消化器画像 8巻2号 (2006年3月)

特集 いま胆囊癌を見直す

  • 文献概要を表示

はじめに

 胆囊は一般に,対外式US,CTなど非侵襲的画像診断法により観察しやすく,癌の早期発見が可能な臓器として認識されている.しかしながら,胆囊癌は依然として予後不良の消化器系癌の1つである.その理由として,①発見される早期癌の多くがポリープ状の隆起型であり平坦型の診断が出来ていないこと,②結石やそれに伴う胆囊炎あるいは胆囊腺筋腫症などにより癌の所見がマスクされる場合が少なくないこと,③胆囊管癌の診断が容易ではないこと,などが挙げられる.また,胆石症などに対する腹腔鏡下胆囊摘出術が広く普及したことにより容易に手術が行い得るようになったが,その結果,不幸にも胆囊癌が存在した場合には胆汁漏出による癌の播種の報告も散見される.一見,診断が容易そうであるが,画像診断の進歩した現状においても「胆囊癌の診断は実は難しい」のである.

  • 文献概要を表示

要旨 胆囊癌は肉眼的に胃癌や大腸癌と異なる点が多いことを述べた.その肉眼診断には粘膜模様の異常が最も重要な所見であり,その異常で0-IIb型癌であっても75%を拾い上げることが可能で,これに色素法を用いた拡大観察を行うとほぼ100%近くまで拾い上げが可能となることを述べた.胆囊癌の早期発見には,術中に10分固定標本の肉眼観察の重要性,さらに粘膜異常の術前診断の重要性を強調した.

消化器画像2006 ; 8 : 147-154

  • 文献概要を表示

要旨 本邦は超音波検査のおかげで比較的早期の胆囊癌病変の経験を多く持ち,その画像の知識は最高レベルと言ってよい.しかし表面型早期癌や微小ss癌などについては症例も少なく十分に理解されていないようである.本稿ではこれらを中心に画像を概説した.さらに種々に提唱されている手術術式について,いろいろな点で反省期に入っていることを概観した.これらも比較的早期の病変が存在する理解がなくして,その成績の正しい検討は行えないことを指摘した.病巣の肉眼型,画像,浸潤深度の細分化,その分布状況など,予後との関連を加味した表現法が望まれる.

消化器画像2006 ; 8 : 155-161

  • 文献概要を表示

要旨 今回当科における術前診断が困難であった胆囊癌の見直しを行った.診断困難例は切除胆囊癌72例中17例(23.6%)に認めた.うち胆石は12例(70.6%)に合併していた.深達度はm 6例,ss 9例,se 1例,si 1例であった.癌の占居部位は頸部3例,体底部8例,全体6例で肉眼型はIsp 1例,IIa 1例,IIb 4例,乳頭浸潤型3例,結節浸潤型6例,平坦浸潤型2例であった.CA19-9は23.1%のみ軽度高値を認めたが,CEAは全例で正常値を示した.術前診断は慢性胆囊炎が13例,急性胆囊炎1例,胆囊腺筋腫症1例,コレステロールポリープ1例,Mirizzi症候群1例であった.画像の見直しを行ったが胆囊癌を疑う画像所見を得られたのはわずか6例(35.2%)であった.診断困難例の多くは隆起または壁肥厚を呈する進行癌であり,US,CTと引き続く精査による拾い上げが必要である.

消化器画像2006 ; 8 : 163-171

  • 文献概要を表示

要旨 胆囊隆起性病変の鑑別診断には可能な限り切除標本に近い画像所見が得られることが必要で,現状では超音波内視鏡検査が最も有用な検査法であると考えられる.典型的な画像所見を熟知し,個々の症例の特徴を十分に把握することが肝要である.また,質的診断には胆囊壁血流の測定も重要であり,現状では両者を併用した診断が最も確実な方法である.

消化器画像2006 ; 8 : 173-183

  • 文献概要を表示

要旨 日常遭遇する胆道疾患で最も鑑別が難しいものの1つが胆囊壁肥厚性病変である.なにより,癌の見逃しは患者の予後を左右する.良性疾患に典型的な所見であれば経過観察でよいが,胆囊癌を否定できなければ切除が望ましい.拾い上げ検査としてはUSが一般的であるが,胆囊頸部から胆囊管,底部の壁肥厚はUSでは十分観察できないことがある.壁の性状診断にはEUSが必要である.胆石合併例ではUS,EUSでは十分な観察ができないことがあり注意すべきである.胆囊全体を観察するうえでマルチスライスCT(Multi-detector row CT;以下MDCT)は有用である.US,EUSに比べ空間分解能に劣るが,結石の影響を受けず,Multiplanar reconstruction(多断面断層像;以下MPR)を作成することで,横断像の欠点を補うことができる.壁の厚みが軽度(3~5 mm)で,肥厚と濃染が均一なら慢性胆囊炎が考えられ,壁在結石や無エコーの存在は腺筋腫症が考えられる.不整な限局性壁肥厚や高度な壁肥厚は癌を除外する必要がある.血管造影も進行胆囊癌の診断に限り有効なことがある.壁肥厚型の胆囊癌は進行癌であることが多く,疑わしきは切除すべきである.

