訪問看護と介護 4巻11号 (1999年11月)

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はじめに

 高齢者ケア・サービスの一環として,栄養管理サービスの必要性を明らかにし,その方法論を標準化するための研究が,厚生省保健事業推進補助金研究「高齢者の栄養管理サービスに関する研究」(主任研究者 松田朗)として取り組まれて4年が経過しました.その成果から,タンパク質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutri―tion,PEM)が,ケアの必要な高齢者の最大の栄養問題であることが提言されました.

 全国9地域における介護療養型施設入居中の女性722人,男性326人においては,女性39.4%,男性42.8%もの高い割合で血清アルブミン値3.5g/dl以下の人が観察されました.また,全介護状態の人では,血清アルブミン値3.5g/dl以下の人の割合は6割以上に増大していました.同様のPEMの出現状況は,福井県の在宅訪問患者でも観察されており,女性98人中34.7%,男性75人中31.6%に血清アルブミン値3.5g/dl以下の人を観察しました(図1).

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はじめに

 高齢者の最大の栄養問題がたんぱく質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition,PEM)であることは,わが国の最近の調査において明らかにされています1).そしてPEMは,入院高齢者に限らず在宅訪問ケアを受けている高齢患者においても約3割の頻度で観察されています2).成人期では過剰栄養による生活習慣病が問題視される反面,虚弱や疾病をもった高齢者の栄養状態の低下に対する関心と対策は,保健医療従事者間において未だに高くない現状にあります3)

 一方,栄養補給法の進歩により,経腸栄養や静脈栄養を受ける人は,在宅療養患者にまで幅広くおよんでいます.そのため,訪問ケアを担当する看護・介護者は,経口摂取の援助から静脈・経腸栄養の管理に至るまでの対応を迫られています.

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 栄養アセスメントとは,身体計測(A),生化学検査(B),臨床診査(C),食事摂取調査(D)などの項目に加えて,栄養状態に影響する環境要因(E),心理要因(F)を考慮して総合的に評価・判定することである.これらは各項目の英語の頭文字を取って栄養アセスメントのABCDEFと呼ばれている(図1).したがって,栄養アセスメントをすることにより,患者個人の栄養状態に対する多面的な栄養介入が可能となる.特に栄養療法では,栄養アセスメントから得られる情報は,患者の栄養状態,必要栄養素量の決定,適切な投与経路の選択のために重要な情報となる.また栄養療法が施行された後も,その効果をモニターし,患者の状態の変化に合わせて栄養素投与量,投与速度,投与経路の変更等を決定する際に大変有効である(図2).

 しかし,日本における栄養素の投与量の決定は,健康な人の栄養所要量を目安にしたり,医師や看護婦の経験に基づくのが現状であり,個々の患者に適した栄養素量を投与している例は少ない.個々に必要な栄養素量は疾病や心理的・肉体的ストレスによって増大するほか,加齢,服用中の医薬品による消化・吸収能の変化などからも影響を受けるので,個人差がある.そのため栄養素の投与量が必要量を満たさず,栄養療法を受けながら栄養不良に陥っている例も少なくない.したがって,患者各々の栄養状態を把握し,それぞれに必要な栄養素量を決定した上で栄養介入を行なうことが大切である.

特別記事

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MDS-HC改訂の背景

 いよいよ10月から要介護認定の申請が始まり,介護保険制度施行にむけて体制の準備が着々と進んでいる.現場では経営的な観点から要介護度や介護報酬の動向に振り回されているが,長い目でみれば,介護支援事業者として基盤を確立するためには,利用者のニーズを的確に把握し,それをケアプランに反映させる技能を蓄積することこそが重要である.

 こうした目的を支援するために,より良いものを少しでも早く普及させた方が適当と判断し,われわれはMDS-HC (Minimum Data Set-HomeCare)改訂版の刊行に踏み切った.MDS-HCは1996年に日本に紹介されて以来,アセスメント表の完成度の高さと,利用者のニーズを体系的に分析できるCAPs (Client Assessment Protocols)の存在によって高い評価を受け,介護支援専門員の実務研修等でも最も多くの人々から支持されている.

