精神看護 16巻3号 (2013年5月)

特集1 使える!理論とモデル

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当事者主体/多職種協働の時代に、精神科看護師が知っておきたいモデルとその実践事例を紹介します。

また、教科書で学ぶ理論やモデルを、実践に結びつけ、「使いこなす」ためのコツも書いていただきました。

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「理論」は3D眼鏡のようなもの

 あなたが毎日臨床で直面する現象は、あなたにだけ起こる特別なものなのだろうか。それとも、ある条件がそろえば誰もが出会う可能性があり、それが起こる前に予測することが可能なのだろうか。

 「理論」というと、難しい言葉に聞こえるが、理論は、一見つながりも脈絡もなく起こっているようにみえる現象を「ある原理・原則によって統一的に、だれにでも納得できるように説明する」(『漢語林』大修館書店)ことであり、道具のようなものだ。3D映画を見るときに眼鏡をかけるように、その道具を持っていない人には見えないつながりや現象が起こる理由が、見えるようになる。そしてさらに、どんなことをすれば何が起こるのか、ある程度予測することができる「実践の指針となりうるもの」(同書)でもある。

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行き場のない当事者をどう支えるか

 現在日本では、うつ病や双極性障害、パニック障害や強迫性障害など、うつ病辺縁領域の診断を受けて治療中の人が増加しています。しかも、これらの病気は長引く(遷延化)傾向にあります。

 このような人々の大半が日常生活を送る場は病院内ではなく、住居のあるそれぞれの地域であり、治療中も家族と同居していたり単身生活であったりと、さまざまな生活スタイルです。しかし、形としては“普通の生活”を送っていてもなかなか社会生活に溶け込めず、また何気ない周囲の人々からの叱咤激励などの刺激を受け、ストレスフルとなり、病状が悪化することも多いのが現状です。

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 ストレングスモデルとは、リカバリーという精神障害者の生活や人生の再建と創造を目的に開発された支援技法です。「ストレングス」(強み)という表現でもわかるように、精神障害者のとらえ方や地域資源の活用や開発などに、彼らの強みを生かそうという“肯定的で新しい視点”を提供しています。精神障害者の地域生活を支援するどの場面においても、どの職種においても有益な技法です。

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タイダルモデルが提唱すること

 タイダルモデルは、東洋の哲学にも造詣が深いフィリップ・バーカーが、①ヒルデガード・ペプロウが発展させた対人関係の考え方、②バーカー自身、そしてジャクソン、スティーヴンソンが「看護の必要性についての研究」から発展させた精神科・精神保健看護の理論、③対人関係や教育的介入によるエンパワメントの理論の3つを、理論的な枠組みとして発展させたものである。バーカーは、患者の経験から学ぶことを重視し、次のように述べている。

 「私は月に行ったことはありませんが、30年以上前にニール・アームストロング船長が人類にとって最初の大きな一歩を踏み出したのを、テレビで見ました……月まで宇宙船で旅行し、月の上を歩くことがどんなものであるか、もし私が知りたければ飛行士に直接尋ねる必要があります……ニール・アームストロングは、月上での歩行について私に教えることがたくさんあるでしょう……このたとえは、精神疾患にもあてはまります。さまざまな精神障害に襲われることが、どんなことであるのか、私たちは患者から多くを学ぶことができます。患者のあとについて狂気の世界に入ることがないとしても、この疎外的な体験について多くを学ぶことができます。ケアをおこなっている人たちの経験について学び、よりよく理解すれば、彼らは異質でなくなります」

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 ヴァージニア・ヘンダーソンが活躍した時代、アメリカは第一次世界大戦(1917-19)、その後第二次世界大戦(1939-45)が勃発し、まさに激動のさなかでした。そんな時代に彼女の看護に対する考え方に影響を与えたもの、また情熱とは何かを遡行してみようと思います。

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看護が必要とされる状況とは

 「セルフケア」という観点から看護理論を開発したのは、D. E.オレムである。オレムは1914年に米国メリーランド州ボルチモアで生まれ、ワシントンD. C.のプロヴィデンス病院付属看護学校で看護を学び、看護師資格を得た。その後、1939年に看護学士号、1946年に看護教育修士号を取得した。

 オレムの看護理論は、手術室、小児、内科・外科病棟、救急室などでの豊かな臨床経験や、合衆国保健教育福祉省教育部局での実務看護師教育カリキュラム開発の経験の中で、看護の中心的問題とは何か、看護師には何ができるのかを常に深く考え続けた結果、生まれたものである。

特集2 3回シリーズ 看護のための性格論―病名「以前」の手がかりを、もっと豊かに

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 冬の夜空を見上げると、星々の輝きがある。星々は線で結ばれて星座になる。あれがオリオン座、あれがカシオペア座。教えられて初めて見えた図形や絵柄は、一度知ってしまうと私たちの頭の中に固定される。夜空を見上げるたびに、1つひとつの星を見るより先に、見慣れた星座図形が目に飛び込んでくる。

 人の性格というものもそれに似ている。初めは手探りである。その人の発言や振るまいを1つひとつ見定めているうちに、それらをつなぐ線が見えてくる。線は次第に図形となって、その人特有の言動のパターン、つまりは性格として周囲に認知されるようになる。一度認知された性格は、周囲の人々の心の中で固定化されて生き続ける。性格を把握することはその人とつき合ったり交渉したりするうえで役に立つが、ときにはそれが固定観念となって、その人を見る目を曇らせてしまうこともある。