消化器画像2006 ; 8 : 185-192

  • 文献概要を表示

要旨 胆囊管癌診断の現状について自験例を含め解説した.診断基準には,以前から提唱されているFarrarの診断基準を満たす狭義のものと,最近では三管合流部に癌が存在し,臨床的かつ組織学的に主座が胆囊管に認められるものとする広義の考え方がある.

 また原発性胆囊管癌の頻度は低く,かつ術前診断が困難と考えられていたが,近年の画像診断の進歩に伴い,術前に診断される症例が増えてきている.胆囊管癌の画像診断は,US,CTにより,胆囊腫大,胆囊炎,胆泥貯留や胆囊管から三管合流部付近の壁肥厚などに着目し,精密検査へと誘導することが重要である.病変の指摘および主座の同定にはEUS,IDUSが有用であり,胆管狭窄を有する場合にはERCでの胆管壁外からの浸潤と考えられる圧排・軸変位など狭窄形態の詳細な読影が必要である.今後,EUS,ERC+IDUSなどを積極的に取り入れ,総合的な判断による胆囊管癌の術前診断率のさらなる向上が期待される.

消化器画像2006 ; 8 : 193-199

  • 文献概要を表示

要旨 進行胆囊癌の進展様式を術前の画像診断により,ほぼ胆囊に限局した癌のほかに,肝門浸潤型,肝床浸潤型,肝床肝門浸潤型,合流部浸潤型,リンパ節転移型に分類し,各進展様式の進行の程度をHinf,Binf,Si,Nの各進展要素の程度を組み合わせて評価し手術適応はもとより術式を決定している.

 1998年5月~2004年11月の間に66例の開腹手術を行い,うち49例(74%)に根治手術を施行した.49例中43例(87.8%)に病理組織学的に切除断端に癌の遺残がないことが確認された.術後合併症発生率は22.4%で術後在院死は2例(4.1%)であった.累積5年生存率は切除例全体では44%,Stage IVa(18例)では34%であった.

消化器画像2006 ; 8 : 200-206

  • 文献概要を表示

要旨 腹腔鏡下胆囊摘出術は,現状では良性疾患に対する手術である.しかし,早期胆囊癌に対する根治手術や胆囊癌鑑別困難症例に対するtotal biopsyに適応を拡大する施設が散見されつつある.しかし,術後に胆囊癌が判明した症例の報告や検討から,特殊な再発形式であるport site recurrenceの存在,術中胆囊損傷に伴う癌細胞を含んだ胆汁の腹腔内撒布の問題,術後見逃し症例の存在の可能性,など臨床上問題点が多いことから,胆囊癌への積極的な適応拡大は慎重に対処すべきである.

消化器画像2006 ; 8 : 209-215

Clinical Challenge―この画像から何が読めるか?

  • 文献概要を表示

患者 65歳,女性.

主訴 特になし.

家族歴 父が食道癌,母が胆管癌で死亡.

既往歴 変形性頚椎症手術,高血圧,高脂血症.

現病歴 2003年人間ドックのUSで左上腹部に径65 mmの囊胞性病変を指摘された.CT,MRIの精査を行い,径72 mmと増大したため手術目的に入院した.現症では腹部は軟で圧痛なく,腫瘤蝕知しなかった.CEA 2 ng/ml,CA19-9 4.5 U/l.

  • 文献概要を表示

患者 89歳,男性,主訴は肝機能障害.

既往歴 50歳 胆石にて胆囊摘出,88歳 前立腺癌にてホルモン療法.

家族歴,飲酒歴,喫煙歴 なし.

現病歴 症状なし.泌尿器科に前立腺癌の経過観察で来院した際に肝機能障害を指摘された.

  • 文献概要を表示

■症例提示

75歳,女性.

主訴 なし

入院目的 肝機能障害精査.

現病歴 2005年2月,近医にて肝機能障害を指摘され,精査目的に当科紹介入院となった.

  • 文献概要を表示

患者 73歳,男性.

主訴 超音波検診にて指摘された膵尾部腫瘍.

既往歴 前立腺肥大症治療中.

現病歴 1998年6月の超音波検診で膵尾部に長径5 cmの囊胞性腫瘍を指摘され経過観察されていた.2003年7月の検査で腫瘍径のわずかな増大を認めたために精査目的で本院紹介受診となる.経過観察中に腹痛などの自覚症状は認めていない.

  • 文献概要を表示

要旨 自己免疫性膵炎は2002年に診断基準が確立され現在までに多くの症例が集積されている.その結果,典型的な膵管像を呈する症例以外にも少数例ではあるが膵病変・胆管病変が病期により様々な形態をとることがわかってきた.今回われわれは約2年の経過の内に膵病変,胆管病変がともに変化し,特に胆管病変においては異時性,異所性に出現した症例を経験した.本症例では治療前後における長期経過中非常に興味深い画像所見を呈していた.

