日本看護診断学会誌(看護診断) 23巻1号 (2018年3月)

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目的:パートナーシップ・ナーシング・システム(partnership nursing system:以下,PNS)におけるパートナーシップと,看護過程の展開に対する看護師の意識および看護過程の遂行状況との関連を明らかにする.

方法:PNSを導入している7つの病院の看護師210名に,無記名自記式質問紙調査を実施した.

結果:対象者の看護師経験期間は9.6±9.2年,PNS経験期間は17.4±15.5ヶ月であった.

看護過程の展開に対して,看護師が最も苦手・限界を感じていたのは[看護介入]であった.一方,最もPNSにより楽になったと感じていたのも[看護介入]であった.パートナーシップと,看護過程の展開がPNSにより楽になったと感じる看護師の意識の間には,中程度の正の相関がみられた.また,パートナーシップと看護過程の遂行状況の間にも弱い正の相関がみられた.

結論:PNSにおけるパートナーシップの醸成により,看護過程の展開が楽になったと感じる精神的負担感の変化と看護過程遂行の向上が期待でき,安全で質の高い看護の提供にも貢献しうると考える.

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 本研究は,「危機」に関連した看護診断の開発に向けて,既存のNANDA-I看護診断における「危機」の位置づけを明らかにすることを目的とした.『NANDA-I看護診断─定義と分類2012-2014』に示される手順に基づいて,「NANDA-I分類法の中の関連している既存の看護診断を見直す」という視点で文献の内容を分析した.「危機」という用語が含まれる,または「コーピング」を定義に含む診断名と定義,診断指標または危険因子,関連因子を抽出・分析し,リンケージされている看護成果分類(NOC),看護介入分類(NIC)についても抽出・分析を行った.「危機」という用語を関連因子に含む看護診断やNICとして『危機介入』『コーピング強化』『カウンセリング』がリンケージされている看護診断が認められた.また,「危機」に関連したNOCとしては,〔コーピング〕〔家族のコーピング〕〔カウンセリング〕等がリンケージされていた.しかし,「危機」に関連した診断名は存在しているものの,「危機」の定義や概念に合致する看護診断は存在していなかった.危機介入を効果的に実施するためには,「危機」に関連した新たな看護診断の開発の可能性が示唆された.

日本看護診断学会第23回学術大会報告 患者像をつかむ! 看護診断をケアに活かそう

【会長講演】

患者像をつかむ 任 和子
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I. はじめに

 「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる2025年に向けて,効率的な医療・介護提供体制の構築を目指して制度が作られている.2018年度は第7次医療計画がスタートし,診療報酬・介護報酬同時改定となる.自分の住む地域をみても,すでに医療提供体制は大きく変わった.回復期機能の病院が増え,訪問看護や訪問介護を受けることも,住民にとって特別なことではなくなりつつある.しかしその一方で,看護職として,患者や家族に十分な看護が提供できる仕組みになっているかと問われると,課題は山積している.

 時代とともに変わらなければならないことがあり,時代が変わっても変えてはならないことがある.どのように時代が変わっても変えてはならないことの一つは,患者や家族と信頼で結ばれる関係を築くことに価値をおくことである.一回限りの関わりであっても,長期的な関わりであっても,信頼で結ばれる関係を築くことが,看護の目指すところであろう.

 そのためには,一人の人間として看護師が患者と出会い,一人の人間として患者が看護師と出会う必要がある.そのことについて考えようと思い,本講演のタイトルを『患者像をつかむ』にした.

 本稿ではまず,「大学病院の管理職として感じたこと」として,看護現場で「患者像をつかむ」ことが簡単ではないということを述べる.続いて,「患者像をつかむための学習」として,特に看護基礎教育での取り組みについて述べる.

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 医療費削減の目的から在院日数が短縮され,病院経営に効率化を求められるようになって久しい.看護師は,看護診断とクリニカルパス(クリティカルパス)を日々併用することが現状となっている.複数の患者を受け持ち,同時に看護過程を展開している看護師にとって,看護診断とクリニカルパス(クリティカルパス)の併用には思考の変換を瞬時に行う必要があり,重要な問題である.この問題を解決するために,看護過程を基本に看護診断とクリニカルパス(クリティカルパス)の違いを過去・現在・未来の大きく3期に分けて考察し,併用するコツをまとめた.

