精神看護 16巻2号 (2013年3月発行)

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特集1　拒否する人には「快」より始めよ

扉 16巻2号 , 2013年3月 , pp.13

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「治療を受けてくれない」「ケアを拒否する」……

看護師とのコミュニケーションさえ拒む患者さんには、いったい何から始めたらいいのでしょうか。

この特集では、心身で感じる「快さ」が回復の糸口となった取り組みを紹介します。

口腔ケア【うるおい】井東　彩華 , 宇山　裕子 16巻2号 , 2013年3月 , pp.14-17

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思いのズレがケアを難しくしていた

　看護師としては、「舌苔をきれいにしたい」「口の乾燥を防ぎたい」「肺炎を予防したい」……そのためには口腔ケアを徹底したい！　と考えるものです。一方、よかれと思っている口腔ケアを拒否する患者さんに対しては、「なぜ抵抗するのか」という思いがあるのではないでしょうか。

　私もこれまで、「口の中をきれいにしたい」という思いが先走り、ケアを苦痛だと感じる患者さんの気持ちを考えることに欠けていました。実は口腔ケアは、患者さんにとっては「痛い」「苦痛だ」「不安」という思いしかなかったのではないかと思います。このような気持ちの行き違いから、拒否、つまりスタッフへの暴力行為（叩く、唾を吐く、チューブをつかむ）が生じ、口腔ケアの実施を難しくしてしまっていたと思います。

手浴【あたたかい】勝部　理恵 , 佐伯　教子 , 野津　友紀 16巻2号 , 2013年3月 , pp.18-21

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治療継続が難しい高齢者

　当院のA病棟における認知症高齢者の患者さんは、認知機能の低下に加え、加齢による視力の低下、脳梗塞による関節拘縮が進行しており、清潔の保持が困難で、白癬菌感染を起こしやすい状況にありました。手指の現状を調査した結果、入院している患者50名のうち、10名（20％）が爪白癬に罹患していました。

　爪白癬の看護の基本は「清潔の保持」と「治療の継続」です。そこで本研究では、爪白癬に罹患後、治療の継続をすることが困難になりやすい認知症高齢者に手浴をおこない、どのように変化するのか評価し、その効果について調査をおこないました。

お菓子【おいしい】岩本　文美子 , 杉山　三喜子 16巻2号 , 2013年3月 , pp.22-25

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　今回の対象患者さんは、常に妄想に支配されていたために食事摂取量が減り、体重減少も著しく、処遇困難な状況にありました。そこで、幼少期の患者環境をくみ取り、看護師の姿勢やかかわりを変化させたところ、精神状態の安定とともに、体重増加につながったので、報告します。

腹部マッサージ【気持ちいい】神里　隆 , 東恩納　優子 , 仲座　健 , 堂本　広美 , 中村　肇 , 新垣　恒夫 , 金城　智美 , 大城　安枝 16巻2号 , 2013年3月 , pp.26-29

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便尿失禁していても、おむつ交換を拒否するA氏

　精神科看護において、患者に「安心できる空間」を提供していくことは、精神症状の安定を図るためにも重要です。

　今回紹介するケースのA氏は、便尿失禁した状態で病院入口や売店前にいたり、単身外出時に便尿汚染するといったことが頻回にみられていました。失禁したまま歩き回るため、声をかけるものの粗暴な様子が顕著に出て、物を破損してしまったりと、病棟だけでなく病院内で大問題となり、医師や院内委員会への相談では、閉鎖病棟への転棟まで検討される状況になってきました。

お笑いDVD【おもしろい】鈴木　和 , 高橋　信治 , 鈴木　仁志 , 魚住　伸也 , 斎藤　忠彰 , 田畑　潤 , 石代　拓樹 , 福岡　彰 16巻2号 , 2013年3月 , pp.30-33

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　皆さんの病棟にも、めったに笑うところを見ない患者さんはいらっしゃいませんか。そういう患者さんのことを、笑わせたくなりませんか？（それでも笑ってくれないとヘコむのですが……）。

　笑いの場では、緊張感や圧迫感から解かれ、開放感を感じるものです。患者さんと看護師のあいだで、少し緊張した状況を想像してみてください。拒否的になられてしまったり、ちょっと不機嫌になっていたり。たとえば、拒薬などに対して私は、もちろん最初は真面目に説得しますが、もしその場の雰囲気が許されるならば、ちょっと冗談も言ってみます。そこでうまく「クスッ」っと笑いを生むことができれば、緊張した空気が一気に緩むのがわかります。それだけのことで、薬を飲んでくれたりすることもあるでしょう（もちろんダメなときもありますけど）。

化粧【きれい】早川　麻耶 16巻2号 , 2013年3月 , pp.34-37

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　入院治療中心だった精神医療施策は、脱施設化が進められています。よって病院に長期間入院していた患者さんも、地域生活へと移行していくことになりました。長期入院していた患者が社会復帰を目指していく過程では、オレム^＊1のセルフケア理論でも言われているように、清潔の保持、身だしなみへの配慮、自主性の向上や他者への関心等、生活意識や社交性の向上を促すケアが重要となってきます。

