血液フロンティア 26巻10号 (2016年9月)

特集 がんのバイオマーカー

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 現在,バイオマーカー開発が盛んに行われ,様々なタイプのバイオマーカーが開発されている。この「様々なタイプ」が生まれた背景には,技術的な進歩によって,がんの痕跡を色々な角度から検出可能になったこと,そして,現在の医療現場における多様なニーズに応えようとした結果である。核酸,タンパク質,糖鎖,代謝産物,そして,がん細胞そのものをマーカーとして利用することで,早期がんの発見,予後予測,治療抵抗性の判断などに役立てている。

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 血漿中のアミノ酸濃度は健康人では一定に保たれるが,がんを含む様々な疾患では,そのバランスが変化する。我々は,健康人および各種がん患者(胃がん,肺がん,大腸がん,前立腺がん,膵臓がん,乳がん,子宮がん・卵巣がん)の血漿サンプルを大規模に収集し,アミノ酸プロファイルを測定することによって,健康人とがん患者を判別することができるアミノインデックス® がんリスクスクリーニング(AICS®)検査を開発した。本検査の性能に加え,従来の腫瘍マーカーや画像検査との比較に関する最近の知見について概説する。

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 微量の体液を疾病の診断に用いる「リキッドバイオプシー」が注目されているが,特にがんは早期発見がその治療効果の鍵を握るため,体液から高感度でかつ高い正確性でがんの存在や悪性度を診断できる技術の開発が望まれている。最近では,がん細胞が分泌する膜小胞(エクソソーム)が,がんの悪性化や転移といった現象と密接に関連していることが次々に明らかとなっている。血中に分泌されるがん細胞由来エクソソームは,様々ながんの情報を包含していることから,有用な診断マーカーとなり得る。本稿では,血中エクソソームを利用したリキッドバイオプシーの最近の研究動向を概説する。

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 マイクロRNA(miRNA)は20~25塩基ほどの長さの一本鎖の短鎖RNAであり,血液中に安定に存在し,がんをはじめとした様々な疾患のマーカーとなることが多くの研究によって示唆されている。一方で,複数の研究によって報告されるマーカーmiRNAの種類が一致しないという問題も指摘されており,検査・診断用途の実用化のためには,優れた検出系による大規模な研究が必須である。現在,日本で大規模なマーカーmiRNA研究が進められており,近い将来,臨床現場で活用される血中miRNA検出用ツールの実用化が期待される。

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 肝臓がんは全世界のがん死の第4位を占める。多くはウイルス性肝炎・肝硬変を原因とするが,近年,非ウイルス性肝がんの増加がわが国を含めた世界中で問題になっている。わが国の肝がん患者の予後は,世界的に見ても非常に良い。その理由として,がんバイオマーカーと定期的な画像診断によるサーベイランスが確立されているためと考えられる。糖鎖はタンパク質の翻訳後修飾に関わる重要な生体分子の1つで,近年,臨床医学との融合研究が目覚ましい。本稿では,糖鎖バイオマーカーによる新しい肝がんのサーベイランスの可能性を追究するとともに,糖鎖バイオマーカーによる非ウイルス性肝がんの早期診断のストラテジーに関しても言及したい。

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 膵がんは早期発見が難しく,予後が最も悪い固形がんの一つである。そこで,質量分析法を用いた膵がん早期診断の血液バイオマーカーの探索を行った。血液中に循環しているC末端が切断されているアポリポプロテインA2(apolipoprotein A2:apoA2)アイソフォーム(apoA2-ATQ/AT)が膵がんで有意に減少していることを見出し,臨床応用のために新たにELISAによるapoA2-ATQ/AT測定法を開発した。ApoA2-ATQ/ATの濃度減少は,健常者から膵がん患者を見分けるだけではなく,膵がんの高リスク疾患患者をも検出することができた。ApoA2-ATQ/ATは,早期膵がん患者や膵がん高リスク疾患患者のスクリーニングのためのバイオマーカーの可能性がある。

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 Liquid Biopsyは,内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する従来の生検(biopsy)に代えて,血液などの体液サンプルを使って診断や治療効果予測を行う技術である。さらにLiquid Biopsyによるがんの診断は低侵襲でかつ複数回の診断が可能で,がんの不均一性(Heterogeneity)を克服する検査法として期待されている。近年,世界中で研究開発が進められ,ついにLiquid Biopsyによるゲノム診断が現実となってきた。2016年6月に米国ではFDAが,非小細胞肺がんにおいて,上皮成長因子受容体(EGFR)変異に対して血液を用いた遺伝子診断を認可した。  Liquid Biopsyでがんを診断し,治療標的を探索するというゲノム医療は理想的ではあるが,その社会実装には未だハードルは高い。しかし,ゲノム解析技術の集成とも言えるこのテクノロジーが,がん患者において恩恵を被ることは疑う余地はなく,今後の発展が期待されている。

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 近年,肺がんを含む固形がんにおける分子標的治療の発展により,詳細な分子生物学的診断のための組織検体の重要性が高まっている。しかし,生検に伴う侵襲,限られた検体量等が課題となっている。固形がん患者の血液中において,循環腫瘍細胞(circulating tumor cells:CTC)が存在しており,その数が予後因子となることが知られている。これらCTCを腫瘍の代替組織として用いる診断法の確立に期待が寄せられている。さらなる肺がん個別化医療実現へ向けたCTC診断開発について,本稿において紹介したい。

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 がんの早期発見には有用なバイオマーカーの開発が重要である。臨床現場ではがん患者には特有の匂いがあると言われており,匂い物質もマーカーとなる可能性がある。微量の匂い物質を検知できるセンサーがあれば,がん組織が小さいうち(早期がん)に,臓器の裏にあって見えにくいといった画像診断の欠点を克服する形で,がん早期発見システムが確立できる。匂いを検知するセンサーとして,我々は人工機器の性能を凌駕する生物の嗅覚に注目し,それを用いたがん診断法の開発を進めている。本稿では,その技術と今後の展望について紹介する。

連載 私のこの一枚(148)

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日本人のT細胞腫瘍とB細胞腫瘍 下山正徳

連載 世界の血液学と血液学専門誌 第7回

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血液フロンティア
26巻10号 (2016年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6940 医薬ジャーナル社

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