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肝画像診断の最近の進歩は著しい.わが国の疾病構造上,現時点における肝画像診断の主要な目的は肝細胞癌を中心とした肝腫瘍の診断と治療にあると言っても過言ではない.
現在,日常診療では,極めて鮮明な超音皮Bモード画像により容易に肝の微小結節性病変が拾い上げられるようになってきた(存在診断).このような病変に対しては,肝癌と他の結節との鑑別が次のステップとなる(確定診断・鑑別診断)(図1).つい最近までの画像診断では肝癌の前癌病変・初期病変の診断はほとんど不能であり,大変混乱した時期があった.このような問題も血管造影と断層画像を組み合わせた手技,すなわち門脈CT,動脈CT,CO2USangiographyといった極めて精緻な血流画像が開発され臨床に導人されるに至り,多くの結節性病変の血流動態が動脈・門脈血流の両面から明らかにされるようになり,しだいに整理・解決がなされてきた.このような血流画像の急速な進歩は,神代・広橋両先生をはじめとする多くの肝臓病理学者の詳細な検討による肝細胞癌の前癌病変,初期病変から進行肝癌に至る病理形態像の解明と,ちょうど,時を同じくしていた.このことは偶然でもあり大きな幸運でもあったと言える.すなわち,肝細胞癌の前癌病変・初期病変と血流画像とを丹念に比較検討することが可能となったからである.今では肝細胞癌の発生・進展の病理学的脱分化の過程を,血流画像で手に取るように理解することが可能となっている.このことは一時代前から考えると驚異的な出来事である.まさにこの分野,すなわち前癌病変から早期を経て進行肝癌に至る病理形態・血流画像の変遷の相互関係の詳細な理解は日本が世界に誇りうる大きな成果の1つと思われる.
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