訪問看護と介護 23巻1号 (2018年1月)

特集 在宅ケアの質を高める、“外縁”を広げる

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2018年は、医療・介護に関する政策の節目の年ともいえそうです。

4月、診療報酬・介護報酬同時改定が行なわれます。

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 冒頭から個人的なことで恐縮だが、昨年の晩春に、心臓バイパス手術で3週間近く入院した。そのときは検査、手術、集中治療室、一般病棟、そして検査、退院というイベントはめまぐるしく、病院での日々はあっという間に終わったという感覚であった。とりわけICUから戻ってから、日々の1時間近くの心臓リハビリテーションの実施が生活のリズムとなっていた。ところが手術から7か月後のアフターケアのための2泊3日の検査入院は、2日目の1時間近くのカテーテル検査以外にはこれといった予定もなく、所在なく過ごさざるを得なかった退屈な時間で、相部屋だったこともあり、仕事を病床で行なう環境でもなく、筋力低下を自覚するほどであった。

 おそらく、このような日々が高齢者の長期療養では続くはずである。よほど留意しないかぎり、廃用症候群は無為の日が続く入院の日々によって誘発されるのだということを実感させられた。

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 出前医療に力を入れて27年目を迎える。訪問看護を機軸とした24時間対応の在宅医療は、当時きわめてめずらしかった。診療報酬上、往診の評価は低く、往診医は絶滅危惧種と揶揄されたものだ。しかし、最近は国家の保護政策で在宅医療に取り組む診療所も増え、往診専門クリニックまでもが増殖している。まさに隔世の感である。

 とはいえ、今なお「なんで、在宅医療なんか始めたの」と尋ねられる。答えは単純明快。自宅で最期まで暮らしたいと望む患者と、それを支えたいと願う家族がいたからである。

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 地域住民の生活に今や医療は欠かせない。なかでも、急性期医療を担う地域の中核病院は、地域住民の誕生から看取りまで、そして人生のさまざまな健康上の危機を支える。筆者の勤務している病院も、高度急性期医療、都道府県がん診療連携病院、地域医療支援病院など多様な機能を担っており、こうした背景であっても、94%前後の在宅復帰率で、なるべく元の暮らしの場所へ退院できるよう支援している(表)。

 4月に控える診療報酬・介護報酬ダブル改定ではおそらく大きな影響があるだろう。すでに同じ医療圏にある急性期病院では、一般病棟から地域包括ケア病棟に転換したり、訪問看護を開始したりする動きが見られている。県立病院であり多機能を有する当院は、地域の他の医療機関の動きも視野に入れながら、中核病院として地域住民の安心な暮らしをどう支えるかが問われている。

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 「地域緩和ケア」とは、病院に通院、入院しているがん患者への苦痛緩和を図る医療のことではありません。がんや神経難病などの生命が脅かされる病気に罹った人、またはがんだけでなく慢性疾患が進行し、あるいは加齢により、生命予後が短いと予測される人とその家族に対し、地域の医療職、介護職、地域ボランティアが協働し、日常的な環境で、身体的、心理社会的、スピリチュアルな苦悩への支援を行なう地域社会のシステムです。

 地域緩和ケアの実践の内容は、下記が挙げられます。

❶身体的機能を適正にする

❷症状の予防・治療(マネジメント)を行なう

❸(生活する)環境を整える

❹情緒的・心理的サポートを提供する

❺社会的サポートにより社会的機能を高める

❻スピリチュアルサポートを行なう

❼死別・悲嘆のサポートを行なう

❽意思決定支援

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 私は20年ほど前から、家庭に訪問する仕事をしています。すべての方に看護を届けたいと思い、「なんでも相談を受ける」と対象を限定しないように常に心がけてきました。そのかいあって、多くの子どもたちと出会いをもつことができました。この20年間だけを見ても、介護保険法や障害者総合支援法の施行、障害者自立支援法(児童福祉法)の改正などと、制度や取り巻く環境は大きく変わってきており、その一つひとつを当事者の子どもたちとご家族と一緒に体感してきたと思います。

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 日本の精神科医療は、早急に取り組まなければいけない大きな課題を持っています。それは、入院医療中心から地域生活中心への支援構造の転換と、長期入院者の退院促進・地域移行です。

 多くの先進国が地域で生活を支えるための資源を整え、隔離収容型の入院医療からの転換を実現させるなか、日本の精神科医療は旧態依然とした状況からなかなか抜け出すことができずにいます。

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 地域包括ケア(community-based integrated care)は、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう」(「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」)と定義されます。

 「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される」という後段は「統合(包括)ケア」(integrated care)という概念を意味しています。

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 「介護職の幸せなくして、要介護者の幸せなし」。介護が必要な方に人生の終わりを幸せに過ごしていただくためには、それを支える人の幸せは欠かせないのではないだろうか。誰かの幸せの犠牲に成り立つ幸せは、決して長続きはしない。

 しかし今、“いきいき”と働けている介護職ばかりではない。全産業平均と比べれば決して高い数字ではないが、最近の介護職の離職率は16.7%。離職理由の第1位には「人間関係」が挙げられるという調査結果*1が、それを物語っているのではないだろうか。

巻頭対談 連載「在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!」100回記念対談

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連載「在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!」が本誌で始まったのは、今から約8年前のこと。本号で第100回を迎えます(p.58)。今回、その記念対談企画として、北海道更別村で活躍する家庭医・山田康介さんをお招きしました。

連載開始時から今日までの間にも、制度の改正に次ぐ改正で、在宅ケアの現場も様変わりしています。2人の対話からは、変わりゆく時代のニーズと地域住民と医療者との関係性、さらには1人ひとりの個別性に向き合うという素朴な、何より大事な原点が浮かび上がってきました。

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本誌連載「在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!」の著者・秋山正子さんが開設した「暮らしの保健室」が、2017年度グッドデザイン特別賞[地域づくり]を受賞。「地域経済の活性化により経済発展に寄与するデザインとして特に優れたもの」として選出されました!

