訪問看護と介護 21巻6号 (2016年6月)

特集 2016年度診療報酬改定を現場で読む

  • 文献概要を表示

 今改定は、団塊世代が後期高齢者となる2025年の医療提供体制をそれに耐えうるものにするため、これまでの改定に続き、2018年度の同時改定につなげる内容となっています。

 また、社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保・財政健全化の同時達成をめざす2013年の社会保障・税一体改革をふまえたうえで、これまでも最重要課題として挙げられた「地域包括ケアシステムの構築」「医療機能の分化・強化、連携に関する充実」が引き継がれています。

  • 文献概要を表示

 2016年度診療報酬改定が4月から実施された。診療報酬本体の改定率はプラス0.49%と小幅であるが、医療機関の機能分化と連携、地域包括ケアシステムの構築など、改定内容は多岐にわたり、きめ細かく対応している。訪問看護と在宅医療は質と量の確保に向けて、全般的に評価を高め要件を広げる方向で改定が行なわれた。

 2016年度改定の内容を概観するとともに、訪問看護および在宅医療関連の改定項目を確認してみよう。

  • 文献概要を表示

今改定の概要

 2016(平成28)年度診療報酬改定では、❶2025(平成37)年に向けて、地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築を図る、❷地域包括ケアシステムの推進と医療機能の機能分化・強化、連携に関する充実などに取り組む、を大きな主題として改定が行なわれました。

 在宅医療の関係では、医療機関の実績や診療内容、患者の状態に応じた評価の見直しなどにより、在宅医療の質の向上とともに量の確保をめざした改定が行なわれています。また、患者が安心・納得して在宅での療養生活へ移行できるよう、医療機関における退院支援の評価の充実や在宅復帰機能が高い医療機関に対する評価の見直しが行なわれています。訪問看護の報酬では、在宅医療のような大きな見直しは行なわれていませんが、2014(平成26)年度の改定で創設された機能強化型訪問看護ステーションの評価や衛生材料の供給についてのさらなる見直しをしています。

  • 文献概要を表示

 訪問看護ステーションみけ(以下、当ステーション)は、東京スカイツリーの麓に事務所を置き、小さな範囲を自転車のみで訪問看護をしています。訪問看護利用者の全国平均が要介護3〜5の方が60%程度を占めるなか、当ステーションの利用者さんの特徴は、全国平均と大きく異なり、要支援〜要介護5の方がそれぞれほぼ同率割合でいらっしゃいます。これは、開業当初から当ステーションが「介護予防、重症化予防に訪問看護の早期利用を」と地域に働きかけてきた結果です。

 とはいえ、医療処置の少ない利用者さんばかりを訪問しているわけではありません。当ステーションの利用者さんたちの重症度が高くない理由は、どのような医療処置があってもQOLを高める、維持する看護をめざしているからです。当ステーションでは、人工呼吸器を装着している小児でもプールに行くのに、わが国ではある一定の年齢になると医療処置がある方は「家でパジャマで寝ている」人となってしまうことが多いのが、非常に残念だと思っています。

  • 文献概要を表示

 2000年、「誰をも差別することなく1人ひとりの個性を尊重した看護を提供したい」という理念を掲げ、訪問看護ステーションコスモス(以下、コスモス)を山谷地域に開設しました。この地域は、日本で最も貧しい地域といわれています。療養者のなかには簡易宿泊所(通称ドヤ)という3畳一間(ベッドハウスもあります)の旅館で生活している方もたくさんいます。コスモスは、地域で困っている方のニーズに応えたいと訪問看護事業のみならず、路上生活者の健康相談・生きがいと居場所づくりのデイサービス、生活を支え看取りのできる宿泊所事業などを運営しています。開設から17年という歳月のなかで、地域の方々の力を借りながら、地域に根ざしたステーションとして発展してきました。

  • 文献概要を表示

目標は「かかりつけ」看護師

 みんなのかかりつけ訪問看護ステーションは、2014年11月に名古屋市中区で開業しました。名古屋市全域を対象に、土日も定期訪問ができる、24時間365日年中無休の訪問看護を展開しています。その後、隣の市であるみよし市にも開設し、病気を抱える子どもたちを積極的に訪問看護しています。両施設で、スタッフは20名(セラピスト2名を含む)、訪問件数は月1000件前後、利用者は約120名です。

 私たちは、利用者の「かかりつけ」の看護師になることを目標にしています。最高のケアを提供する訪問看護をめざし、看護の質向上に向けた研究を実施し、事例などの論文の検討も積極的に取り入れています。

  • 文献概要を表示

 筆者は福井赤十字看護専門学校を卒業後、急性期病院、大学病院などを経て、2007年にLife On Vital Element株式会社(以下、LE)を起業した。「日本の訪問看護ステーションは土日・祝日に運営していないため、病院から多くの患者が退院できない。これでは地域包括ケアはいつまで経ってもできない」という考えのもと、「最期まで在宅で暮らせるサービス環境を提供する」ことを天命と考え、東京の城南地区(世田谷区、大田区、目黒区など)を中心に訪問看護ステーション12店舗(6月の3店舗同時オープン含む)、居宅介護支援事業所3か所、福祉用具レンタル事業1か所など、4事業を運営している。

  • 文献概要を表示

 まちのナースステーション八千代(以下、当ステーション)は千葉県八千代市(人口20万人)にあり、同市には当ステーションを含め、訪問看護ステーションが10事業所ある。当ステーションのスタッフは、看護師7名(常勤換算5.4名)、理学療法士2名、作業療法士1名、介護支援員4名、介護士7名、栄養士1名、事務2名、代表、以上25名である(2016年5月現在)。利用者数は現在、訪問看護98名、居宅介護支援34名、看護小規模多機能居宅介護(以下、看多機)10名である。末期がん、小児、難病など、医療依存度の高い利用者が多いため、2015年9月より看多機「むすんでひらいて」を開設し、さらに地域密着型のステーションをめざしている。

