訪問看護と介護 18巻6号 (2013年6月)

特集 高齢者虐待を防止する―そのとき医療・介護にできること

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最新の調査結果によれば、2011年度の養護者(家族・親族・同居人など)による「高齢者虐待」の相談通報件数は2万5636件、そのうち1万6599件は実際に虐待があったと判断されています。

被虐待高齢者は「女性」が76.5%、虐待の種類は「身体的虐待」64.5%、「心理的虐待」37.4%、「経済的虐待」25.0%、「介護等放棄(ネグレクト)」24.8%、「性的虐待」0.6%です。

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 わが国は、未曾有の超高齢社会を迎えている。それに伴い、要介護高齢者・認知症高齢者が急増し、それを支える介護者(養護者)の負担が増している。その結果、介護者は介護うつや、高齢者を虐待せざるをえない“壮絶介護”の状況に追い込まれることがある。

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Q1 なぜ「高齢者虐待」は起こってしまうの? 日本における高齢者虐待の現実と背景

 「社会的弱者」への虐待は、どのような文化・社会でも必ず起こります。

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 スター訪問看護ステーション(以下、当ステーション)はスターコミニティ有限会社の一事業者であり、居宅介護支援、訪問介護、福祉用具貸与と在宅生活全般にわたるサービスを一体的に提供している。なかでも当ステーションは、看護師11名(常勤換算6.5名)、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士10名(常勤換算4.2名)のスタッフで、利用者約110名・約700件/月(介護保険8割・医療保険2割、看護6割・リハビリ4割)の訪問を行なっている。

 「精神疾患」が国民の5大疾病のひとつとなり、訪問看護師も精神疾患をもつ利用者に出会う機会が増えると考えられる。とりわけ、わが国は超高齢社会に突入し、認知症患者が激増している。しかし認知症の人に適切な医療・介護を提供できず、BPSDが家族関係を悪化させることも稀ではない。

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 私は、2003年に愛希訪問介護事業所(以下、当事業所)を起ち上げた。高齢化率17.7%のさいたま市桜区にあり、介護保険法に基づく訪問介護(約40%)に加え、居宅介護支援および福祉用具貸与・販売、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(知的障害者約30%、身体障害者約26%、精神障害者約3%)を、約70名のスタッフ(ヘルパー約65名、ケアマネジャー約5名)で行なっている。およそ200名の利用者のうち知的障害者および精神障害者が3割を超え、高齢化が進むなか「認知症」をもつ利用者(疑いを含む)も増えてきている。

 そうしたなか、訪問介護職として時に悩み、時に困り果て、毎日が勉強の日々である。「高齢者虐待ではないか」と思う事例も稀ではなく、どのように関わればよいかと対応に困り、担当者会議を開いても、解決につながるまでの道は決して平坦ではないと感じている。

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 居宅介護支援事業所「ほっとからすやまケアサポートセンター」(以下、当センター)は、高齢化率30%に近い山間地域、栃木県那須烏山市にある。単独デイサービス(定員30名)と単独ショートステイ(定員27名)の併設事業所として、2005年に開所した。現在、4名のケアマネジャーで、毎月100名前後の要介護者を支援している。

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 市貝町地域包括支援センター(以下、当センター)は、町直営型で町役場内に設置されており、保健師・主任ケアマネジャー・社会福祉士の3名で構成・運営されています。当センターでは、2011年6月から「高齢者見守りネットワーク事業」(以下、見守りネットワーク)に本格的に取り組み始めました。この目的は、高齢者、なかでも要介護高齢者・認知症高齢者を、行政のみならず、地域住民の協力を得て町ぐるみできめ細やかに見守り、また介護者(養護者)をも支援することで、高齢者に住み慣れた地域で安心した生活を送っていただくことです。

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 介護者による「高齢者虐待」の2011年度の相談・通報件数は2万5636件で*1、昨年より1.3%増加しているのみである。しかし、自治体の高齢福祉課などの主催で行なわれる高齢者虐待の事例検討会にアドバイザーとして出席するなかで、筆者が受ける印象は高齢者虐待事例そのものもより深刻化しているが、高齢者虐待のみならず、「児童虐待」や「障害者虐待」が1つの家庭の中で起きている事例が増えてきた、ということである。

