日本看護診断学会第14回学術大会報告 看護診断をささえる中範囲理論
【教育講演】
2.危機理論と看護診断プロセス
山勢 博彰
1
Hiroaki Yamase
1
1山口大学大学院医学系研究科
1Yamaguchi University Graduate School of Medicine
pp.58-63
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100297
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Ⅰ.心理的危機状態を表現する看護診断ラベル
NANDAインターナショナルの看護診断リストには,心理的危機状態を「危機」という言葉を用いて表現した診断ラベルは存在しない.そこで,危機状態にある患者・家族の心理・社会的状況を表現した診断ラベル1)としては,「不安」,「悲嘆」,「非効果的コーピング」,「ストレス過剰負荷」,「急性混乱」などを使用するケースが多い.一方,NIC(看護介入分類)には,介入分類の1つに「危機介入」がある2).これは,「患者が危機に対処し,危機の前と同じか,またはそれよりもよい機能状態に回復できるように短期カウンセリングを用いること」と定義されている.また,NOC(看護成果分類)では,「無力」,「絶望」,「自己尊重状況的低下」などに対し,「うつ状態のコントロール」,「コーピング」などの成果に対する介入項目として危機に関するものが挙げられている3).
このように,NANDA-NOC-NICでは,中範囲理論の1つである危機理論そのものから「危機」という言葉を取り入れて看護上の問題,介入,成果として表現しているものは限られている.しかし,心理的危機状態を理論的に説明している危機理論の歴史は浅くはなく,理論的土台のある危機状態をそのまま表現した看護診断ラベルが存在していてもおかしくない.
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