日本看護診断学会誌(看護診断) 22巻1号 (2017年3月)

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 救急看護認定看護師教育課程の受講生88名の実習中の記録と,臨床現場のNANDA-I・NIC・NOCなどの使用状況と必要性の認識の分析から,救急看護領域の看護診断の特徴と認定教育課程の教育上の課題を検討した.その結果,看護診断名と共同問題を使用していた受講生は32.1%,看護診断名のみは67.9%であった.看護診断の総数633件,うち看護診断名は84種類586件,共同問題は22種類47件であった.使用頻度は,「感染リスク状態」「ガス交換障害」「非効果的気道浄化」の順に高かった.外来と病棟の使用状況の比較では,NANDA-I,共同問題,OTE計画の使用に有意な差がみられた.救急看護認定看護師は,看護診断に基づく看護介入よりも,救急外来におけるBLSなどを重視する傾向がみられた.実習中は,正確に看護診断名が使用され,看護診断を重視していたことから,救急看護認定看護師の教育課程における教育は効果的であったことが示唆された.

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 本研究の目的は,「性同一性」の概念分析をし,NANDA-I看護診断「領域8セクシュアリティ 類1性同一性」の看護診断開発に向けた示唆を得ることにある.分析方法は,Rodgers(2000a)の概念分析アプローチを用いた.分析の結果,性同一性の属性は,【身体と性別の同一性の自覚】【社会適応につながる性別に対する自己認識】の2つのカテゴリーが抽出された.先行要件は,【内的要件】【外的要件】の2カテゴリーであった.帰結は,【性同一性の構造における仲間や社会的影響】【性同一性の獲得における家族との関わり】【性役割の認識と獲得】の3つのカテゴリーが抽出された.概念分析により抽出された定義は,「身体と性別の同一性の自覚と社会適応につながる性別に対する自己認識と受容」であり,個性化と社会化の2つの過程が相互補完的に作用するものと考えられる.

日本看護診断学会第22回学術大会報告 質の高いケアにつなぐ看護診断

【会長講演】

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 NANDA-Iの診断名は世界共通のものであり,個別性はない.個別性は診断指標と関連因子・危険因子で示される.適切な看護診断のためには,特にフォーカスアセスメントを十分に行うことが重要であり,対象者に必要な情報をすべて収集する必要がある.アセスメントで証拠が示されていなければ,看護診断を行うことはできない.また,アセスメントがなければ,看護診断を証明することはできない.証拠となる情報をそろえ,的確に分析することが重要である.対象者に必要なフォーカスアセスメントを行うことがどの程度できるかが看護診断の精度を決定づけ,個別的で質の高い看護を提供できるのかを決定する.質の高いケアにつなげるためには,看護診断段階で対象者の個別性をしっかりととらえ,計画につなげることが重要である.また,どんなによい計画であっても,実施されなければ対象者は利益を得られない.計画したものを対象者に提供することができてはじめて,「質の高い看護を提供する」ことになる.

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 看護診断では,適切な臨床的判断を行う必要がある.その判断に必要なのが,臨床推論である.臨床推論の思考様式には,「パターン認識(直観的思考)」「多分岐法(アルゴリズム法)」「徹底的検討法」「仮説演繹法」の4つがある.また,看護過程における思考では,全体を構造化する能力やクリティカルシンキングが求められる.クリティカルシンキングには,「構成要素」「思考モード」「気質」などがあり,それを活用する視点も提唱されている.

 慎重な思考を心がけても,私たちには判断を誤らせる思考傾向があることも認識すべきである.誤った思考は,看護診断の誤診にもつながる.臨床的判断を十分に発揮できるよう,臨床推論やクリティカルシンキングの能力を身につけ,適切な診断プロセスができるように努める必要がある.

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 本稿では,神経難病を専門とする筆者と看護診断とのかかわり,わが国の難病対策の歴史,以上の2点を踏まえて,神経難病患者の看護診断について述べる.神経難病患者に対する看護診断は,神経症状の性格から比較的挙げやすいという特徴がある.しかし,神経難病患者には動けない人が多く,そこで勤務する看護職は多忙である.したがって,逆に軽症者については,案外,患者が抱えている問題点を見逃しやすいという落とし穴がある.また,「転倒転落リスク状態」の考え方なども,疾患の特徴からよくよく考えなければならない.神経疾患の場合,安静は必ずしも得策ではない.最後に,筆者の長年にわたる若年性パーキンソン病患者についての研究活動からわかってきたことを整理して紹介する.神経難病患者の看護診断は,患者を知れば知るほど,奥が深いものである.

【特別企画】

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 2016年のNANDAインターナショナル学術大会では,組織改革に関する報告会のほか,看護診断の開発と修正に焦点をあてた議論を行った.組織改革としては,2017年に米国内の大学に研究センターを設置し,看護診断開発や研究を推進する.看護診断の新たな動きは,①分類法Ⅲ(案)の採用は否決され,分類法Ⅱの継続が決まった,②関連因子と危険因子を洗練し,新たなカテゴリー「ハイリスク群」と「関連する状態」を追加する.診断焦点が同じ問題焦点型とリスク型看護診断の関連因子と危険因子をそろえる,③意欲や願望の表明を条件としているヘルスプロモーション型看護診断だが,意識のない患者さんや乳児でも近親者や看護師が「さらなる強化が可能」を察知すれば診断可能,とできるよう定義を修正する,である.専門用語は開発や検証によって進化を続けるものであり,完成形はない.よく性質を理解して,看護診断の開発・洗練作業にもご協力いただきたい.

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 本委員会では,2013年に委員会活動を開始しさまざまな活動をしてきた.毎年度開催される学術集会においても研究を推進する目的で,交流セッションを企画運営してきた.2014年度(第20回大会)では「日々の疑問を研究に,Part1.我が国の看護診断研究の拡がりと現状」,2015年度(第21回大会)では「日々の疑問を研究に,Part2.世界の看護診断研究—International Journal of Nursing Knowledgeを中心に—」,そして,2016年度(第22回大会)では「日々の疑問を研究にPart3.看護診断研究のいろいろ—看護診断研究の手法を具体的に理解しよう—」がテーマであった.参加者からの学会誌掲載希望も多くみられたことから,2016年度のセッションにさらに加筆した内容を整理し報告とする.

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 本委員会では,2016年度(第22回大会)の交流セッションにて,「日本で使いやすい看護診断を発信しよう! 活動を始めてみませんか?」を開催した.この度,本セッションの内容を整理し報告する.

基本情報

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日本看護診断学会誌(看護診断)
22巻1号 (2017年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1341-3007 日本看護診断学会

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