消化器画像 1巻1号 (1999年1月)

特集 肝画像の最先端

序/肝画像の最先端 工藤 正俊
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 肝画像診断の最近の進歩は著しい.わが国の疾病構造上,現時点における肝画像診断の主要な目的は肝細胞癌を中心とした肝腫瘍の診断と治療にあると言っても過言ではない.

 現在,日常診療では,極めて鮮明な超音皮Bモード画像により容易に肝の微小結節性病変が拾い上げられるようになってきた(存在診断).このような病変に対しては,肝癌と他の結節との鑑別が次のステップとなる(確定診断・鑑別診断)(図1).つい最近までの画像診断では肝癌の前癌病変・初期病変の診断はほとんど不能であり,大変混乱した時期があった.このような問題も血管造影と断層画像を組み合わせた手技,すなわち門脈CT,動脈CT,CO2USangiographyといった極めて精緻な血流画像が開発され臨床に導人されるに至り,多くの結節性病変の血流動態が動脈・門脈血流の両面から明らかにされるようになり,しだいに整理・解決がなされてきた.このような血流画像の急速な進歩は,神代・広橋両先生をはじめとする多くの肝臓病理学者の詳細な検討による肝細胞癌の前癌病変,初期病変から進行肝癌に至る病理形態像の解明と,ちょうど,時を同じくしていた.このことは偶然でもあり大きな幸運でもあったと言える.すなわち,肝細胞癌の前癌病変・初期病変と血流画像とを丹念に比較検討することが可能となったからである.今では肝細胞癌の発生・進展の病理学的脱分化の過程を,血流画像で手に取るように理解することが可能となっている.このことは一時代前から考えると驚異的な出来事である.まさにこの分野,すなわち前癌病変から早期を経て進行肝癌に至る病理形態・血流画像の変遷の相互関係の詳細な理解は日本が世界に誇りうる大きな成果の1つと思われる.

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 小肝細胞癌(以下HCC)結節内の血流の検出率をパワーおよびカラードプラとCTアンギオで比較した.対象は3cm以下のHCC 36症例47結節である.結節内の血流シグナルはパワードプラUSで47結節中37結節(78.7%)に認められた.結節内の血流の方向と波形の解析からその血流は,Type 1:流入する定常性血流を認める結節(5結節),Type 2:流入する定常性血流と流人する拍動性血流を認める結節(2結節),Type 3:流入する拍動性血流と流出する定常性血流を認める結節(6結節),Type 4:流人する拍動性血流を認める結節(24結節)の4つに分類された.これらの所見はCTアンギオより得られた血流動態と極めてよく一致した.パワーおよびカラードプラUSは無侵襲的に繰り返して行えるために,今後結節の血流動態の評価に有力な手段となることが期待される.

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 三次元画像やFFT分析を含めた近年の進歩した超音波ドプラ装置によって描出される肝腫瘍,特に肝細胞癌の腫瘍血管について概説する.早期肝細胞癌は門脈血流が流入するため,定常性を示す血流シグナルが流人し,腫瘤から流出する血流シグナルは肝静脈へと連続する.進行型肝細胞癌は動脈性vascularityが上昇するため,拍動性を示す血流シグナルが流人する.腫瘍内部では複雑な立体走行を呈し,波形分析により拍動性指数(pulsatility index)の高い拍動波が検出されることがある.進行型肝細胞癌の流出血管は門脈であるため,腫瘤内部に描出される流出血流シグナルは流入する動脈に伴走して逆方向に流れる定常性血流を示すことがある.

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 肝細胞癌(以下HCC)のリピオドール併用肝動脈塞栓術(以下Lp-TAE)後の効果判定と局所再発診断に対するカラードプラ・パワー表示法(以下PDS)の有用性を評価した.PDSによる効果不十分と再発診断基準を,腫瘍内血流の残存または新たな出現とすると,PDSによりLp-TAE前に腫瘍内血流が捉えられたHCCのPDSによる効果不十分と再発診断率は,それぞれsensitivityが100%と95.5%と高率であり,PDSがLp-TAE後の効果判定と局所再発診断に有用であることが確認された.効果良好と再発なしの診断率も高率であったが,限界症例も含まれており,他の診断法との併用診断が必要であることも示唆された.

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 造影超音波によって,超音波診断の新しいステージが始まろうとしている.消化器画像診断においては.超音波検査はCTやMRIと技術を競いながら進歩してきた.CTやMRIが,血流を造影する造影剤や,Kupffer細胞や肝細胞を選択的に造影する造影剤など造影によるイメージングが主体で進んできたのに対し,超音波検査は言わば単純超音波のみでCTやMRIと覇を競ってきた.今後は静脈投与可能な造影剤が多く出てきて,消化器画像診断のdecision treeが大きく変わってくる.本稿では,造影超音波の現状と将来について概説する.

