訪問看護と介護 15巻9号 (2010年9月)

特集 訪問看護推進への新しいステップ

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平成16年度から国の予算がつき実施されてきた訪問看護推進事業の成果はどのようにあらわれてきているのだろうか。

評価の高い2つの取り組みの報告と,推進事業に関わってきた3氏による座談会「新たな訪問看護への支援を考える」を合わせて特集とします。

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訪問看護認定看護師教育課程を立ち上げて

大森 訪問看護推進には何より訪問看護師の質の充実が大切です。兵庫県看護協会は,看護の専門性が説明でき,実践し,記録に残し,評価ができる看護師の育成をしたいと考え,訪問看護認定看護師教育課程を立ち上げ,現在2期生の教育にあたっています。

 認定看護師教育課程について,日本看護協会は他の都道府県看護協会にも,立ち上げの要望を出されたようですが,私が兵庫県看護協会長としてそれを受けたのは,私自身が循環器病棟で訪問看護を体験していたことと,厚生労働省のモデル事業でも在宅医療に関わっていましたし,ICUに異動してからは水頭症の呼吸管理を必要とする小児のケースで在宅医療の必要性を実感していたからです。

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 静岡県では訪問看護の充実のために,平成16年度より開始された厚生労働省の訪問看護推進事業に当初から取り組み,現在に至るまで継続して実施している。

 静岡県訪問看護ステーション協議会(以下,協議会)は,訪問看護推進事業のうち,「訪問看護推進協議会」「訪問看護ステーションの看護師研修」「在宅ターミナルケア研修」「在宅ターミナルケアアドバイザー派遣事業」の4事業の委託を受け実施してきた。

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はじめに

 平成16年度より,全国の自治体で「訪問看護推進事業」が行なわれている。これは,訪問看護推進協議会の設置,訪問看護を充実するための体制整備に向けたモデル事業の実施,がん末期患者等の在宅ホスピスケアの推進,および他機関との相互研修など,地域医療における訪問看護の活動の幅を拡大し,その推進を図ることを目的とした事業である。

 福岡県は,県独自の終末期医療に対する取り組みに加えて,平成20年度から訪問看護に関する複数のモデル事業を継続して展開している。本稿では,新しい医療・介護サービス提供体制の構築に関わると考えられる2つのモデル事業について,その実施内容と実際に取り組んだ看護師・利用者の感想を記し,展望を述べる。

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はじめに

 人口動態統計によると,1977年に病院死が在宅死を上回ってから約30年が経つ1)。いつの間にか病院で最期を迎えることが常識になっており,近年では在宅死が12.2%,病院死が79.7%と大きな開きがみられている1)。訪問時に「最後に病院に入れないなら,この国を恨むわ」と語る高齢者もいる。病院と同じ医療を受けながら在宅で最期を迎えられることが十分に周知されていないようだ。

 一言でターミナル期といってもその過程はさまざまで,在宅での看取りには本人や家族の価値観,今まで大切にしてきたものが反映される。今回,在宅で看取る決定をしていなかったが,経過とともに在宅で看取る選択をされた事例を,ご家族の了解を得たうえで報告する。

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目的 災害時要援護者と家族の,地震に対する「自助」「共助」「公助」に関する考え方を明らかにする。

方法 茨城県A保健所管内の訪問看護ステーション利用者で,慢性疾患や身体障害のある成人・高齢者と家族を対象に,訪問看護ステーションの紹介を受け,同意を得た23名に面接を行なった。面接者が内容を分析し,共同研究者間で協議して「自助」「共助」「公助」に分類した。

結果・考察 「自助」について,近隣の援助と避難方法の準備教育の要望があり,自らできることは,周囲に物を置かない,落下危険物の除去等であった。「共助」については,近隣と相互支援がある場合は,自ら病状を説明し情報提供の努力をしていた。また,地域の班の単位は,お互いの顔と家の状況がわかり合える関係であった。「公助」については,要援護者登録や事前契約ができる福祉避難所の指定,そこの環境整備や医療職者配置の希望だった。その他,耐震建物への助成等の要望があった。

