訪問看護と介護 18巻7号 (2013年7月)

特集 「緩和ケア訪問看護師」の“実践力”を育てる

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看取りまでを視野に入れた「在宅緩和ケア」の必要性・重要性が高まっています。

とくに、「がん患者」さんでは、疼痛をはじめとする症状コントロールが難しいことも多く、そのケアに携わる訪問看護師には高度な“実践力”が求められます。

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わが国の「がん対策」の変遷

 1981(昭和56)年に「がん(悪性新生物)」がわが国の死因第1位を占めるようになってから、すでに30年あまりが経過している。2011(平成23)年の人口動態統計によると、年間全死亡数約125万3000人のうち35万7000人あまり、すなわち約3人に1人が、がんで死亡する時代となった*1

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 「最近、末期がん患者の依頼が多くて……」。訪問看護ステーション(以下、ステーション)の多くの所長さんから聞く話です。しかしこの話からだけでは、末期がん患者を何人くらい、在宅で看取っているのか、どのようなチームでケアしているのか、どのようなプログラムでケアにあたっているのか、その「ケアの中身」はなかなか見えてきません。

 「末期がん患者を在宅で看ている」からといって、それが「在宅緩和ケア」になっているとは限りません。まずは、世界保健機関(WHO)が提唱する「緩和ケアの考え方」(p.531)に則ってケアが組み立てられていること、あるいは、日本ホスピス緩和ケア協会による「在宅ホスピス緩和ケア基準*1」に基づいてケアを行なうことを目標としなければならないでしょう。

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 ホームホスピスひばりクリニック(以下、当院)は、大阪のベッドタウンである奈良県北西部に位置する在宅緩和ケア専門の診療所です。当院の訪問看護は、ケアの対象をがん患者さんとそのご家族に特化し、医療保険のみで対応しています。

 訪問看護師は5名(常勤4名・非常勤1名、常勤換算4.3名・1名出産・育児休暇中)で、世界保健機関(WHO)が推奨する「がんと診断されたらできるだけはやい段階で緩和ケアを受けられる地域ケア」のあり方をつねに模索しています。当院では、「病ではなく、病をもつ人と病をもつ人を抱える家族を支えるケアをつねに提供し続ける」「つねに謙虚に、真摯に、誠意をもって、あきらめることなく、患者と家族に向き合っていく」という2つの理念のもと、がん患者さん・ご家族が抱える問題や症状に対して、医療・福祉によるチームケアを実践しています。

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 訪問看護パリアン(以下、当ステーション)は、スカイツリーや両国国技館で知られる東京都墨田区にある在宅ホスピス・緩和ケアの専門組織「グループ・パリアン」に所属する訪問看護ステーションです。図に示した組織メンバーが、1つのフロアで協働しています。下町の墨田区は、昔から区内で生活されている方が多い地域です。私たちは「喜ぶ人とともに喜び、泣く人とともに泣く」をモットーに、がん末期患者さんが最期を迎えるまでの日々を、住み慣れた家で、見慣れた風景を眺めながら、家族とともに過ごせるようお手伝いしたいと、訪問看護師13名(常勤9名、非常勤4名、常勤換算9.6名)で活動をしています。

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 2013年2月、「緩和ケア訪問看護師教育プログラム」(以下、本プログラム)が完成し、このほど第1回同プログラムも実施した(p.550)。本プログラムは、高まる在宅緩和ケアの需要に応じて(p.530)、その“実践力”を育てるため、緩和ケア訪問看護ステーション連絡会(PCNS、p.535)と聖路加看護大学の協力のもと作成されたものである。

 本プログラムは、次の3つの過程を経て開発された(図)。

(1)国内外の先行文献とこれまでに開催されている教育プログラムの検討

(2)在宅緩和ケアを担うエキスパートへのインタビュー調査と分析

(3)(1)(2)の結果を踏まえ、研究者8名の検討により教育プログラムの案を作成し、そのプログラム案に関して、全米ホスピス・緩和ケア協会(NHPCO)の理事であるのケン・ゼリ(Kenneth Zeri)氏(ホスピス・ハワイ代表)のコンサルテーションを受け、教育プログラムを完成

 本稿では、本プログラム開発までの経緯と、それぞれの過程で具体的に何を行なったのかを詳述する。

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 「緩和ケア看護師教育プログラム」(以下、本プログラム)の特徴は、在宅緩和ケアを担う訪問看護師の“実践力”の育成を目的として、「講義」(2日間)と「実習」(5日間)を組み合わせていることです。他稿でも述べたように、これまでの教育プログラムは講義主体のものが多く、「実習」とはいっても緩和ケア病棟や訪問看護ステーションの“見学”にとどまり、実際の“在宅現場”での実習が組み込まれたものはありませんでした(p.542)。

