生命輝かせて―臨床医としての真髄を求めて・10
外灯というのは…
有働 尚子
1
1VITA臨床生命研究所
pp.915-918
発行日 1999年11月15日
Published Date 1999/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901913
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苦学生
文字通り1か月10万円の生活費の予算では,幸運にも〈日本館〉の住民として破格の金額で住みかを獲得したとしても,FIAPの授業料・フランス語の教材・神経内科関係の専門書などに出費がかかり,予定額オーバーの月が続いた.渡仏時,衣類は厳選して日本から持ってきたものの,フランスではクリーニング費用が極端に高い上に,休みなしに働いている私のような者にとっては,出しに行ったり取りに行く時間もなく,非常に不便であった.そこで,シルクのブラウスや普段着ないようなスーツを病院の看護婦さんに安く買って貰うことを思いついた.この策は,まあまあの成功で同年齢のナースであれば,アンテルヌの給料よりも時間給として遥かに高給取りであり,元は高価であった私の〈日本製品(フランスでは高級品の代名詞)〉を気前よく買ってくれた.この臨時収入で当時,是非必要とした医学書や日本では入手し難い,歴史的に貴重で高価な本を購入することができた.その時の私は,貴重な書物を入手できたことが何より嬉しく,洋服を売って生活している,といった惨めさなど微塵も感じなかった.
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