 画一的に1つの方法だけで対応するには限界があるため,今後は,効率よくかつ丁寧に患者にかかわり看護ケアを提供することが重要である.そのためには,看護診断,クリニカルパス(クリティカルパス)というツールを上手に使い分け,患者にとって最良の看護を提供していただきたい.

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 日々の看護実践の目的に向けて,観察可能な事実と看護者の認識から手がかりを得て看護診断で表すことによって,私たちは共通してその状態を理解している.患者を全人的にアセスメントすることは,患者像として全体像を描き,その個別な対象に近づくことである.看護過程の一連の過程において,看護診断は単なる観察所見ではなく,一連の観察に対する解釈・分析・判断を意図的に行うことが重要である.米国での「看護師のための質と安全の教育(Quality and Safety Education for Nurses:QSEN)」が定義する能力には,「人と家族中心のケア」を中心とした「チームワークと協働」「エビデンスに基づく実践」「安全」「質の改善」「情報科学」が示されている.この「人と家族中心のケア」には,患者の価値や信念に基づいた個別の患者像をつかむことが根底にある.看護診断していくための患者像をつかむ看護者こそが,いつの時代も必要とされている.

【特別セッション】

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 入院期間が短縮している高度急性期病院において,標準看護計画やクリニカルパスを取り入れることは,効率性・有効性・適時性の点から有用であるが,クリニカルパスには個別性に則した看護展開が難しいという点があるとともに,電子カルテシステムの機能上の問題から,クリニカルパスのみで看護を展開することには限界がある.

 一方で,看護診断で看護を展開する場合,個別性に則した看護が提供できるものの,膨大な作業時間が必要であり,臨床の看護師のジレンマとなっている.

 この課題の解決策として,京都大学医学部附属病院では,看護診断とクリニカルパスを共存させることを選択した.患者の回復過程の速度に遅れることなく,個別性のある看護を提供するには,看護過程のなかでクリニカルパスと看護診断を共存させることがカギとなる.

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I. はじめに

 本誌への論文投稿数は1995〜2016年で合計52編であり,その内訳は原著18編,総説3編,研究報告12編,実践報告7編,資料5編,短報1編,事例報告3編,その他3編である.1995〜2014年までのデータは「日本看護診断学会20周年記念誌」に掲載された『看護診断にみる研究史』(黒田,2015)から引用した.経年的にみても年に2〜3編と少ない.

 編集委員会の役割は,看護診断に関連する論文の投稿数を増やし,看護の質向上に寄与する論文を1つでも多く社会に公表することである.看護診断に関連する研究とは,看護診断に至るアセスメントや看護診断の妥当性,信頼性,看護診断にもとづく介入の妥当性や成果の評価などがその対象となるが,今回は臨床における看護実践で身近な事例検討会やケースカンファレンスの取り組みを研究としてまとめる方法として,事例報告・事例研究に焦点を絞り,これらの理解を深めることを目的に今大会(第23回日本看護診断学会学術大会)において交流セッションを企画した.

 日々の看護実践では,さまざまな疑問や困難あるいは効果的であったことなどが事例検討会やケースカンファレンスで検討されているが,検討内容は個々の看護師の経験として蓄積され,論文として公表されることは少ない.しかしこれらの個々の事例が貴重な研究の芽でもある.1つひとつの事例を丁寧に振り返りひもとくことで,疑問や困難,あるいは効果の背景にある共通的な現象を見出すこともできる.見出された共通的な現象は,看護実践における新たな知識でもある.この新たな知識が論文として公表され,類似する疑問や困難に遭遇したり,効果的な看護介入を模索したりしている看護職がこれらの知識を共有することが可能になれば,看護の全体的な質向上にもつながると考える.貴重な臨床の看護実践をぜひ事例報告や事例研究の論文として公表していただきたいと考えるため,今回交流セッションの参加者の要望を受け,プレゼンテーションの一部を取り上げて本誌に報告することにした.

 なお,本稿では事例とは何か,事例報告と事例研究の違いや関係,事例報告を論文として投稿することに焦点を当てて述べる.

基本情報

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日本看護診断学会誌(看護診断)
23巻1号 (2018年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1341-3007 日本看護診断学会

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