日本看護診断学会第16回学術大会報告 看護診断と研究・教育・実践―あなたの求めるものをかたちにして
【会長講演】
クロニックイルネスにおける看護学診断と実践・教育・研究
黒江 ゆり子
1
Yuriko Kuroe
1
1岐阜県立看護大学
1Gifu College of Nursing
pp.23-32
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100332
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
はじめに
現代社会に生きる私たちは,医療技術の高度化とともに病気の急性状況を乗り越えることができるようになり,危機的な状況にある数々の生命を救うことも可能になっている.しかしながら,急性状況を脱したのちに,それまでの生活に戻ることができるかと問われると,1人ひとりとその家族においては,身体機能に変化がもたらされるとか長期にわたる病気の管理が必要になるなど,多様な対応が求められている.さらに,日々の生活のなかで繰り返されるさまざまな習慣の集積として発症する疾患も年々増加の一途をたどっている.すなわち,現代においては,病気の慢性状況とともに日々の生活を続けることが日常的に求められるようになっているといえるだろう.
看護診断の概念および看護診断用語は,情報社会の発展に伴い,看護学における共通言語の必要性から1970年代に信念が形となり,1980~1990年代に開花・充実し,2000年代には介入・成果へと発展して今日につながっている.看護診断が大きく発展した1990年代は,保健医療において慢性疾患(chronic disease)から慢性の病い(chronic illness)へと概念転換が提唱された時期でもあり,看護学においてもクロニックイルネスとともにある生活を考えることの重要性に気づき始めた時期である.看護診断の概念が誕生したあとの20~30年間で,病気にかかわる状況も大きく変化しているのである.
このような看護診断の発展経緯を踏まえながら,病気とともにある人生を生きること,およびそれを支える看護学における診断†実践・研究・教育のあり方について考えてみようと思う.
Copyright © 2011, Japan Society of Nursing Diagnosis. All rights reserved.