 また、われわれはプログラム作成に先立ち、在宅緩和ケア専門の診療所に勤務する医師5名と在宅緩和ケアの経験を有する看護師7名の計12名を対象にインタビューを行ないました。その結果(p.545)、実践力育成のための教育形式として、「現場教育が必要」「事例を振り返ることで成長する」「実際のチームに加わって実践を重ねなければならない」など、在宅現場での実習を取り入れた教育プログラムが求められていることが示されました。私自身、講義主体のプログラムには、「現場で必要な内容が研修に反映されていないのではないか」「実践力が身につかないのではないか」という疑問をもっていました。

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がん患者さんとご家族が、最後の日々を安楽にご自宅で過ごすためには、「在宅緩和ケア」が絶対不可欠と言っても過言ではありません。

また、さまざまなニーズが複合するがん末期を支えるには、「チーム」でのスピーディなアプローチが必要です。

しかし、スムーズな在宅移行と多職種連携の難しさ、がん末期ならではの急速な病状の変化などが相まって、その環境が整いにくい状況があるのも現実です。

今、何が「在宅緩和ケアチーム」の課題となっているのか?

そして、「在宅緩和ケア訪問看護師」の役割は?

「病院」「地域包括支援センター」「在宅」の、それぞれの立場からお話しいただきました。

連載 マグネットステーション インタビュー・43

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だいたいの問題は、チームアプローチで解決できる。そのためのチームづくりのキモは、患者・家族だけでなく、在宅緩和ケアに関わる専門職の安心をもサポートしていくこと―。ステーション管理者であると同時に、チームを束ねる「相談窓口」を担う吉田さんは、気負いなく語る。その秘訣を聞くなかで見えてきた、在宅緩和ケア訪問看護師の、ちょっと意外な“実践力”とは?

連載 「医療」と「福祉」再編の時代へ 「介護職員等による喀痰吸引等の法制化」を読み解く・第1回【新連載】

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 筆者は、厚生労働省(以下、厚労省)のなかでも「障害者福祉」を担当する課に在籍しています。ここでは、居宅介護・重度訪問介護等の訪問系サービスや、障害者支援施設・グループホーム等の居住系サービス、生活介護や就労移行支援等の日中活動系サービスなどの障害福祉サービス全般と、障害児支援・発達障害者支援などを所管しています。筆者は主に「身体障害」に関する施策を担当しており、その立場から2012年度4月に「介護職員等による喀痰吸引等実施のための制度」(「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正。以下、本制度)の成立にも深く関わってきました。

 こうした新たな制度ができるとき、担当省庁内では、関連の専門家や関係者(ステークホルダー)を交えた検討を行ないます。その制度を必要とする背景や、制度に関わるこれまでの取り組みの実態を踏まえ、何より、その制度を利用する人々にとっての安全性を重視しつつ、できるだけ使いやすい制度となるよう現場での実際の運用も視野に入れて、慎重に制度設計をしていきます。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・46

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 風疹が流行っていますね。国立感染症研究所によるポスターまでつくられ、啓発活動が盛んです。風疹の重大な点は、妊娠中の女性が感染するとおなかの赤ちゃんにも感染し、「先天性風疹症候群」という病気にかかる可能性があることです。

 ポスターには「昭和54年4月2日~平成7年4月1日生まれの男女は接種率が低く、昭和54年4月1以前生まれの男性は子どもの頃に定期接種のチャンスがありませんでした」とあります。これは風疹の予防接種が義務から任意へと制度が変更された影響です。それでも、女性は中学2年時に学校で受ける機会がありましたが、男性は接種の機会がないままに成長し、現在18~34歳。妊娠・出産が身近にある人も多いと思います。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第24回

カンファレンスに居る人 細馬 宏通
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 今通っているグループホームに行って、最初に面食らったのは、カンファレンスに入居者の方が参加していたことである。いや、参加、というのはちょっと違うかもしれない。

 カンファレンスの場所は、いつも入居者のみなさんが食事をとるリビングの広いテーブルだ。平日の午後、食事やトイレや入浴が一段落ついて、多くの人は個室にいる時間帯なのだが、食事が終わって会議の時間になっても椅子に座ったまま立たない人もいる。そこに、職員さんたちが集まってきて、テーブルにつき出す。