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 このたび,日本せきずい基金では,脊髄損傷(以下,脊損)の慢性期のヘルスケアに焦点を当て,脊髄損傷者や医療福祉関係者向けのマニュアルとして,『脊損慢性期マネジメントガイド』を刊行いたしました(住田幹男ら編,A4判,152頁,2010年2月,日本せきずい基金刊)。本書は無償配布しています。この発行に至る背景と本書の概略を紹介し,また,入手方法をご案内します。

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がん患者の在宅看取り100%

――お会いするのは久しぶりですね。以前,ステーション同士で連携させていただいたご縁で今日はインタビュアを務めます。小笠原ステーションは,在宅ホスピス,それと,トータルヘルスプランナー(以下,THP)がいる点が,他にはない大きな特色だと感じています。

木村 ありがとうございます。まず在宅ホスピスについてですが,小笠原グループ(小笠原内科との連携チーム)として力を入れており,最近ではほぼ100%の方を在宅で看取っています。20か月で50数名,誰一人,最後になって入院された方はありません。

連載 訪問看護 時事刻々・138

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 第22回参議院選挙が終わった。看護職のたかがい恵美子氏が,比例代表で21万443票を獲得し当選した。引退する南野知惠子氏を引き継ぎ,新しい看護職の参議院議員が誕生したのである。衆議院と参議院で多数を占める政党が異なるという“ねじれ”が生じたなかで,参議院与党の一員として重い役割を担うことになる。新人議員ではあるが即戦力を持つと評価されている。活躍を期待したい。

 たかがい議員の主張は,「看護の充実が高齢社会を豊かにするのだから看護職をもっと活躍させてほしい」「看護が社会を創るためには必要だ」というものである。看護職の労働環境をよくしたい,教育を充実させたいといった看護職だけを見たものではない。以下,彼女の主張を引用する。

連載 わたしのことをわたしから・35

私のリハビリ体験 細川 聰美
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 リウマチの療養から2年が過ぎ,いよいよ正式に会社に復帰できると準備を始めていた2001(平成13)年2月,私は突然動けなくなってしまいました。それは下半身にぬるま湯をゆるゆるとかけられたような感触で,腰から下が定まらず,どうしても立ち上がることができません。55歳のときでした。

 リウマチの治療を受けていた大学病院分院に緊急入院しました。診断は「胸椎圧迫骨折による下半身不随」。高熱と呼吸できないくらいの咳があり,肺炎にもかかっていたため,手術より肺炎治療が優先となり,病院のベッドで安静のまま1か月が経過しました。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・12

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 夏の初め,7月8日(金)の午後に,私は島根県出雲市大社町鷺浦というところに出かけました。134世帯,268人が住む鷺浦は日本海に突き出た出雲半島の南端近く,ここにある鵜(う)鷺(さぎ)小学校の全校生徒9人に会うためです。この小学校の出身である順天堂大学教授の樋野興夫先生(「がん哲学外来」で最近あちこちに呼ばれている医師)と,鵜鷺小学校校長の藤原恵子先生の交流から,3月に放映されたNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に取り上げられた「訪問看護師の秋山正子さんに会いたい」という子どもたちの願いに応えて実現した企画です。

 私は翌日から鳥取で行なわれる「第18回日本ホスピス・在宅ケア研究会」(大会長は徳永進先生,テーマは「いのちのおわりにみみをすます」)に参加する予定でしたので,その一日前に出雲に寄って,それから鳥取に向かおうと,そんなふうに考えたのです。

連載 せんねん村村長 老いを地域で活かす・12【最終回】

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 いよいよ最終回となりました。最初,「老いを地域で活かす」というサブタイトルには,わずかな抵抗感がありました。その一方で,介護保険証をもらった身であれば,名実ともに“老人”であると認める気持ちもありました。それを証明するかのように,昨年12月には新型インフルエンザワクチンの副作用で体調を崩し,姑の亡くなった日は声が出ない状態でした。ひどい咳が長引き,一時は血中酸素飽和度が95%まで低下するという経験を初めてして,しみじみと老いを実感した1年でもありました。サブタイトルは見事に正しいと感心した次第です。そして今,私は“死支度”を始めています。