巻頭インタビュー ケアのヒュッテ・6

  • 文献概要を表示

誰もがちょっと立ち寄って、お茶を飲みながら困り事を相談したり、語り合ったり。みんなの拠り所となる場所「ややのいえ」。この、日なたの匂いのする民家を拠点に、地域づくりのさまざまな活動を展開する、合同会社「プラスぽぽぽ」代表の榊原千秋さんに、「ややのいえ」の物語を伺った。

書評

  • 文献概要を表示

 まず、タイトルを見て期待が膨らみました。本を開き、目次を見渡すと、「死亡までに生じる変化と機序」「予後予測」「輸液:する? しない?」「アドバンスケアプラニングと意思決定」などが目に入りました。知りたかったことが書いてある本にやっと出会えたとワクワクしました。

 死亡までの過程や意思決定を解説した本は多いですが、筆者の経験や、結果とhow-toの解説にとどまっていることが多かったように思います。書かれている情報を読み解くことと、それを実践に活用することの間には乖離がありました。

カラーグラフ 終える命 つなぐいのち・第15回

路上で生きるということ 國森 康弘
  • 文献概要を表示

※本連載は、本文のみ無料でお読みいただけます。

 写真は、冊子版でのみご覧いただけます。

 国外の紛争地や経済困難地域を訪れる一方で、大阪・釜ヶ崎や東京・山谷を歩いた。紛争の激しかった南スーダンやソマリアの平均寿命は50歳前後。日本では男性も80歳を超えるなど世界一の長寿国を誇っているが、大阪市西成区の男性平均寿命は70歳そこそこ、なかでも野宿生活者や日雇い労働者が多く暮らす釜ヶ崎では60歳台ともいう。

 雨の夜長に路上で眠る人。酒の空き瓶を転がして、昼間に行き倒れている人。血を流して、失神している人……。筆者も何度か、救急車を呼んだ。病気や栄養失調、寒さによって、路上で死ぬ人が後を絶たない。大阪市内だけで200人あまりが道端で亡くなった年も。ある意味、死がすぐ隣に控えているような、張り詰めた感のある場でもあった。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・81

  • 文献概要を表示

 入院中の夫のことで……と、暮らしの保健室に電話が入りました。発熱で入院したら、医師から「特養に戻るには胃ろうを造設したほうがいい」と言われたそうです。でも、もともとは在宅療養を望んでおり、病院から特養ではなく、自宅へ戻れないものか。そんな悩みをもつ妻からの相談でした。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第6回

  • 文献概要を表示

 看護職員の需給見通しの見直し作業が進められている。厚労省は、これまでの推計方法を改め、地域医療構想と整合的な新しい推計方法で、年末までに2025年の看護職員の需給推計を行なう考えだ。需給推計にあわせて、将来の訪問看護の利用件数の推計を行なうことも提案されている。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第63回

  • 文献概要を表示

杏里 ずっと気になっていた「認知症カフェ」に、編集のKさんと取材に行ってきたよ。

母さん 認知症カフェって、初めて聞いたかも。認知症の人が行く喫茶店とか?

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第2回

  • 文献概要を表示

 今回は、まず初めに在宅ケアの見える化ツールとして期待されるオマハシステムの構造の概要について述べ、さらに、他のツールと比較しながらその特徴を明らかにします。

 筆者がオマハシステムを知ったのは、訪問看護制度が始まったころの調査からです。当時、訪問看護のどんな実践が利用者の安心で安定した療養生活につながるのか、についてオマハシステム分類を使って調査しました*1。今や絶版となった『オマハシステムによる地域看護ハンドブック*2』を使って、経過記録や訪問看護計画、さらに訪問看護師から実践内容を聞き取り、オマハシステム分類に1件ずつ、書き加えていくという作業を積み重ねました。その結果、当時の訪問看護師の献身的な実践を数値や図表で表わすことで、実践の成果が見え、感動したことを思い出します。

--------------------

今月の5冊

ニュース—看護と介護のこのひと月

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小林 , 小池
  • 文献概要を表示

厚労省より「地域の実情に合った総合的な福祉サービス提供に向けたガイドライン」が3月に公表されました。これは、高齢者や障がい者、児童などの対象者にかかわらず、包括的・総合的に支援するしくみを構築するという「新たな福祉ビジョン」にもとづき、現行制度上で運用上対応可能な事項を整理したものです。これにより地域の実情に応じた多世代交流・多機能型の福祉拠点による取り組みの広がりが期待されています。医療と生活の両面をみることができる訪問看護師の方が活躍する場がますます広がってきていると思うとともに、そうした活動の実情に即した診療報酬・介護報酬の次回改定になればと願います。…小林

今回の連載『ウチの場合は〜』で紹介されているように、岡崎さんと「Dカフェ・ラミヨ」に参加させていただきました。本文にも登場するM子さん。言葉をひねり、洒落を利かせた彼女のコメントには、私の理解が遅れをとるばかり! “初参加”でもそんな語らいに交ざることのできるラミヨには、リラックスした雰囲気が流れており、テーブルを囲むご家族たちの表情もやわらか。いつのまにか、「取材!」とこわばっていた肩肘も緩んでおりました。愛される理由がわかった気がします。…小池

基本情報

13417045.21.6.jpg
訪問看護と介護
21巻6号 (2016年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

文献閲覧数ランキング(
8月6日~8月12日
)