連載 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第14回【最終回】

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どんな人でもごちゃまぜになって暮らせるまちをめざして、被災地支援から地域創生まで、雄谷さんと西川さんはさまざまなまちづくりに取り組んできた。1つとして同じまちがないなかで、まちづくりに通底する手法や着眼点はあるのだろうか?

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・100

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 連載を始め、とうとう100回目を迎えました。8年間をゆうに超える計算です。毎月欠かさずに綴ってこられたのは、読者の皆さんの応援があったからこそ。心より感謝申し上げます。

 この間にも、在宅ケアの現場にはさまざまな変化が起こりました。そして今、病院中心の医療の時代から地域包括ケアの時代に変わりつつある鼓動を、肌で感じるまでになっています。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第9回

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物語には時代の扉を開ける力がある

 今年の夏頃から、若年性認知症の人が書いた本が相次いで出版された。どの本にも、診断にたどり着くまでの苦労と告知され頭が真っ白になって閉じこもった数年を経て、ようやく身につけた新たな生活スキルのことと、これからの人生に対する希望が語られている。物語は、語り手の生きている時代の観念、感情、家庭や職場での対人関係、さらには広く共有されるイメージ、経済的な力、ケアや福祉の社会的機構などを色濃く映し出す*1

 今回は、認知症の人とその介護家族との物語を特徴づける時代として、わが国の1970年代から今日までの約50年間を顧みようと思う。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第17回

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 去る2017年10月15日、東京女子医科大学において、一般社団法人オマハシステムジャパン(OSJ)が主催する「日本語版オマハシステムBasicセミナー」を開催しました(写真1)。

 今回のBasicセミナーは、OSJにとって重要な2つの目的がありました。ひとつは『日本語版オマハシステム®・ユーザーズガイドブック』(写真2)をようやく出版することができたので、昨年「体験セミナー」に参加された会員の皆さまへいち早くお渡しすることでした。もうひとつは、体験セミナーはワークシートのみで行なったのに対して、今回は全体を見ることができるユーザーズガイドブックを活用し、より具体的にオマハシステムを理解できるセミナーを開催することです。今回は「Basicセミナー」と題して、オマハシステムの基本を理解し、実践で使えることをめざしました。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第25回

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 2017年6月に公布された「医療法等の一部を改正する法律」により、医療機関のウェブサイトが広告規制の対象となり、虚偽や誇大広告が取り締まられることになった。美容医療などにおけるトラブル防止がねらいだが、一律に規制すると、利用者が利用できる情報も制限される。このため、一定の条件のもとでウェブサイトの広告を認めることになった。

 規制の具体的内容を検討していた厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(桐野髙明座長)は11月29日に会合を開き、省令およびガイドライン案を検討。文言などの修正を座長に一任したうえで、パブリックコメントの手続きに入ることを了承した。厚労省は、本年6月の施行に向けて準備を進めている。

連載 シンソツきらきら・第13回

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 本連載がスタートして2年目に突入しました。引き続き、全国各地で頑張っていらっしゃる方々にご協力いただきつつ、今年からは新卒訪問看護師の視点が伝わってくるような具体的なエピソードを紹介していきたいと思います。

 2年目のトップバッターは、山梨県の訪問看護ステーションつゆきの中澤さんです。初めての単独訪問に向けて、どのような点を意識しながら訪問をしていたのでしょうか。(小瀬)

訪問ほっとらいん

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 言語聴覚士(ST)は、ことば・きこえ・のみこみに関するリハビリテーション(以下、リハ)を専門とする職種です。2004年に医療保険、2006年に介護保険で、言語聴覚士による訪問リハの算定が認められました。

 高齢化が進むなか、在宅医療における訪問リハの必要性は高まっていますが、理学療法士や作業療法士と比較して、訪問リハに携わる言語聴覚士は依然として多くはありません。言語聴覚士の専門性を十分に活かし、安全で質の高いリハ機会を提供するためには、業務の拡大や整備、さらに在宅医療に関する教育を行なう必要があると考えています。

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今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 栗原 , 小池
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本誌に配属されてすぐ、秋山正子さんの連載の担当になったのは3年前。毎月いただくお原稿は、私にとって在宅ケアの教科書でした。昨年から同連載の担当となった小池とともに、いまも勉強させていただいています。100回を迎え、どうかこれから先もたくさんの読者に加えて、編集者も育てていただきたいと勝手な願いを抱いています。●今回の巻頭対談で印象に残ったのが「はみ出す」というお言葉。「飛び出す」というとハードルが高いですが、はみ出すくらいなら私にもできるかも……と思ってしまいました。これまでの考え方ややり方からちょっとはみ出す、じつはそれもなかなか難しそうですが、今年は試してみたいと思います!…栗原

秋山正子さんの連載が第100回を迎えました。文字どおり全国を飛び回っている秋山さんが、毎月時間を捻出し、原稿を届けてくださっていることには頭が下がるばかりです。なんの因果かそんな記念となる回は、診療・介護報酬のダブル改定(障害福祉サービス等報酬改定を含めれば「トリプル改定」!?)を迎える年の1月号掲載。現場にはいろんな変化の波が押し寄せるかもしれませんが、個別のニーズに迫り、実現のために自由な発想で支援を考えることの重要性、それをあらためて強調するかたちとなりました。●本号から特集ページのレイアウトデザインに変更あります。文章の詰まった感じがなく、読みやすくなったように思うのですが、いかがでしょう。こちらの感想もお寄せください!…小池

基本情報

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訪問看護と介護
23巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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