連載 訪問看護 時事刻々

今月の話題 ランキング 石田 昌宏
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 銀行,国債,地方自治…最近は「格付け」をすることが流行のようで,その影響も大きい.格付けに左右されて,経営が実態以上によく見えたり,倒産の憂き目にあったりすることもある世である.医療の世界は少し前までは格付けランキングなどとは縁遠い世界であったが,最近は書店にいけば,「名医ランキング」「入院したい病院ランキング」さらに「緩和ケアを受けたいランキング」まで,多くの格付け本が並ぶ.その中で,昨年から日経ビジネス誌が年1回発表している「病院ランキング」を読んでみよう.

 今年のベスト5は,1位:聖路加国際病院,2位:新潟市民病院,3位:済生会熊本病院,4位:武蔵野赤十字病院,5位:聖隷浜松病院.全室個室,カルテの開示,クリティカルパス,リスクマネジメントなど,いずれも先駆的な取り組みをしている有名病院ばかりだ.

介護保険 今月の動き

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 介護保険のサービス価格である介護給付費の仮単価が発表になった.正式発表は2000年1月頃であるが,介護保険サービス事業者から,事業が成り立つかどうかの収支計算をする際にどうしても単価を知る必要があるという要望が強く,厚生省が“仮”のものであるがあえて価格を発表した次第である.

 発表されたのは主な価格だけで,それも今後修正されるだろうが,この仮のものだけでも,経営上のおよその目途はたつ.全体的な印象は,案外高めの価格が示されたということである.特に訪問介護は現行のホームヘルパーの価格より大分高い.訪問看護はほぼ現行なみである.

心起こし身体起こし・9

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 K子の家には,リュウマチの母親へのマッサージで訪れた.母親は四肢の関節に拘縮があり車椅子生活.聞けば子供2人も障害児という.「子供にもマッサージを」と依頼があり作業所から帰る時間を確かめ次の訪問となった.2人は全てにおいて介助が必要だった.「大変ですね」と溜め息が出てしまった.私は努めて明るく振る舞おうとした.しかしその力みはここでは無用であった.不思議とこの家では気分が明るくなる.冗談を言い合う父母,そして子供たちも笑っている.この家で溜め息は似合わないことに気づかされた.私:「この家って何でこんなに明るいの?」母:「こんな家(重度障害者が3人の家)まず無いわね,だから明るくやらんとしょうがないがね」 と笑って答えた.悲惨な状況だと私(専門家)が勝手に感じただけだった.ただし初めからこう明るくはなかったと言う.この状況の中,家族が選択した力,最善の方法,それが明るさだったのだ.

訪問看護ステーション管理月誌・11

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 平成6年にわずか10ステーション程で始めた神奈川県訪問看護ステーション連絡会は,平成9年に連絡協議会となり,現在では神奈川県下の150か所以上のステーションが入会し,現場の管理者中心に活動をしています.連絡会を始めた当時は,各地域の情報交換やスタッフには話せない管理者の悩みを打ち明け合って,迷っている時の支えとして機能していました.今では,年4回の定例会と研修会,訪問看護ステーション新聞の発行,訪問看護Q&Aマニュアルの作成,学生実習検討委員会と介護保険対策委員会という2つの委員会を運営する大きな会になりました.また,神奈川県を5つのブロックに分け,年4回程度の支部会を開き,情報交換や新規で開設した訪問看護ステーションのフォローをしています.

 訪問看護ステーションの制度が始まったばかりの頃は出遅れていた神奈川県でも,介護保険を目前にして,新規ステーションの数がグ~ンと増えてきました.新規ステーションのフォローアップと全体の質の向上は,協議会の大きな目的のひとつなので,「新任管理者の初任者研修」を企画しました.

介護保険にむけて訪問看護ステーションが考えておくべきこと・8

地域連携の進め方 服部 万里子
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 介護保険の要介護認定がスタートしました.訪問看護ステーションは従来以上に地域との連携が求められる時代に入ったのです.