連載 一器多用・第26回

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 ベストセラー『五体不満足』(講談社、1998)で知られる乙武洋匡さんが、あるレストランで入店を断られたことをインターネット上で語り、大きな話題になっています。

 事の経緯は、乙武さんが、知人女性と2人で、銀座の雑居ビル内にある隠れ家的レストランを予約したことから始まります。このとき乙武さんは、車椅子であることを伝えていませんでした。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第28回

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杏里 このあいだ、母さんがご近所さんと女子会(!?)をしているとき、感動するシーンを目撃しちゃったんだよね。

母さん いつも横で仕事をしてて、私たちの話なんて聞いてないと思ってたんだけど……。

連載 地域のなかの看取り図・第6回

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 末期がんの実父(しかもアルコール依存症)を、家で看取るべきか、ホスピスで看取るべきか。私にとっては悩ましい問題でした。

 私は「実父を家で看取る」という選択をしませんでした。老齢の義父母がいても、さまざまなサービスを利用すれば家で看取ることは可能だったにもかかわらず、父をホスピスに入れました。その理由は、本当のところ、私の精神の問題と関わっているのです。

本連載はWebマガジン「かんかん!」http://igs-kankan.com/article/2013/04/000747/index.htmlにて順次無料公開中

訪問ほっとらいん

求ム、遺品整理士 榊 広輔
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 超高齢化が進む現在の社会において、65歳以上の人口は2012年10月時点で総人口の24.1%となりました。一人暮らしの高齢者も増え、もしもの時は残された身のまわりの生活用品の整理にご遺族は途方に暮れることになります。

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 「高齢社会検定試験」と聞いて、何のことかと思われた人がほとんどではないだろうか。これは、一般社団法人高齢社会検定協会が、本年9月に第1回試験を東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区)で実施する、まったく新しい検定試験である。

 この検定試験は、個人の長寿化、社会の高齢化に伴う課題を解決し、より豊かな未来を築くために必要な知識を提供することを企図して創設され、総論(試験時間30分)・個人編(50分)・社会編(50分)の3部構成になっている。受験にあたっては、(1)総論+個人編、(2)総論+社会編、(3)総論+個人編+社会編の3コースが設定され、それぞれ個々に受験する。総論の合格を前提に、加えて個人編を合格した場合は「高齢社会エキスパート(個人)」、社会編を合格した場合は「高齢社会エキスパート(社会)」、個人編と社会編両方を合格した場合は「高齢社会エキスパート(総合)」の協会認証資格(称号)が付与される。

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 現在、日本では、関連する医療政策により、在宅で療養する患者の数が、これまで以上に増加している。在宅療養中の患者が、病態が悪化し終末期状態に陥った場合、その後の医療をどのように進めるべきか、医療従事者が判断に苦慮することがあると思われる。特に生命維持治療の差し控えや中止の判断についてはそうであろう。

読者の声

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訪問看護が「入口問題」解消の糸口に!

風間祐子 静岡・訪問看護師

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次号予告・編集後記 杉本 , 多淵
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国民の6割以上が「自宅で最期を」と望んでいる――。在宅死を推進する背景として、よく聞かれるフレーズです。でも、厚労省「終末期医療についての調査」(2010)の結果をよく見てみると、たしかに「終末期の療養場所」に自宅を望む人は6割を超えますが、「最期まで自宅で」という人は1割余(人気は緩和ケア病棟で5割弱)。一方、その実現について「困難」と答えた人は6割以上。一般的な国民感情を言えば「在宅死は無理(嫌)」というのが現実的だと思います。極端に言えば、在宅死自体にニーズはない。でも、だからこそ、今「在宅緩和ケア」なのだと思います。それは、最期まで生きる、を支えるものだから。在宅緩和ケアは、新たな生き方・死に方を提示してくれるに違いありません。…杉本

本号では、「連携・調整力」「チーム力」「アセスメント力」など、「緩和ケア訪問看護師」に必要とされる“実践力”が、詳らかにされました。そして、括目すべきは、それらは実際の“現場”でこそ育まれると、「緩和ケア訪問看護師教育プログラム」の開発過程で明らかにされたこと(p542-549)だと思います。つまり、訪問看護に必要な力は、訪問看護のなかでこそ身につけられる。最近は、どうすれば自分の能力を伸ばせるか、思い悩む日が続いていました。筋力アップのためにスクワットを……。スタミナをつけるために長距離走を……。僕は、間違っていました。サッカーを上達させるには、サッカーをせねばならないのです。今後は実践でしか学べないことを、意識的に学ぶよう努力します。…多淵

基本情報

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訪問看護と介護
18巻7号 (2013年7月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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