講座
知っていると役に立つ超音波のサインと用語
一二三 倫郎
,
山根 隆明
,
森 秀明
pp.670-671
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427900340
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Debris Echo(デブリエコー)
デブリエコーとは液体の中に現れる膿汁,胆砂,沈殿物などに由来するエコーのことであるが,腹部超音波検査では胆嚢疾患の際に最もよく認められる.正常の状態では胆嚢内腔は,サイドローブや多重反射などのアーチファクトを除けば無エコー(anechoic)に描出される.胆嚢に炎症や腫瘍などの病的状態が生じると膿汁,胆砂,フィブリン塊,血塊,壊死物質などに由来する不均一高エコーが出現しdebrisechoまたはsludge echoと呼ばれる.Debris echoは音響陰影を伴うことはほとんどなく,細かい高エコースポットが胆嚢内腔に充満・浮遊するタイプ(図1a)と腫瘤状に塊を形成するタイプ(腫瘤状胆泥,図1b)がある.腫瘤状胆泥は胆嚢内でゲル状に凝集した胆泥が球状・分葉状を呈し,胆嚢内腔に隆起像を呈するために腫瘍と間違えやすいが,探触子で体表から振動を加えたり体位を変換することで形状が変化したり移動することなどで鑑別できる.Debris echo)は急性胆嚢炎で最もよく出現し,臨床経過に一致して経時的に変化する.このほか,慢性胆嚢炎,胆石症,胆嚢癌,閉塞性黄疸(下部胆道閉塞),長期間の絶食(中心静脈栄養時など)においても観察される.Debris echoと鑑別を要するアーチファクトとして多重反射やサイドローブがある.アーチファクトは探触子の傾きや走査部位によって変化するのに対し,debris echoは深呼吸,体位変換などによって移動したり形状が変化したりする点で鑑別可能である.
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