　筆者が働いていた井之頭病院の女性病棟では、長期入院患者さんが大半を占めていたため、社会復帰促進の一環として、セルフケア向上を目指し、「化粧」を患者さんにおこなってもらうレクリエーションプログラムを実施してきました。

口腔ケアは「気持ちいい」んです！―私が口腔ケアにハマった理由髙橋　清美 16巻2号 , 2013年3月 , pp.38-43

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「清潔」「快感」体験は、心身の回復への効果大！

　私の新人時代は、整形外科病棟。その時代は、先輩から後輩への“愛ある叱咤激励型教育”が主流でした。生活援助に対する外科系看護師のプロ意識は恐ろしいほどで、褥瘡なんてとんでもありません。シーツにしわが1本あるだけでも血相を変えて、「ふるかわくん（私の旧姓。なぜか、くん呼び）、シーツがしわだと、どうなる？」と。普段穏やかで優しい女性の先輩だからこそ、その落差に脅威を感じたものです。日々、生活環境が患者さんに与えるダメージを予測しながら、どんな支援がよいのかを考え、細やかな工夫をすることに一生懸命でした。

　そこでの経験から語らせていただけるならば、「術後の回復には、清潔ケアによる心身の癒しが欠かせない」と思っています。手術を受けた患者さんの多くは、できるだけ順調に回復し、早く退院したいと思っています。創部の痛み、何か問題があって入院が延びたらどうしようという不安、家族や職場のことといったさまざまな心配をかかえ、体も心もガチガチに緊張しています。

隗より始めよ！―治療や身体ケアをさせてもらえる関係を作る小さな作戦松谷　典洋 16巻2号 , 2013年3月 , pp.44-49

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身体ケアを拒否する患者の「ニーズ」ってなんだろう

　精神科の患者さんの身体ケアがしにくい理由は、「認知障害」「理解力の低下」「コミュニケーション能力の低下」「教科書通りに出現しない身体症状」「精神科看護師が身体的ケアに慣れていない」などである、といわれています。しかし、臨床経験上、私が最も本質的な理由だと思うのは、患者さんの「ニーズ」と、看護師側が考えているその人の「ニーズ」が合致していないからではないか、ということです。

　以前、内科やICUに勤務していた私は、ケアやキュアは、患者さんの身体データに沿って必要なものを的確に、ダイレクトに「提供」することであり、それこそが看護師の仕事だと思っていたフシがありました。なぜなら、治療がある程度苦しくても、「疾患が完治・寛解すること」こそが患者さんのニーズの大半を占めているからです。

特集2　保護室をめぐる私の看護考

扉 16巻2号 , 2013年3月 , pp.50

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本誌2009年7月号の特集「保護室がいっぱい」は、その圧倒的な数と綿密な取材で一躍話題となりました。このたび、著者である三宅薫さんがその特集をさらにバージョンアップし、『行って見て聞いた精神科病院の保護室』という本を出版します。

保護室の取材で全国行脚をする三宅さんに出会い、影響を受けた2人の看護師さんに、保護室をめぐる看護についてを書いていただきました。

「生活環境を整える」という視点が大事大谷　須美子 16巻2号 , 2013年3月 , pp.51-54

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◆保護室に風穴を開けた研究に驚愕

　過去を振り返ると、精神科看護の面、法的な面、人権への配慮の面等、あらゆる側面において、なんと稚拙で未熟な知識と技術で、入院している患者に対応していたのだろうと恥ずかしく思う。そして時代の変化やさまざまな人との出会いにより、多様な価値観や常識の違いに触れながら、影響を受け、変化してきた自分自身に気づく。

　本書の著者である三宅薫さんは、私に大きな影響を与えた1人である。2009年に『精神看護』の特集となった「保護室がいっぱい」を見た私は驚愕した。精神科病院という閉鎖的な空間の中でも、特に保護室は、多くの精神科看護師が自施設以外の状況を知る術がなかった場所だ。また、開示・共有することが暗黙のタブーであったような感覚もあった。そんな中、三宅さんの研究は、タブーを打ち砕く革新的なものであったからだ。

信頼関係のつくり方中世古　泰 16巻2号 , 2013年3月 , pp.55-57

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　1978年、私は民間の精神科病院に入職し、初めて保護室というものを知った。コンクリートの壁に、厚さ10cmはあると思われる鉄製の重い扉。目の高さに作られた細い隙間（観察窓）と、足元に作られた扉付きの配膳口。そして床に穴を開けただけの丸見えのトイレ……。薄暗いその部屋に10分も閉じ込められたら、私は平常心でいられなくなるのではないかと思った。それまでの生活の中では考えたこともなかった世界だった。あのときの強烈な保護室への印象は、今でも鮮明に覚えている。