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 介護を苦にした事件が、後を絶たない。

 「認知症93歳母の殺害容疑で逮捕 68歳の女『頼まれて殺した』」(2013年1月10日発生、兵庫県神戸市)、「88歳父殴り殺害 容疑の63歳逮捕『介護に疲れた』」(2012年12月16日発生、神奈川県相模原市)、「認知症の妻殺害 86歳夫に執行猶予付き判決」(同年12月17日、大阪地裁堺支部の裁判員裁判)――。

巻頭インタビュー ケアする人々・21

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厚生労働省による最新の調査結果によれば、高齢者虐待防止法に基づき全国の都道府県および市町村に相談・通報があった虐待事例1万6599件のうち、虐待者は「息子」が最も多く40.7%を占めている。被虐待者は「女性」が圧倒的(76.5%)で、虐待の種類で最も多いのは「身体的虐待」(64.5%)だ――。

本年3月号で、好評のうちに最終回を迎えた本誌連載「息子介護者の〈言い分〉 僕らが支援を必要とするワケしないワケ」。そのなかで、筆者の平山さんは、親を介護する「息子」に焦点を当て、彼らが「介護」をどう捉えているか、介護を通して「自分を取り囲む人々」をどう見ているか、そして、息子介護者の多様性をあぶり出して見せた。連載中の思い、虐待のこと、今後の息子介護研究への発展について聞いた。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 第15回日本在宅医学会大会が、3月30~31日の2日間にわたり、愛媛県松山市ひめぎんホールで、「生き方に向き合う在宅医療――高齢社会から多死社会へ」をテーマに開催された。在宅医療や地域包括ケアシステム構築への機運の高まりに応えるべく、永井康徳大会長(医療法人ゆうの森理事長)のもと、多彩なプログラムが組まれ、例年の3倍という約3000名の多職種が、全国から集まった。

 在宅医学を冠する本学会で、医師以外の専門職種ごとに「交流会」が開かれたことは本大会の大きな特徴のひとつ。訪問看護師、薬剤師、リハビリ職種、ケアマネジャー、介護職、鍼灸師、在宅クリニックの事務長や事務職が、それぞれ現在の課題について意見交換を行なった。

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 さる3月21日(木)、日本訪問看護財団の認定看護師教育課程訪問看護学科修了式が、日本看護協会ビル(東京都渋谷区)にて開催された。第8期となる今期は、11名が課程を修了した。

 日本訪問看護振興財団認定看護師教育課程は「地域で暮らす人々が疾病や障がいがあってもQOLを満たした生活が主体的に継続できることをめざし、地域で支える看護実践の専門家・指導者を育成して、訪問看護等在宅ケアの質向上及び推進を図る」という教育理念のもと、2005年10月に開講された。今期の修了生は、北は北海道から南は愛媛まで全国から集い、職場や家庭を離れ6か月間、研さんを積んできた。

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 患者(80歳)は現在、がんで自宅療養中である。病態は徐々に悪化しており、このまま在宅療養を継続した場合の余命は1か月程度、また、入院し治療を受けた場合の余命は半年程度と考えられている。この場合、医療提供の場の決定や医療内容の決定等、この患者への医療方針の決定は、どのように行なわれるべきであろうか。

 こうした、患者の権利擁護との関係で検討しておくべき臨床倫理問題は、今日、在宅医療の現場でも数多く生じるようになっている。そこで、2回にわたる特別記事として、われわれが検討を重ねてきた、インフォームド・コンセント(本号)と終末期医療(次号)の問題を取り上げ、基礎的知識を解説する。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・45

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 地域で長年訪問看護を続けていると、いろいろな思わぬエピソードに出会います。そして、地域のなかで、不思議なほどつながっていくのです。

 先日、白十字訪問看護ステーション(以下、白十字)のスタッフミーティングで、ケアマネジャーからこんなことが報告されました。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第23回

百ます計算が始まるまで 細馬 宏通
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 夕方の入浴前のひととき。入居者のみなさんが交替でお風呂に入る間、順番を待っているマエバシさんはちょっと所在なさそうにまわりを見ている。職員のカミヤさんが、すかさず百ます計算を持ってくる。電報局に勤めていたマエバシさんは細かい作業や計算が得意で、百ます計算はマエバシさんが休憩中にいつも熱心にやっている気晴らしだ。