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 Single-level dynamic thin-section CTAを用いると肝腫瘍の血行動熊をin vivoで観察可能である.本稿では同法によって観察した,多血性肝細胞癌,境界病変内の多血性肝細胞癌巣,転移性肝癌,多血性偽病変の血行動態を記述し,その結果,明らかとなった知見を記載した.

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 全肝ダイナミックMRIを含む息止め検査のみによる高速MRI検査と腹部超音波検査(以下US)との肝癌診断に関する比較を行った.肝硬変を中心とした慢性肝疾患合併症例における肝癌の検出率はMRI 88%,US 87%とほぼ互角であり,腫瘍径別の検出率にも差がみられなかったが,検出不能症例は相互に異なっており,肝癌の診断に関して,MRIとUSには相補性がみられた.肝血管腫の診断に関してはUSよりもMRIが優れていた.全肝ダイナミックMRIは安全性が高く,快適性に優れ,15分程度の短時間で施行可能であり,慢性肝疾患症例の肝癌スクリーニング検査としてUSと併用すべきと思われた.

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 近年,高速MRIの進歩により,1回の呼吸停止下に全肝のダイナミックスキャンが可能となった.筆者らは,肝腫瘤性病変における経動脈性門脈造影下MRI(以下MRAP)の有用性を,経動脈性門脈下CT (以下CTAP)と比較検討した.肝硬変実質は,MRAPでCTAPよりも均一に造影された.肝細胞癌と肝嚢胞の腫瘤検出能は,MRAPがCTAPに比べ有意に高かった.腫瘤のvascularityの判定も,multi-phase MRAPがdual-phaseCTAPよりも優れていた.

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 パワードプラエコー(以下PDI)が肝細胞癌の治療効果判定に有用であった1症例を報告する.患者は62歳,男性.C型肝硬変に合併したS3領域の18mmの肝細胞癌で,経皮的エタノール注入療法(以下PEI)を施行した.治療前のダイナミックCTではearly en-hancementを認めたが,治療後には造影効果を認めず,CT上は治療効果良好と判断した.しかし,治療前のPDIで確認した血流信号が治療後にも一部に残存していたため,この部を狙撃生検したところ腫瘍細胞の残存を認めた.同部にPEIを追加して血流信号の消失を確認し,治療を終了した.治療後22か月経過しているが,肝細胞癌の再発を認めていない.

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 肝外突出型の肝細胞癌で固有肝動脈に造影剤を注人し,右下横隔膜動脈に造影剤を流人しなかったにもかかわらず,右下横隔膜静脈へ腫瘍血流が導出された症例を報告した.このような腫瘍の血行動態は従来のCTAでも可能であったかもしれないが,single-leveldynamic computed tomography during hepatic arteriography(SLDCTA)によって詳細に観察し得た.

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 患者74歳,女性.

 現病歴 他院で総胆管拡張を指摘され,精査のため当院に入院となった.自覚症状もなく,黄疸もなかった.画像診断所見は以下のごとくであった.

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 従来,肝血管肉腫の特徴的画像所見として挙げられているものはほとんど海綿状構造を捉えたものである.しかし,ここに報告する症例は低分化型の充実性血管肉腫で,各種画像上で乏血性腫瘍の所見を呈した.すなわち,CTでは境界明瞭な低吸収域の結節像として,MRI検査ではT1強調画像で低信号,T2強調画像で部分的にわずかに高信号を伴う等信号の結節像として描出され,また造影CT,造影MRIではともに一部が隔壁様に軽度濃染されるのみであった.血管造影検査では,左肝動脈A2領域に動脈相早期に伸展圧排された腫瘍血管ときわめて淡い濃染を呈した.本症例のような充実型発育を呈する肝血管肉腫の画像所見についての報告は,今回筆者らが調べ得た限りは存在しなかった.

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 患者は68歳,男性.検診の超音波検査で膵頭部に10mmの嚢胞性病変を認め,経過観察を行ったところ,病巣の増大とエコーレベルの上昇を認めた.発見時から16か月後には,最大径17mmの充実性病変として描出された.EUS,IDUS,血管造影所見から非機能性の内分泌腫瘍を疑い,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.切除標本の割面像は19mm大の白色腫瘤であり,組織学的には,著明なリンパ濾胞を伴う線維化で癌細胞は認めなかった.

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 患者は77歳,女性.1996年健診の腹部超音波検査で膵体部に径10mm大の低エコー腫瘤を指摘され,1997年に20mm大へと増大したため当院へ紹介入院となった.病変は超音波上膵体部に存在し,境界明瞭な低エコーを示し,内部は多数の小嚢胞の集簇によって構成されていた.超音波内視鏡検査でも5mmを最大とする多数の小嚢胞の集簇により構成される病変であり,膵漿液性嚢胞腺腫を強く疑った.しかしERCPで腫瘍に一致した15mmにわたる主膵管の狭窄像と尾部主膵管の拡張像が確認され,小膵癌の可能性を拭い去れずに手術を施行した.組織学的検索により腫瘍は漿液性嚢胞腺腫であることが確認され,主膵管が嚢胞によって圧排されて狭小化し,尾側膵管が拡張したものと考えられた.