　あれから35年、保護室の居住空間は格段に改善された。開放化や個室化も進んだ。その一方で、いまだに精神科にとって保護室は必要とされる空間だ。

巻頭

change of life 夏野　葉月 16巻2号 , 2013年3月 , pp.1-8

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8歳のとき、母が心の病を発病した。

感情的に不安定になり、ある日急激に悪化してそのまま3か月間精神科に入院した。

寄稿　自傷する私の当事者研究【最終回】

病気という恵みと生きていく南部　優紀 16巻2号 , 2013年3月 , pp.66-73

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　3回の連載でしたので、これが最後です。これまで、人生や病気の行き詰まりからマンションの3階からダイブした経験について、そして自傷に見捨てられた今の自分について書かせていただきました。

　今回は、飛び降りたあとのことや当事者研究と出会ったこと、そしてこれから支援者に、看護師になっていくことについて書かせていただこうと思います。めちゃくちゃな順番で読みにくいかとは思います。反省しています。ですが、一生懸命書くので何卒よろしくお願いします。

寄稿

いつだって、どこだって、だれだって、リカバリー！―「リカバリーミーティングいわて2012」開催記安保　寛明 16巻2号 , 2013年3月 , pp.86-89

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　昨年の12月22～23日、岩手県盛岡市の“プラザおでって”で、リカバリーフォーラムの地方版「リカバリーミーティングいわて2012」が開かれました。リカバリーフォーラムとは、毎年夏に東京で開催されるコンボ（地域精神保健福祉機構）主催の大イベントで、当事者や支援者が1000人以上集まります。そして2012年、その地方版を岩手で開催することにこぎつけ、県内外から100人くらいの参加者が集まりました。私は実行委員の1人として企画や運営に携わりました。

　今回は、イベントに向けた私自身の思いと、「ソローニュの森」と題したギャラリーを通じて出会った写真家の田村尚子さんとの対談を紹介したいと思います。

特別記事

生活保護をめぐるトンデモ報道にひとこと―ドヤ街の一臨床医から鈴木　伸 16巻2号 , 2013年3月 , pp.74-80

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生活保護をめぐる報道の危うさ

　最近、さまざまなメディアで「生活保護」へのバッシングが吹き荒れています。生活保護の受給者が210万人を突破したとの報道の後、お笑い芸人の母親の生活保護不正受給騒動（これは「不正」ではなかったわけですが）以後、「生活保護を不正にもらっている人がいるのではないか」と、芸人やアイドルなどが次々にやり玉にあげられるという事態となりました。さらに、「生活保護費の半分が医療費だなんておかしい」「自己負担がないから頻回に病院を受診し、それが医療費を押し上げている」など、生活保護による医療費（医療扶助）への批判が始まりました。

　テレビでは、生活保護受給者が病院でもらった睡眠薬や湿布を売って小金を稼いでいる場面や、「暇だから毎日病院に通っているよ」などという一部の利用者の声を流して、生活保護を受けている人がまるでみんな不正をしたり、暇つぶしに病院に通っているような印象を与える番組までもありました。

連載　DNAは、いつ統合失調症の秘密を語るのか・1【新連載】

数を集めれば真実が見える？糸川　昌成 16巻2号 , 2013年3月 , pp.58-64

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　いつの頃からだろうか。個別の症例へ向かう関心が、まるで渇望感のようにわいてくるようになったのは。

　もちろん医療者であるから、症例に無関心であっては臨床が成り立つはずはない。しかし、臨床から距離をおいて研究室で試験管を振るようになってからのほうが、むしろ症例に対して憧憬にも似た情熱を感じるようになった気がする。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・90 16巻2号 , 2013年3月 , pp.94-95

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連載　勢いでのメール、失礼します！・3

歌い継がれる『出発（たびだち）』柿沼　紀子 16巻2号 , 2013年3月 , pp.12

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　私が働いている港北病院は、昭和36（1961）年7月10日、木造平屋建ての64床で開院しました。その後、時代の流れに合わせて増床減床し、現在は210床3病棟です。入院の他にも訪問看護、訪問診療、デイサービスをおこなっています。

　名前の由来は、“横浜港の北に位置する”というところからきているそうです。今は鉄筋コンクリートの3階建、外壁は淡い水色で、患者さんが洗濯物を干す屋上からは、「みなとみらい」が一望できます。

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インフォメーション 16巻2号 , 2013年3月 , pp.81-85

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編集部に届いた本 16巻2号 , 2013年3月 , pp.90-91

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へいぼん(弊社の新刊本) 16巻2号 , 2013年3月 , pp.91

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バックナンバーのご案内 16巻2号 , 2013年3月 , pp.92-93

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投稿規定・次号予告・編集後記 16巻2号 , 2013年3月 , pp.96

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基本情報

精神看護
16巻2号
(2013年3月発行)

電子版ISSN：1347-8370 印刷版ISSN：1343-2761 医学書院

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投稿規定

精神看護 16巻2号 (2013年3月発行)

特集1 拒否する人には「快」より始めよ

特集2 保護室をめぐる私の看護考

巻頭

寄稿 自傷する私の当事者研究【最終回】

寄稿