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 「目に見えないものが手に取るようにわかるようになる」──そのくらい簡単に抗菌薬についての説明をするというのが、今回のミッション(使命)です。

 ウイルスやかび、細菌など、目に見えない相手にどう立ち向かうか? 抗菌薬を処方する医師は、何を考えているのか? 看護師は何を注意すればよいのか? そういった疑問に対し、できるだけポイントを絞った内容でお答えしたいと思います。できるだけ平易に、場合によっては専門家であればためらってしまうような簡潔な表現でまとめてみました(例外事項や“細かく言うと……”などの部分で、大幅に簡略化している場合がありますが、ご了承ください)。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・91

連載 DNAは、いつ統合失調症の秘密を語るのか・2

大規模研究の罠 糸川 昌成
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統合失調症の遺伝子研究はなぜ熱を帯びるのか

 ここに、イェール大のMatthew W. Stateという学者の調べた、遺伝子研究の件数のデータがある❶*1

 統合失調症(赤)の遺伝子研究の論文数は、自閉症(グレー)やトゥレット症候群(黒)よりはるかに多い。しかも、1985年当時と比べて2008年まで右肩上がりに増えている。なぜ、これほどまでに統合失調症の遺伝子は研究されるのだろうか。その答えは、λs(ラムダ・エス)と呼ばれる、聞きなれない遺伝統計用語を理解することで得られるかもしれない。

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「歴史もの」がプレゼンスを示した2012年、味わい深い事典が刊行

 2012年の日本の医学界を振り返ると、山中伸弥教授のノーベル賞受賞という最先端の研究と並んで、「歴史もの」が確かなプレゼンスを示すようになった1年であった。「医学史」の研究はもちろん以前からおこなわれており、優れた書物も出版されていたが、過去からの蓄積と新刊された書物が相まって、ある〈まとまり〉のようなものを示すようになった。医学と医療の現在性、未来志向性と並んで、それが持つ長い歴史が確かな存在感を持つようになったのである。

 医学書院から昨年発行された書籍をみても、金川英雄が翻訳し解説を付した呉秀三・樫田五郎『精神病者私宅監置の実況』はベストセラー並みの扱いであるが、これは今から100年ほど前に発行された論文を現代の医療関係者にも無理なく読めるように現代語訳したものである。木村哲也『駐在保健婦の時代 1942-1997』は、激動の戦中から戦後・高度成長期に形成された日本人の健康と日常を、高知県の保健婦の現代史を通じて生き生きと復活させた著作である。翻訳ものでは、ウィリアム・バイナムとヘレン・バイナムの『Medicine 医学を変えた70の発見』は、私も共訳者の1人であるが、医学史の専門家だけでなく多くの人々に訴えるインパクトがある図版を300点以上も掲載したヴィジュアル医学史の決定版である。

書論 トラウマ

トラウマから学べること 寳田 穂
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「トラウマから学べることを言語化すると、こんなに単純なことなのかと思うこともあります。優しさや弱さ、柔軟性や寛容性、多様性を重視すること。人がただ生きてあることに価値があるということ。誰かのそばにたたずみ続けることに意義があるということ……。言葉にすると、あまりに当たり前で、言い古されたことのようで、薄っぺらく聞こえてしまいます」(『トラウマ』253ページ:以下ページ数は同書より)

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二〇一二年九月に発行した書籍『現代語訳 呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況』。これは日本の精神医療史の上で隔離、拘束について明確に記した最初の書物であり、ここから近代精神医療が始まったといっても過言ではありません。

この本のもとになった調査は、呉の指揮のもと、当時の東京帝国大学医科大学精神病学教室を挙げておこなわれたものでした。今回は、調査に赴いた一人である氏家信が、調査から三十年後に記した『精神病側面史(十七)』(原文は、漢字ひらがな文)を、解説付きで紹介したいと思います。

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「リストカット当事者研究」を読んで

島田早紀 (医療系大学生)

 初めまして。医療系大学に通っているものです。大学内のライブラリーでこの雑誌を見つけ、「リストカットの当事者研究」(本誌2012年9月号~2013年3月号まで掲載)を読みました。私もリストカッターで、背中以外はほとんど切ったことがあります。腕や足は全体に傷があるため、夏でも長袖、レギンスで過ごしています。私が初めてリストカットをしたのは、13~14歳の頃ですが、そのときのことはあまり覚えていません。

 自分で言うのもなんですが、私はかなり重度のリストカッターだと思っているし、閉鎖病棟に3か月入院していたときも、その当時の私より傷が多かったり深かったりする子は1人しかおらず、今は当時よりも傷が増えています。しかし、この連載を見て、すごい人もいるんだなぁと知りました。同時に、「私は傷が多くても、腕まくりをしたときに通りすがりの人からキモいと言われるだけなのに、雑誌に載るなんてうらやましいな」と思いました。

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佐々木社長、この笑顔!

 「第9回精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)」の表彰式が3月8日におこなわれ、佐々木実氏(社会福祉法人浦河べてるの家理事長/有限会社福祉ショップべてるの家代表取締役社長)が「当事者部門」で受賞し、記念のレプリカと副賞100万円が贈られた。

 審査にあたった委員からは、「今さら世界のべてるに差し上げるのはどうかという意見もあったが、べてるを裏から支え地道に頑張ってきた佐々木さんにぜひもらってほしい」とのコメントがあった。また「賞金の100万円は、べてるに使われないように」とナイスなアドバイスも。

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精神看護
16巻3号 (2013年5月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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