精神看護 19巻5号 (2016年9月)

特集 オープンダイアローグの理論的主導者 ヤーコ・セイックラ教授とトム・アーンキル教授の手に汗握る 3日間ワークショップ

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2016年5月13−15日の3日間、東京・渋谷でオープンダイアローグのワークショップが開かれた。講師は、オープンダイアローグの開発にかかわり、現在もその理論的主導者として活躍するヤーコ・セイックラ教授と、彼の長年の盟友であるトム・アーンキル教授の2人。どちらも初の来日であり、その講演内容には大きな期待が寄せられた。ワークショップ3日目には、2家族のオープンダイアローグ・セッションが公開形式で行われた。

本誌では、この記念すべきワークショップに参加した10人の方に、それぞれの立場から感想を寄せていただいた。どの場面に着目したのか、ある情景をどう解釈し、何を思ったのか—声のトーンはさまざまだが、この「ポリフォニー」を読む者を幸せにしてくれるのは確かである。

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1 オープン・ザ・ワークショップ!

 友人の斎藤環(敬称略)が、あんまり良い良いと言うものだから、遅まきながら勉強を始めたオープンダイアローグ。5月には本拠地フィンランドからヤーコ・セイックラ教授とトム・アーンキル教授の両巨頭を招聘してワークショップが開かれると聞き、めったに休診にすることのない土曜日をあらかじめ休みにし、大枚5万円を指定の口座に振り込んで、早々に参加の申し込みを済ませた。

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 ワークショップ2日目、アーンキル、セイックラ両氏の講義を受けながら、私はどうしても発言しないではいられませんでした。

 たしかに、素晴らしい理論だとは思いました。しかし……。日本の精神科救急病院の現状はこうです。患者が興奮した状態で連れてこられたら、まず医師が診断し入院の判断を下す。鎮静、隔離、拘束、場合によっては電気けいれん療法が施される。もちろん家族と対話などできず医師が「落ち着いた」と判断して初めて家族は面会できる。そして医療関係者だけでミーティングを行ってから、患者さんに治療方針や退院について説明する—。

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 フィンランドで「オープンダイアローグ」と言っても首をかしげられ、「???」となることがほとんど。この言葉は、まだまだ広く社会一般にまでは浸透していないのだ。

 その事実があるにせよ、「オープンダイアローグ」と、とりたてて言う必要性がなく、実践で応用されている場面もあるという。実際、精神医療の現場で働く人たちの話を聞いてみると、オープンダイアローグで有名なケロプダス病院以外のところでも、実は個々人でこの方法を取り入れている人たちがいるのだ。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・111

連載 [インタビュー]向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?・4

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やってくる波を乗りこなす

—向谷地さんがワークショップに参加してもっとも印象に残ったことは何でしょうか?

向谷地 セイックラさんが、対話のことを、「あまりにもシンプルなので、逆に認識できないというパラドックスがある」って言ったんですけど、本当にその通りで、非常に素朴で当たり前すぎて、飛び道具なんてものは全く使ってない。自然に時間が流れていく感じがして、それだけに何か、深いものが伝わってきましたね。「なんとかアプローチ」とか「なんとか療法」みたいなものはみんな、そのメソッドの個性とか特徴が際立っていますからね。

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明暗を分けた面接

 東京近郊のとある金融機関。地域では抜群の安定企業であり、障害者雇用にも積極的だ。この日私は障害者枠採用に向けて、シャローム所沢の利用者2人の面接に同行し、人事担当者2人と向き合った。1人ずつ40分程度の面接だ。精神障害者手帳2級を持つ2人はともに20代男性でパソコンスキルも高く、簿記試験にも合格し、事務作業遂行能力も問題なし。協調的コミュニケーション能力も兼ね備えている。2人同時に採用してもらいたい私としては、傍らに座り、面接官と当事者の会話に巧みに割り込んで、それぞれの強みを強調する。

 1人の強みは、英語などの学習能力の高さである。地方から上京し一人暮らしで東京の大学を卒業して有名な営業会社に入社したが、この企業があまりにも「体育会系」環境で、その文化に合わなかったことで、症状が悪化してしまった。事業所でリセットしたことも付け加えた。もう1人の強みは、病気と向き合い支え合っている家族関係の良さである。自宅から大学に通学していたが、症状悪化のため中退。正社員に就いたことがなく、家業の外装工事の仕事を手伝いながら過ごしてきた。この一家は本人を中心にプロ野球阪神のファンであり、テレビで阪神のナイトゲームを見ながら、家族団らんのひと時を持つという。