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 患者は68歳,男性.皮膚掻痒感,黄染を主訴に当センターを受診した.黄疸,肝機能異常があり,精査目的に入院となった.超音波,腹部CT検査では,明らかな黄疸の原因は指摘しえず,またERCPで下部胆管に比較的平滑な狭窄像を認めたが膵管像に変化を認めず,下部胆管癌あるいは良性胆管狭窄が疑われた.超音波内視鏡では膵頭部に約1cm大の低エコー領域を認め,また胆管内からの管腔内超音波検査により胆管周囲の膵頭部の十二指腸側に低エコー領域を認め,胆管壁に連続している所見が描出され,膵癌の胆管浸潤と診断した.さらにIDUS-angiographyによるvascularityの評価で主要癌巣と周囲の膵炎巣の範囲の診断が可能であった.

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消化器画像の現状

 望月(司会)本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます.消化器画像,特にめざましい発展を遂げている肝胆膵の画像診断と治療につきましてそれぞれご専門の分野から,現状と将来について忌憚のないお話をお聞きしたいと思います.まず最初に,画像診断の現状について有山先生から口火を切って下さい.

連載 初心者のための超音波診断―体外式US・1【新連載】

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肝の超音波解剖

1.肝の位置と隣接臓器

 ■肝の位置と超音波による描出(図1)肝臓の右葉の大部分は右肋骨に覆われ,頭側は横隔膜に接したまま胸腔側に嵌入しておりドームとも呼ばれ,肺に覆われた部分を成す.左葉の大部分は心窩部剣状突起下で骨から解放される部分であるが,さらに左肋骨弓に覆われた部分にまで伸びる場合もある.

  肋骨と肺は超音波ビームを通さないため,肝右葉は右肋間,右肋弓下から,また肝左葉は心窩部からそれぞれさまざまな角度で観察することになる.特に右葉ドームは右肋弓下からの覗き上げが必要となる.また左葉は心窩部で何の邪魔もなく観察できる.なお,いずれの部位においても呼吸相が断層に影響を与える.

講座 MRIの基礎から臨床応用・1

MRIの原理・1 百島 祐貴
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はじめに

  消化器領域で用いられる画像診断は,X線を用いる各種造影検査やX線CT,および超音波を用いる超音波断層法が主体であったが,MRIはこのいずれとも異なる原理で画像を得る検査法である.そこで,ここではMRIの原理を概説する.

技術講座 胆道造影―私はこうする

ERCP 池田 靖洋
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 ルーチンの上部消化管内視鏡検査は直視鏡で行われるため,側視鏡に不慣れな検査医が多い.まず側視鏡の操作に慣れることが前提となる.選択的挿管に際しては,Vater乳頭部の解剖学的特徴を十分理解しておくことが肝要である.また,ERCPはX線診断学であることを認識し,鮮明なX線像を得る努力をすべきである.一方,頻度は少ないが,重篤な合併症が起こりうることを常に念頭に置き,合併症,特に急性膵炎を防ぐためのポイントを理解する.

研究会紹介

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 日本消化器画像診断研究会は,1983年11月に第1回目が行われました.画像診断がCTや超音波の進歩で大きく変わろうとしていた言わば転換期とも言うべき時期で,竹原靖明先生,有山襄先生,望月福治先生,高田忠敬先生などが中心となられ,症例検討形式で始められました.第10回目までは会場を主に東京に定め行われてきましたが,第11回目から当番世話人を決め,新潟(渡辺秀伸),沖縄(武藤良弘),札幌(村島義男)と文字どおり全国的な規模で開かれるようになりました.筆者も発足当時から参加させていただきましたが,1991年から世話人に加えていただきました.また,第20回の記念大会では三重県の鳥羽においてわれわれの教室の伊藤圓前教授がお世話させていただきましたことが感慨深く思い出されます.

  さて,この研究会の特徴は,学会では味わえない妥協のない討論,その道のオーソリティーの先生方からの適切な意見やアドバイス,画像診断における新しいモダリティーの吸収,そして何よりも1例1例の症例の大切さを知ることにあります.幸いなことに,病理の先生方(特に渡辺,須田,神代の諸先生)のこ協力もあって,最終の病理診断がしっかりしていることも本研究会の大きな魅力ではないかと思います.

学会印象記

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 イタリアのベネチアで開催されたCIRSE’98に参加した.われわれの教室からも2題の演題を発表した[(B-RTOの長期follow-upとBEAT (balloon occludedethanol ablation therapy for hepatic tumors)].

  会場はベネチアのリゾート地で映画“ベニスに死す”の舞台にもなったリド島のPlaza del Cinemaで開催された.学会の最大のトピックスは大動脈のステントグラフトとMR guided IVRであった.

基本情報

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消化器画像
1巻1号 (1999年1月)
電子版ISSN:1882-1227 印刷版ISSN:1344-3399 医学書院

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