連載 ほんとの出会い・54
詩人はよみがえるか
岡田 真紀
pp.743
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101691
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エッセイストの朴(ぱく)慶(きょん)南(なむ)さんの還暦をお祝いする会,「キョンナムさん,ありがとう」があった。歌手の李(い)政(ぢょん)美(み)さんなど親しい友人が,人生の折々で励ましてくれた慶南さんに感謝をこめて開いたのだ。こじんまりしたイタリアンレストランに集ったのは,彼女がこの60年間に出会った大切な人たち。息子さんの小学校の先生もいれば,編集者,新聞記者もいる。けれども,挨拶は「偉い人」順ではなく,たまたまの立っている順番にマイクが回ってくる。司会は辛口の発言で知られる辛(しん)淑(す)玉(ご)さんだが,1人ひとりから優しく言葉を引き出していく。
この会のクライマックスは,李政美さんのミニコンサート。いつもののびやかな声が,その日はさらに深い情感が込められているように感じる。李政美さんとこの会に集まった人たちの慶南さんへの想いが感応し合って,いつにもまして心に染み入る歌声だった。最後に,辛淑玉さん,慶南さんも加わり,3人が肩を組んで,「心に悲しみが,実る時 朝の丘に登り,ほほえみを学ぶ」と名曲「朝露」を歌った。辛淑玉さんの目にも李政美さんの目にも涙が光っている。
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