連載 いいのかなと不安に思いながらやってしまっている

身体のアセスメントと手技を徹底検証・4

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看護師さんからのQuestion 1

急な発熱が見られました。

熱以外にみるべき観察ポイントを教えてください。

ドクター杉田からのAnswer 1

患者さんの訴えを聞き、バイタルサインを含めたフィジカルアセスメントを行いましょう。

特に呼吸数は最も重要な観察ポイントです。

連載 愛か不安か・7

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ヒマにも二種類ありまして

 ヒマな状態に耐えられないのである。じっとしていられないし、とてもじゃないが精神を白紙ないしは透明にできない。他人から見ればヒマそうに映る状態であっても、心は決して「何もしていない」モードにはなっていない。ポジトロンCT(PET)でも使えば一目瞭然のはずだ。

 そもそも世間の人たちはヒマとかリラックスの状態において精神をどのように休止させているのだろうか。いや、「どのように」と発すること自体が、もはやヒマやリラックスとは無縁の発想だろう。人はどのように睡眠へと移行するのかなどとベッドの中で考え出したら、たちまち眠れなくなってしまうようなものか。

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若き日の吉本隆明との出会いと変心

 半世紀近く前の話になるが、東京大学に入学してまもなく、教養学部で学生ストライキが始まったおかげで、私は苦痛きわまりなかった授業から解放され、これまで手に取ったこともないような本にいろいろと出合うようになった。それまで遠い世界のことだと思っていた哲学や文学についての熱のこもった議論に、一気に目を開かされた思いがしたのを覚えている。理論物理学者のシュレディンガーが、晩年、分子生物学へと転じ、人間の意識の解明に取り組んでいたことを知って驚いたのもその頃だった。私は物理や化学を目指していて、生物学を一段下に見ていたのだ。なんたる無知だったことか。

 そんな時、クラスの男の子がボロボロになった小さな本を貸してくれた。吉本隆明(当時は皆「よしもとりゅうめい」と呼んでいた)の『初期ノート』だった。当時、詩人であり、思想家でもあった吉本隆明は、初めて社会に目覚め、背伸びを始めた学生たちの間でちょっとしたカリスマになっていた。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・14

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男らしさといえば、かつては「寡黙で、勇敢で、豪快で、忍耐力があって堂々としていて頼りになる」といった“強い”イメージの付随する言葉でした。しかしここ数年、メディアで「男の生きづらさ」というキーワードをよく見かけます。

 例えば2014年7月にはNHK『クローズアップ現代』が「男はつらいよ2014 1000人“心の声”」というテーマで番組を放送し、同年9月には、雑誌『AERA』(朝日新聞出版)が「男がつらい!」という特集を組んで話題になりました。これを皮切りに、例えば「男が男であるためにかかえてしまう困難や葛藤」を研究する「男性学」という学問が注目されたり、また書籍や映画、演劇といったカルチャーの世界でも、男性性をテーマにした作品が少しずつ増えている印象です。今という時代は、旧来的な男らしさに更新が求められているときなのかもしれません。

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本書の背景

 本書は、英国心理学会・臨床心理学部門が監修し2014年に刊行された報告書の全訳である。その原題と副題をそのまま訳すと以下のような長いものになる。

 「精神病と統合失調症を理解する—なぜ人々は、時に声を聞き、他の者から見れば奇妙なことを信じ、現実感を失ったようにみえるのか、そして何が支援となりうるのだろうか」

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 『リカバリー・退院支援・地域連携のためのストレングスモデル』の出版を記念して、医学書院は第41回日本精神科看護学術集会にてランチョンセミナーを開催した(6月11日@盛岡)。演者は萱間真美氏(聖路加国際大学教授・精神看護学)。

 今回は「ストレングスモデルで話を聞かれる、聞く」体験をし合う演習形式。会場は、好奇心いっぱいのまなざしで2階席まで満席になった。

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
19巻5号 (2016年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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