連載 就労移行って何だ?・5
家族を「活かす」、そして「作る」—支援者は心とつながり、社会へと結ぼう
引地 達也
1,2
1就労移行支援シャロームネットワーク
2ケアメディア推進プロジェクト
pp.465-467
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200270
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明暗を分けた面接
東京近郊のとある金融機関。地域では抜群の安定企業であり、障害者雇用にも積極的だ。この日私は障害者枠採用に向けて、シャローム所沢の利用者2人の面接に同行し、人事担当者2人と向き合った。1人ずつ40分程度の面接だ。精神障害者手帳2級を持つ2人はともに20代男性でパソコンスキルも高く、簿記試験にも合格し、事務作業遂行能力も問題なし。協調的コミュニケーション能力も兼ね備えている。2人同時に採用してもらいたい私としては、傍らに座り、面接官と当事者の会話に巧みに割り込んで、それぞれの強みを強調する。
1人の強みは、英語などの学習能力の高さである。地方から上京し一人暮らしで東京の大学を卒業して有名な営業会社に入社したが、この企業があまりにも「体育会系」環境で、その文化に合わなかったことで、症状が悪化してしまった。事業所でリセットしたことも付け加えた。もう1人の強みは、病気と向き合い支え合っている家族関係の良さである。自宅から大学に通学していたが、症状悪化のため中退。正社員に就いたことがなく、家業の外装工事の仕事を手伝いながら過ごしてきた。この一家は本人を中心にプロ野球阪神のファンであり、テレビで阪神のナイトゲームを見ながら、家族団らんのひと時を持つという。
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