 私たちは普段、グループホームでは観察者に徹することにしているのだけれど、ときどき、やりとりのなかにおじゃますることがある。この日も職員のカミヤさんはちょっと気をきかせて、離れた席で観察していた大学院生のジョウさんに、百ます計算を示しながら「どっちが速くできるか」と声をかけた。ジョウさんは、あ、と気づいて、さりげなくマエバシさんの隣の席に移る。

連載 一器多用・第25回

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 4月は新人研修の季節。今年も、全国各地の病院や介護施設で、新人さんへの移動介助技術の研修の機会を多くいただきました。どこからも共通の要望は、徹底的な「腰痛予防対策」です。

 一般的な腰痛予防研修は、腹筋・背筋などの筋力トレーニングとストレッチによる身体づくりに加え、ベッド・車椅子間の移乗動作をマニュアル的におさらいして実習する内容が多いように思えます。しかし私の研修では、全体の3分の2は身体づくりに時間を割き、あとの3分の1は介助技術という構成です。しかも、徹底して筋トレ・ストレッチは行ないません! では、何を行なうかと言えば「身体の使い方の工夫」です。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第27回

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杏里 本誌2月号から始まった田口ランディさんの連載「地域のなかの看取り図」をいつも楽しみにしてるんだけど、その第2回の内容にすごく考えさせられたところがあるんだよね。

母さん 私も介護経験者だから、鋭い視点に感心しながら毎回読ませていただいているわ。第2回は話題作『ペコロスの母に会いに行く』(西日本新聞社、2012年)の作者、岡野雄一さんについて書かれていたわよね。

連載 地域のなかの看取り図・第5回

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 父が精神科病院からホスピスに転院する朝のことは、今でもとてもよく覚えています。夏の間、緑色に繁っていた木々がすっかり葉を落として、丸裸の冬木立になっていました。朝霧がたちこめる山道を、淋しい気持ちで父の病院に向かいました。

本連載はWebマガジン「かんかん!」http://igs-kankan.com/article/2013/04/000747/index.htmlにて順次無料公開中

読者の声

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みなに教えられた看取ることの意味

岡田梨佐 兵庫・訪問看護師

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ニュース―看護と介護のこのひと月

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次号予告・編集後記 杉本 , 多淵
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介護保険によって図られた介護の社会化。でも、医療政策の転換に伴い、在宅療養者の増加と在宅医療・介護の供給不足が相まって、介護が家庭に逆戻り?と一抹の心配をしています。「家庭」は最も居心地のよい場所にもなれば、限られた人間関係の“密室”にもなる。それまでの長い歴史ある家族だからこそ、愛憎相まって「虐待」に至ることも……。そこに、職能として入り込んでいけるのが、訪問サービスの強みです。でも、そうした現場に踏み込んでいくのは不安です……。家族の介護疲労や本人への期待ゆえの場合もあり、その境目はとてもグレー。そのとき、どんな支援ができるのか。共通して見えてきたのは、各職種の最も基本的な専門性を駆使した本人・家族支援と、高齢者虐待防止法の活用です。さらに大野医師は、鍵は認知症医療にあり、と看破しています。…杉本

巻頭インタビューで語られた「息子介護」。連載中は、文字どおり“他人事ではない”気持ちで編集していました。1人っ子で親が高齢、離れた場所に住んでいる、とくれば、自分も立派な介護予備軍。せめて“青天の霹靂”とならぬよう、日ごろから意識しておかねばと、平山さんのお話を聞いて思いを新たにしました。その後、親にはできるだけ元気でいてほしいと思い立ち、「Jリーグ介護予防事業」の一環で各チームが行なっている健康プログラムへの参加を両親に勧めてみました。トップチームの選手たちと一緒に体操や身体測定ができるよとアピールしたのですが、「犬の散歩で十分」と一蹴。Jリーガーはまだ国民的アイドルじゃないんだと痛感しました。…多淵

基本情報

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訪問看護と介護
18巻6号 (2013年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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