JIM 6巻7号 (1996年7月)

特集 卒後臨床研修へのアドバイス―総合診療を指向する

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 ■卒後臨床研修については現在大きな見直しがなされようとしている.第1は1989年に厚生省から,「卒後臨床研修目標」(いわゆる到達目標)が出されたこと.第2は研修施設群構想を取り入れた「研修プログラム方式」が1994年から導入されたこと.第3はこれまで努力規定とされてきた卒後臨床研修を必修化しようとする動きがあることである.

学生・研修医へのアドバイス

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 ■卒後2年間の初期研修は,医師としての生涯で最も重要な研修期間である.

 ■初期研修の目的は「患者を全人的に診るための基本的能力を身につけること」である.

 ■初期研修施設は受け身ではなく,研修に適した場を自ら積極的に選ぶべきである.

 ■学生時代に研修を希望する施設を一度は訪ねて,研修への取組み方,研修方法の実際に触れるべきである.

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 ■日本内科学会認定医制度研修力リキュラムで挙げられている項目を参考に,すべての初期研修医が獲得すべき知識・技倆について私案を述べる.

臨床研修のしかた 松村 真司
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 ■わが国の臨床研修は標準化されていない.したがって初期臨床研修の施設によって将来の臨床の実力に大きく差ができる.

 ■多くの人が自分の出身大学で研修を受けるのは大学の研修が優れているからではない.

 ■優れた医師になりたいのなら心理的な圧力に負けずによりよい研修施設を求めるべきである.

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 ■今更ながら卒後臨床研修の必要性を説くまでもないであろう.それほどに臨床研修は必須なのである.しかも,将来どのような医師の道を選択するかどうかにかかわることなく,すべての医師が第一歩として踏み出すべき重要な研修であるとして位置づけることができよう.

指導医へのアドバイス

指導医の役割とノウハウ 伴 信太郎
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 ■卒後臨床研修においては,指導医は,患者さんにとってのメリットと,指導を受けるレジデントが将来よりよい医療を実践できるようになるメリットの双方を考慮しなければならない.

 ■指導医が「aduIt learning」の基本にのっとった臨床教育技法を心得ておくと教育/学習効果が上がるということが研究で示されている.

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■教育とは,単に教えることではなく,学習者の行動を望ましい方向に変容させ,かつそれを習慣づけることであり,教育は習慣形成を以て終了する.

臨床研修の制度の問題点

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 ■わが国の戦後50年間の卒後臨床研修の歩みを振り返るとき,その背景にある幾つかの重要なポイントを忘れることはできない.

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 ■21世紀は先進的な医学・医療技術の発展と相まって,保健と予防・医療の効率化・在宅医療システムの重要性が予想される.来るべき医師過剰時代の訪れも考慮に置くと,臨床研修制度の見直しは,将来を見据えた広い視点に立って計画されるべきであろう.

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 ■到達目標に沿った大学病院と関連研修病院を含めた合同カリキュラムの作成.プログラムは多様性,独自性があり,公開性が必要.指導体制の充実,評価システムの確立,研修医,指導医の処遇の改善が行われるべきである.

ミニアドバイス

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■研修機関からの支払い名目を確認しよう

 ■お金を稼ぐことではなく研修が目的なのでアルバイトは必要最低限に.もちろんそのアルバイトは患者を診療して稼ぐものであってはならない.

 ■学生の頃から貯金で自衛を.

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 ■研修医は臨床医と学習者としての役割を両立させなければならず,ストレスをため込みやすい.

 ■研修医のメンタルヘルスに留意するのは指導医の重要な役割の一つである.

 ■人権をも含めた研修医の労働条件・待遇の改善を確立すべき時にきている.

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 ■チーム医療であなたの役は「管制塔と調整役」.与えられた状況から最善の判断をしなくてはならない.

 ■コメディカルの知識,経験をどんどん学ぼう.医学も医療も常に変化している.