連載 “ケースメソッド”でステーション経営の頭を鍛える!・2

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 本連載の第1回で,小規模な訪問看護ステーション(職員数・利用者数・延べ訪問回数が少ない)ほど,事業損益が赤字である割合が高く,安定した事業運営が困難である現状1)が報告された。そこで,健全な経営を図り,訪問看護事業の安定供給を行なうための方策の1つとして,「事業所の大規模化」が挙げられている。

連載 すっきり&やすらぎアロマ・6

植物の医者 カモミール 百々 雅子
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 ハーブ(薬草)はそれぞれに薬効が異なりますが,1つのハーブのもつ薬効はけっして1つではなく,むしろ多様な症状に適応します。たとえば1つのハーブが高血圧にも低血圧にも効くということは,今の西洋医学の薬に慣れた私たちには不思議な感じがします。でも考えてみれば,1つの薬効成分に注目して西洋薬が合成されたのですから,これも当然のことではありますね。

 ヨーロッパでもっとも人気のあるハーブはカモミール。実に多くの薬効をもつ,カミツレ(加密列)という和名もあるハーブです。

連載 ほんとの出会い・54

詩人はよみがえるか 岡田 真紀
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 エッセイストの朴(ぱく)慶(きょん)南(なむ)さんの還暦をお祝いする会,「キョンナムさん,ありがとう」があった。歌手の李(い)政(ぢょん)美(み)さんなど親しい友人が,人生の折々で励ましてくれた慶南さんに感謝をこめて開いたのだ。こじんまりしたイタリアンレストランに集ったのは,彼女がこの60年間に出会った大切な人たち。息子さんの小学校の先生もいれば,編集者,新聞記者もいる。けれども,挨拶は「偉い人」順ではなく,たまたまの立っている順番にマイクが回ってくる。司会は辛口の発言で知られる辛(しん)淑(す)玉(ご)さんだが,1人ひとりから優しく言葉を引き出していく。

 この会のクライマックスは,李政美さんのミニコンサート。いつもののびやかな声が,その日はさらに深い情感が込められているように感じる。李政美さんとこの会に集まった人たちの慶南さんへの想いが感応し合って,いつにもまして心に染み入る歌声だった。最後に,辛淑玉さん,慶南さんも加わり,3人が肩を組んで,「心に悲しみが,実る時 朝の丘に登り,ほほえみを学ぶ」と名曲「朝露」を歌った。辛淑玉さんの目にも李政美さんの目にも涙が光っている。

連載 読むことと旅すること 人との出会いに魅せられて・6

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 以前,英国のミッドサマー(夏至)はとても美しいと書きましたが,この6月,ミッドサマーを彼の地で過ごしました。海と光と風に包まれたコーンウォールで。

 コーンウォールは英国南西部最先端の長靴をはいた足のような形で大西洋に伸びている地域の名称です。

連載 お母さんといっしょ・21

読者の声

診療報酬改定に思うこと/他1件
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診療報酬改定に思うこと

森 千里

診療所職員

 

耳が痛い!

杉浦伸哉 スギ薬局

在宅医療営業部・薬剤師

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編集後記 杉本 , 伊藤
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●マグネットステーションの収録で小笠原グループの訪問に同行して,利用者さんの美男美女ぶりに驚いた。岐阜には美人が多いわけでもあるまい。きっと行き届いたケアと在宅での暮らしの賜物なのだ。素人の私にも見て取れる厳しい病状のある女性の体からは腫瘍が肉を破ってこぼれ出していた。とてもとてもつらいのに,彼女が口にするのは感謝の言葉。記念撮影することになると,ベッドからひょいと飛び降り,小笠原先生・木村さんの間からピースサインをくれました。その笑顔は膝が震えるほど綺麗で,写真がブレてしまった。…杉本

●座談会のおわりは待遇の問題が語られました。困っている人を放っておけない,学んだ知識・技術をいかして仕事を続けながら自分を磨いていきたい,何より看護が好きな訪問看護師たちは,「お金は問題ではない」とよく言います。でも見合った給与が支払われなくては,笑顔の訪問もむずかしい。それは介護職にもいえることです。政権が「コンクリートから人へ」を掲げてそろそろ1年。来年度の予算獲得に期待しています。…伊藤

基本情報

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訪問看護と介護
15巻9号 (2010年9月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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