日本看護診断学会誌（看護診断） 16巻1号 (2011年3月発行)

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【研究報告】

腹部膨満感という患者現象の明確化―消化器系疾患患者の体験に焦点を当てて中藤　三千代 , 下舞　紀美代 , 古川　秀敏 , 山田　紋子 , 林　みよ子 , 黒田　裕子 , 五藤　陽子 , 益田　亜佐子 , 石橋　ひろ子 16巻1号 , 2011年3月 , pp.5-12

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　本研究は，NANDA-Iへの新しい看護診断名提案を目指し，消化器系疾患患者が体験する腹部膨満感という現象を明らかにすることを目的とした．研究参加者は，最近1か月に腹部膨満感を体験した消化器系疾患患者で，現在病態が安定している14名であった．半構造化面接法でデータ収集し，質的帰納的に分析した．結果，腹部膨満感そのものの身体的な反応11カテゴリーと腹部膨満感に関連する身体的な変化7カテゴリーが抽出された．これらを既存の看護診断のうち腹部膨満感と類似する“悪心”，“消化管運動機能障害”，“急性疼痛”，“慢性疼痛”，“安楽障害”の診断指標・関連因子と照合した．腹部膨満感は，既存の看護診断名とは異なる患者現象であり，本研究で抽出された7カテゴリーの身体的な変化を関連因子候補，11カテゴリーの身体的な反応を診断指標候補とする，特定の看護援助を必要とする患者現象であることが明らかとなった．

【資料】

ウェルネス型健康チェック表を用いて評価した地域高齢者の健康生活小玉　敏江 16巻1号 , 2011年3月 , pp.13-22

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　地域高齢者の生活の現状を確認し，より健康的な生活への道標となるアセスメントツールの作成を目指す研究の一環として，「ウェルネス型健康チェック表」を作成し，調査を行った．調査での調査表は，上記チェック表に老研式活動能力指標を加えたものとした．H市の地域型デイケアの場に自ら集う高齢者を対象に，自記式留め置き法により実施したところ，日常生活の基本的な行為は約9割で自立していた．また，調査結果をもとに，主観的な「日課」の多寡と健康生活との関連を検討した結果，有意な関係が認められたのは，「栄養のバランスを考え食事する」，「定期的に入浴・シャワーをする」などの健康生活習慣の有無であり，地域で趣味の会などの活動に参加する，仕事や役割をもつなど社会活動の有無だった．さらに，日課が多いことは日常生活に自信と積極性をもつことと関係していた．前期高齢者では後期高齢者より日課の多い者が有意に多く，「年齢」も関係した．健康生活の維持向上のためには日課を増やし，充実させることが1つの方策だと確信できた．さらなる検討により，日課の多寡は実用的，効果的なアセスメント指標になりうる．

日本看護診断学会第16回学術大会報告　看護診断と研究・教育・実践―あなたの求めるものをかたちにして

【会長講演】

クロニックイルネスにおける看護学診断と実践・教育・研究黒江　ゆり子 16巻1号 , 2011年3月 , pp.23-32

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はじめに

　現代社会に生きる私たちは，医療技術の高度化とともに病気の急性状況を乗り越えることができるようになり，危機的な状況にある数々の生命を救うことも可能になっている．しかしながら，急性状況を脱したのちに，それまでの生活に戻ることができるかと問われると，1人ひとりとその家族においては，身体機能に変化がもたらされるとか長期にわたる病気の管理が必要になるなど，多様な対応が求められている．さらに，日々の生活のなかで繰り返されるさまざまな習慣の集積として発症する疾患も年々増加の一途をたどっている．すなわち，現代においては，病気の慢性状況とともに日々の生活を続けることが日常的に求められるようになっているといえるだろう．

　看護診断の概念および看護診断用語は，情報社会の発展に伴い，看護学における共通言語の必要性から1970年代に信念が形となり，1980～1990年代に開花・充実し，2000年代には介入・成果へと発展して今日につながっている．看護診断が大きく発展した1990年代は，保健医療において慢性疾患（chronic disease）から慢性の病い（chronic illness）へと概念転換が提唱された時期でもあり，看護学においてもクロニックイルネスとともにある生活を考えることの重要性に気づき始めた時期である．看護診断の概念が誕生したあとの20～30年間で，病気にかかわる状況も大きく変化しているのである．

　このような看護診断の発展経緯を踏まえながら，病気とともにある人生を生きること，およびそれを支える看護学における診断^†実践・研究・教育のあり方について考えてみようと思う．

【招聘講演】

1．Concept Development for Nursing Diagnosis―Philosophical and Methodological Considerations 16巻1号 , 2011年3月 , pp.33-44

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　I am going to talk with you not only as users of nursing diagnoses in your practice but also as potential developers of nursing diagnoses concepts.

　In accepting the nursing process as the major scientific approach for delivering nursing service during the past five decades, the nursing profession has also basically accepted the concept of nursing diagnosis to refer to a client's problems requiring nursing solutions. In general, nursing theorists, nurse researchers, and nursing practitioners agree that a nurse, in delivering a systematic nursing service to the client, should go through the step of identifying the client's problems and arriving at a list (i.e., nursing problem statement, list of nursing needs, or nursing diagnoses) that becomes the base for nursing approaches. Nursing diagnosing also has been politically integrated into the system of nursing practice so as to claim legitimation for service provision by nurses in the current economic culture of health care, especially for the purpose of reimbursement.