(消化器画像2006;8:216-226)

連載 膵癌類似病変―その臨床と病理 第2回

  • 文献概要を表示

■症 例

患者 89歳,女性.

主訴 なし.

現病歴 近医にて甲状腺腫瘤を指摘され,精査したところ,横行結腸癌と胃粘膜下腫瘍の診断で手術目的に入院となった.

既往歴 20歳時に子宮外妊娠にて手術.50歳時に右腎癌にて右腎臓摘出術施行.

家族歴 特記事項なし.

理学的所見 下腹部正中切開と右季肋部切開の手術創以外に特記事項なし.

血液検査 特に異常なし.

技術講座 ERCP関連手技のコツ―私はこうしている―

  • 文献概要を表示

■はじめに

 膵疾患診療におけるERCPの位置づけと役割はMRCPの登場によって大きく変貌をとげ,単なるルーチンの造影検査ではなく,膵管の微細病変の描出,膵液採取や膵管擦過細胞診・生検などの処置,膵石や膵仮性囊胞に対する治療などが求められる機会が増加している.本稿では膵管挿管の基本手技と膵疾患の処置・治療に不可欠である膵管深部挿管の実際について概説する.

  • 文献概要を表示

■はじめに

 膵全体の分枝を十分に造影したり,膵管内超音波検査や細胞診,生検などの精密検査として,あるいは膵管ドレナージや膵石除去術などの治療を行ううえで膵管挿管の意義が高まっている.

 さらに近年MRCP(Magnetic Resonance Cholangio-pancreatography)の普及に伴い診断目的のERCPは激減しているため,限られた症例数の中で内視鏡医を育成しなければならない.そのためには事前に十分なシュミレーション行うことが重要である.本稿では主膵管挿管の手順を中心に述べる.

基本情報

13443399.8.2.jpg
消化器画像
8巻2号 (2006年3月)
電子版ISSN:1882-1227 印刷版ISSN:1344-3399 医学書院

継続誌

文献閲覧数ランキング(
10月7日~10月13日
)

  • 第1位 まれな肝内肝外側副血行路 伊東 克能,藤田 岳史,松永 尚文 消化器画像 4巻 6号 pp. 651-658 (2002年11月15日) 医学書院
  • 第2位 肝の偽リンパ腫 市川 太郎,中原 圓,鳥羽 正浩,小林 由子,玉井 仁,村上 隆介,隈崎 達夫 消化器画像 3巻 1号 pp. 103-105 (2001年1月15日) 医学書院
  • 第3位 胆管性過誤腫 小林 達伺,東野 英利子,田中 優美子,板井 悠二 消化器画像 3巻 1号 pp. 95-98 (2001年1月15日) 医学書院
  • 第4位 第3回 選択的胆管造影および胆管深部カニュレーションの基本 猪股 正秋,照井 虎彦,斎藤 信二 消化器画像 8巻 3号 pp. 373-379 (2006年5月15日) 医学書院
  • 第5位 SonazoidとLevovistの動態の相違 平井 都始子,丸上 永晃,辻本 達寛,大石 元 消化器画像 9巻 5号 pp. 431-437 (2007年9月15日) 医学書院
  • 第6位 膵管内乳頭腫瘍(IPMT)と粘液性嚢胞腫瘍(MCT)の鑑別―症例検討を中心に 須田 耕一,福嶋 敬宜,山雄 健次,小井戸 一光,猪狩 功遺,柳澤 昭夫,大橋 計彦 消化器画像 3巻 3号 pp. 348-367 (2001年5月15日) 医学書院
  • 第7位 肝偽脂肪腫 北川 清秀,川森 康博,松岡 利彦,山端 輝夫 消化器画像 3巻 1号 pp. 81-83 (2001年1月15日) 医学書院
  • 第8位 A-Pシャントの画像診断 上田 和彦,杉山 由紀子,塚原 嘉典,古川 智子,八田 朋子,柳澤 新,山崎 幸恵,山田 哲,渡辺 智治,松下 剛,黒住 昌弘,黒住 明子,平瀬 雄一,川上 聡,金子 智喜,藤永 康成,百瀬 充浩,角谷 眞澄 消化器画像 9巻 2号 pp. 133-142 (2007年3月15日) 医学書院
  • 第9位 膵腺房細胞癌の2例 木村 康利,平田 公一,信岡 隆幸,木村 仁,柏木 清輝,今村 将史,岡 俊州,篠村 恭久,小井戸 一光,晴山 雅人 消化器画像 9巻 1号 pp. 57-65 (2007年1月15日) 医学書院
  • 第10位 肝サルコイドーシスの1例 野々垣 浩二,熊田 卓,桐山 勢生,曽根 康博,谷川 誠,久永 康宏,豊田 秀徳,葛谷 貞二,清水 潤一,山内 貴裕,川瀬 直登 消化器画像 7巻 2号 pp. 251-254 (2005年3月15日) 医学書院