在宅医療にふさわしい物と技術・2

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利用者のタイプ別IVHカテーテルの選択,ケア方法,留意点

事例1:カテーテルを事故抜去する危険性が高い人の予防対策

 Hさん,79歳の女性.腸管切除後に腸閉塞をたびたび起こし,数回手術を受けていますそのため,筋力の低下や骨萎縮など廃用症候群が進み,現在は車椅子や歩行器で歩行しています.鎖骨下からIVHカテーテルを挿入して在宅中心静脈栄養法を行なっています.延長チューブや三方活栓を輸液ラインに組み入れているため,ラインが長くなってしまい,歩行時に踏んだり,車椅子のハンドリムに絡まったり,寝ている時にからだに巻きついて事故抜去されたことが何回かありました.介護者は83歳の夫で視力低下や注意力低下があり,事故抜去に対する配慮は期待できません.

寝たきり起こし―そのメカニズムとモノ選び・11

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 前回はベッドから離れる目的のなかでも,大きな目標として入浴を取り上げてみました.自宅のお風呂に入れるようになる! ということは,様々な波及効果を生む可能性のある支援です.是非トライしてみてください.

 そこで今回は,さらに次のステップを目指すためにも,「寝たきり起こしレベルの生活行為支援」続編として,食事と排泄のための支援について考えてみたいと思います.

生命輝かせて―臨床医としての真髄を求めて・10

外灯というのは… 有働 尚子
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苦学生

 文字通り1か月10万円の生活費の予算では,幸運にも〈日本館〉の住民として破格の金額で住みかを獲得したとしても,FIAPの授業料・フランス語の教材・神経内科関係の専門書などに出費がかかり,予定額オーバーの月が続いた.渡仏時,衣類は厳選して日本から持ってきたものの,フランスではクリーニング費用が極端に高い上に,休みなしに働いている私のような者にとっては,出しに行ったり取りに行く時間もなく,非常に不便であった.そこで,シルクのブラウスや普段着ないようなスーツを病院の看護婦さんに安く買って貰うことを思いついた.この策は,まあまあの成功で同年齢のナースであれば,アンテルヌの給料よりも時間給として遥かに高給取りであり,元は高価であった私の〈日本製品(フランスでは高級品の代名詞)〉を気前よく買ってくれた.この臨時収入で当時,是非必要とした医学書や日本では入手し難い,歴史的に貴重で高価な本を購入することができた.その時の私は,貴重な書物を入手できたことが何より嬉しく,洋服を売って生活している,といった惨めさなど微塵も感じなかった.

今月の119番

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 東京消防庁では,主に,春・秋の火災予防運動期間中などを中心に,災害弱者家庭の防火診断を行なっています.この住宅防火診断は,消防職員が区域内の災害弱者家庭を訪問し,火災予防上の診断をするとともに,火災予防に関する情報をお伝えしています.また併せて,コンロなどのガス器具や電気製品の点検をそれぞれガス会社,電力会社の協力を得て行ない,破損しているガス管や電気コードなどは,その場で取り替えや修理を行なっています.

 今回は平成10年度中に行なわれた,東京消防庁管内の住宅防火診断の結果と今後の推進方策について,お知らせいたします.

宮崎和加子の映画でおしゃべり・11

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 前回の「マイフレンド・フォーエバー」のビデオをみたときに,同時にエイズをテーマにしたビデオもいくつかみた.人権問題として描かれた『フィラデルフィア』などいろいろあるが,その中でも強烈に印象に残ったのは,『運命の瞬間(とき)/そしてエイズは蔓延した』であった.

 エイズという病気が出現した原因を探り,アメリカの社会でどのように対応してきたのかが正直に描かれている.エイズについてある程度知っているつもりだったが,実はほとんど知らないということがこのビデオをみてわかった.医療に携わるものとして,常識といえる内容である『運命の瞬間』の鑑賞をお勧めしたい.

多文化ヘルシークッキング

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 アメリカでは,10月中旬のコロンバス・デイを皮切りに,ハロウィーン,感謝祭,クリスマス,新年と,慌ただしく長いホリデイシーズンに突入する.

 ホリデイの中でも,感謝祭,クリスマス,イースターは,家族と過ごす重要な祝日であり,これらを欠席するのは大変身勝手な行為と信じられている.

基本情報

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訪問看護と介護
4巻11号 (1999年11月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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