1．看護診断における概念開発―その哲学的および方法論的考察北原　保世 , 黒江　ゆり子 16巻1号 , 2011年3月 , pp.45-55

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　私は本講演において，看護を実践するなかで看護診断を使用している人々，および看護診断概念の開発に携わっている人々に話すつもりである．これまでの50年間において，私たちは看護サービス提供のための主要な科学的アプローチとして看護過程を受け止め，看護的解決策を必要としているクライエントの問題に目を向けるために看護診断の概念を基本的に受け入れてきた．看護理論家・看護研究者・看護実践者らは，体系的な看護サービスを届けるにはクライエントの問題を同定し，看護アプローチの基盤となる問題リスト（すなわち，看護問題の明確化，看護ニーズリスト，看護診断）に到達するというステップが必要であるという合意をしている．看護診断はまた，現在の保健医療財政において，たとえば償還の目的のために，看護サービスの正当性の主張として政治的に看護実践に組み込まれてきている．

　講演の出発点として，看護診断に関する私の前提と看護診断開発に向けた動きを示したいと思う．

2．Pain Assessment and Implications for Understanding Nursing Assessment 16巻1号 , 2011年3月 , pp.56-67

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　I am delighted to have this opportunity to present my work on pain assessment and share with you my thoughts on nursing assessment. I will proceed with some discussions on pain and pain assessment, followed by a presentation of my views on nursing assessment, and then introduce you into the framework of action science and present our research on pain assessment from this perspective. The last section deals with critical reflective inquiry as a method to improve pain assessment.

　Pain is a major symptom and problem in patients in hospitals and institutions as well as in ordinary people. Research results indicate that more than 50％and in some instances over 80％ of patients in hospitals and nursing homes experience pain sometime during their in-patient stays. I am sure each of you can think of at least one patient whose chief complain was pain among those you cared for during the most recent practice day. Pain has a profound effect on the quality of life and functioning, and can lead to disability and other morbidity. Pain may affect patients' quality of sleep, mobility, eating, emotions such as depression and irritability, and social interactions. Pain in hospitalized patients is likely to influence length of stay, poor recovery, and poor patient outcomes.

2．疼痛アセスメントを基盤に看護アセスメントを考える北原　保世 , 黒江　ゆり子 16巻1号 , 2011年3月 , pp.68-79

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　疼痛アセスメントにかかわる私の研究を紹介し，看護アセスメントに関する考えを皆様と共有する機会をもつことができ，うれしく思う．疼痛と疼痛アセスメントに関する議論を進め，看護アセスメントに関する私見を示し，皆様を行動科学の枠組みに導き，この観点から疼痛アセスメントに関する私たちの研究を示そうと思う．後半では，批判的熟考的探究（critical reflective inquiry: CRI）を疼痛アセスメントの改善方法として取り上げようと思う．

　疼痛は普通の生活を営んでいる人々においても，入院加療を受けている患者や施設に入所している人々にとっても重要な徴候であり問題である．研究結果によれば，入院患者あるいはナーシングホーム入所者の50～80％以上の人々が疼痛を経験するとされている．臨床で皆様が最近ケアをした患者のうちで，主訴が疼痛である人は少なくとも1人は思い浮かべることができると思う．疼痛は身体機能とQOLに大きな影響を及ぼし，障害や死亡へとつながる．疼痛は，睡眠・可動性・食事・抑うつや怒りなどの感情，および社会的相互作用の質に影響を及ぼす．入院患者の疼痛は，入院期間，回復の遅延，およびアウトカムの低さに影響しやすい．

【教育講演】

看護診断のプロセスと間違いやすい看護診断用語江川　隆子 16巻1号 , 2011年3月 , pp.80-81

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はじめに

　看護診断を国家試験問題の範囲に入れるとの声明が出されているが，看護教育の中に看護診断の教育を入れていない学校が多いという現状がある．一方，臨床の現場では，電子カルテの導入やEBN（根拠に基づく看護）が重要視されるなかで，看護診断の重要性がさらに増している．しかしながら，電子カルテに導入した看護診断や看護介入などが適切に機能していない，あるいは使えないという声があるのも事実である．またそのようななかで，看護診断を正しく学びたいという教員や臨床家が増えているのも事実である．

　そこで，ここでは，正しく看護診断を理解せず，アセスメントなしに看護診断をする，また，看護援助（以下，看護治療という）もないままに看護診断を遮二無二行うといったことがないように，「看護診断とは何か」をもう一度熟考するために，いくつかの側面から私見を述べる．

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日本看護診断学会理事会報告，評議員会報告，総会記録 16巻1号 , 2011年3月 , pp.82-92

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総会資料 16巻1号 , 2011年3月 , pp.93-95

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日本看護診断学会会則 16巻1号 , 2011年3月 , pp.96-99

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評議員名簿 16巻1号 , 2011年3月 , pp.100

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2011年度日本看護診断学会研究助成募集要項 16巻1号 , 2011年3月 , pp.101

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日本看護診断学会誌『看護診断』投稿規程 16巻1号 , 2011年3月 , pp.102-103

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投稿論文チェックリスト 16巻1号 , 2011年3月 , pp.104

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編集後記 16巻1号 , 2011年3月 , pp.105

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基本情報

日本看護診断学会誌（看護診断）
16巻1号
(2011年3月発行)

電子版ISSN：2758-643X 印刷版ISSN：1341-3007 日本看護診断学会

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