必要となる.そのため多くのスタッフ人員や時間が必要とされ,急性期病棟では対応に苦慮し,結果としてやむを得ずミトンや抑制帯等を使用している現状がある.一方,急性期病棟の使命は身体疾患の回復,および日常生活動作(ADL;activities of daily living)をできる限り維持して,早期に元の生活に戻すことである.個々に異なる認知症高齢者の臨床像を把握し,尊厳を守りながら,個々に適した療養環境とその人らしさを重視したケアを提供しながら,住み慣れた地域に早期に帰すという使命を達成するためには組織的な取り組みが必要となる.
そこで,身体拘束を行わない急性期一般病床の取り組みとして,梶原診療所における多職種協働による包括的実践を紹介する.
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