Japanese
English
巻頭言
看護の力の立証
Verification of Nursing Power
井上 郁
Iku Inoue
pp.4
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
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- Abstract 文献概要
昨年の春から20年ぶりに「病院」という職場に勤めることになった.職場が回復期リハビリテーションという新しい考え方のもとに開設された病院であるというだけでなく,20年という時の長さが,医療現場の状況を大きく変貌させ,同時に私自身をも大きく変えていたことをいまさらながらに実感した.新しい驚きや学びも多く,「日々新た」という言葉がぴったりの毎日で,それはまさに,私にとってはリハビリテーションの1年であったように思う.
今,実践の場で看護や介護のスタッフたちを毎日見ていて感じるのは,人の日々の営みを支えることのすごさである.その第一歩が寝,食,排泄,清潔の徹底的な分離だと思う.ベッドは寝るための場所であり,食事や排泄の場所ではないことは誰でも知っている.ベッドのうえで排泄をしたいとは思わないし,ベッドの上で体を拭くよりはゆっくりと浴槽に浸かりたいと思うのは当然のことである.急性期の場合には病状的に無理なこともあるだろう.しかし,看護師は「病院だから…」「病気なんだから…」を言い訳に使っていないだろうか.患者(patient)にまさに我慢(patience)を強いていないだろうか.文字どおり24時間,患者のペースで,“普通の人”と同じように,おいしいと思って食事をし,トイレで排泄をし,ゆったりと湯船に浸かるという日常の活動を支え続けているスタッフを見ていて,そして表情豊かに,身体的にも精神的にも“立ち上がっていく”患者を見ていて,看護の力と看護師にできることがいかに多いかということを改めて教えられた.
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