患者さんに対する接し方 林 純
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 ■患者にとって医師は絶対の存在であり,その態度や一言は患者の心理状態に大きな影響を与え,その治療方針は患者の生命をも左右する.したがって,医師は医学だけでなく,人格者となるよう努力するべきである.

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 ■症例プレゼンテーションに熟達するためには,日常診療の中で数多くの症例を実際に提示し,訓練していくしかない.

 ■他人の症例から学ぶためにも,症例プレゼンテーションを職場で活発化させることが重要である.

■"Presenting a case is an art, and as such it can be described only partially and learned only with practice."1)

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 ■記録がトラブルを回避する.医療紛争訴訟は,年間300件弱,累積すると,全国で2,300件も争われている.あなたがたは,これから長い臨床医の道を歩まれ,たぶん「自分だけは訴えられたり紛争に巻き込まれることはない」と信じて日々の仕事を進められることだろう.だが,どれほど熱意があり医療技術が優れていても,患者,家族との対話を繰り返しても,紛争や訴訟が発生する可能性を否定はできない.その時にあなたがたの,医師としての立場を護るものは,診療の記録だけだということを考えてもらいたい.

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 ■自分の能力や勤務する施設の特性をよく把握する.

 ■コンサルテーションが有効に機能するかどうかは,総合診療を指向する研修医の「フットワーク」にかかっている.労を惜しむな.

 ■安易にコンサルトせず,自分でもよく考える習慣を.

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 ■マニュアル本だけ読んでいたのでは,中後期研修での実力の向上は望めない.

 ■疑問を感じたら,文献を検索し,確認すること.

 ■医師にとって,コンピュータは聴診器と同じくらい重要なアイテムになりつつある.

臨終の立ち会い方 藤沼 康樹
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 ■将来どのような専門領域を目指していようと,医師は主治医として,患者の臨終に立ち会う経験を持つべきである.

 ■単なる看取りの手順の習得を越えて,質の高い「臨終」の立ち会いを目指したい.

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 ■初期研修について,学ぶ側と教える側で,現在どのような問題点があって,どうすれば解決,改善できるかについて最近研修を受けた先生方3人と,実際に指導に当たっている2人の指導医にお話し合いいただきました.

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 ここにあげた施設一覧は,日本医学教育学会に設けられた「総合診療ワーキンググループ」(主任:京都大学医学部附属病院総合診療部福井次矢教授)によるアンケート調査結果ならびに総合診療研究会での総合診療部(科)の現況報告を参考に作成した.

 「総合診療研究会会誌」第1巻第1号での研究会設立趣意説明でも述べられているように,総合診療部(科)が設立される大学病院,臨床研修指定病院は年々増加しているが,そのあり方が必ずしも一様ではなく,総合診療に対する周囲の人々の理解を困難にしている状況となっている.その理由として,総合診療部(科)の設立背景が異なること,また,特に大学病院や大病院では専門分化の確固とした診療体制の中で,総合診療に携わる者の思うようには活動できない状況にあることが,総合診療研究会の討議を通して明らかとなった.しかし,「小は個人レベルから大は日本の医療全体が過度の専門診療とテクノロジー偏重に陥る危険性をなんとかしよう」との総合診療の基本理念といっても大きな間違いはない認識のもとに,診療・卒後研修指導・研究にあたる人材がいることは,旧来の医療供給サイドの論理に立つ診療のみを行っている施設とは,卒後研修に対する姿勢にも何らかの違いがあると思われる.

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 ■臨床研修病院が加盟する組織である臨床研修研究会(会長:伊賀六一東京都済生会中央病院院長)は,1994年12月に大学病院を除いた全国の臨床研修病院に対して,卒後臨床研修の義務化に向けてその現状と問題点を探るためのアンケート調査を行った.その結果は既に1995年度の臨床研修研究会で発表されているが,本稿では臨床研修研究会の承諾を得て,その結果の要旨を紹介する.

Key Articles 福井 次矢
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1.今中孝信監修.レジデント初期研修マニュアル,第2版.医学書院,1995

 初版は1989年であるが,1995年末に第2版が出版された.初期研修に必要な心構えと一般知識,基本的診察法,基本的検査法,画像診断法,病棟における基本的手技,基本的治療法,知っておきたい専門的検査・治療法の基本,外科手術と術前・術後管理,救急外来で必要な手技・診察法,小児の診察(救急を含む)などの章立てになっていて,研修医にとって学ぶべき内容が大変よくまとめられている.また,76の臨床上のさまざまなテーマが研修メモとしてちりばめられていて,興味を引く構成となっている.

 個々の項目についてはやや簡潔すぎるものもあるように思うが,本書に記載された内容を全てマスターすれば,立派な臨床医になるための基盤は十分確保されよう.

JIM臨床画像コレクション

サルコイドーシス 宮地 良樹
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 サルコイドーシスは皮膚科領域ではしばしば遭遇する非感染性肉芽腫性疾患である.他臓器ですでに本症を示唆する所見がある場合は,皮膚生検により診断を確定するが,皮疹が初発症状の場合,肉芽腫を思わせる紅色隆起性の結節をみたら本症を想起すべきである.同様の意味で,耐糖能異常を認めることが多いとされる環状肉芽腫,感染症である皮膚結核や皮膚非定型抗酸菌症も鑑別に挙げられる.

 写真は比較的典型的と思われる結節型を示したが,本症にはこのほか,局面型(境界鮮明な,辺縁隆起性の中央萎縮性皮疹が遠心性に拡大する),びまん浸潤型(凍瘡を思わせる腫脹を伴うびまん性紅斑で下床に骨病変を伴うことがある),皮下型(表面皮膚は正常で,皮下に鶏卵大までの結節を多発する)などがあり,珍しい場合には,苔癬様丘疹を多発する苔癬様型,紅皮症型,結節性紅斑様皮疹などが報告されている.瘢痕浸潤は陳旧性瘢痕(膝や肘のすりきずなど)が急速に変化して紅斑や結節を生じるものである.結節型は顔面に多いが,局面型は前額部など,びまん浸潤型,皮下型は四肢などに好発することが多い.

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 ■肺塞栓症の診断はしばしば困難とされているが,前胸部の身体所見(特に触診)と心電図変化で迅速に診断できることも多い.抬起性傍胸骨拍動触知および第2音肺動脈成分の充進と,心電図第1誘導S波および右側前胸部誘導陰性T波が重要である.

トピックス

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 ■ホルモン補充療法(hormone replacement therapy,以下HRT)が昨今なぜ注目されるようになったのか,という問いに対する答えは明快である.それは長寿社会の到来によるものであり,女性の場合,閉経後30~40年間を,女性ホルモンの欠乏状態の下で生きることになる.女性ホルモン,特にエストロゲンの欠乏は,更年期障害や骨粗鬆症などに代表される様々な障害をもたらすことが明らかになりつつあり,こうした障害の治療や予防のために,エストロゲンを主体とする性ホルモンを補充すること,すなわちHRTが極めて有効であることが分かってきた.

目でみる当直医必須テクニック・2

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 胸部外傷に伴う血気胸や自然気胸で,緊急に胸腔ドレーン(chest tube)を挿入しなければならないことはしばしばある.特に緊張性気胸となっている場合には,一刻を争って胸腔ドレーンを挿入しなければ心停止を来してしまう(図1).持続胸腔ドレナージ(tube thoracostomy)は当直を行う上での必須テクニックである.

 内筒のついたトロッカーカテーテルで壁側胸膜を突き破っての挿入方法は危険である.しばしば肺損傷(肺刺創)を起こし,気道内出血から生命に危険が及ぶ.先端が鈍なペアン鉗子で壁側胸膜に穴を空け,愛護的にチューブを挿入する方法を身につけるべきである.

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事例

 大学病院に勤めるA医師は,週1回個人病院で当直(いわゆるアルバイト)を行っている.この当直中の午後9時頃,50歳の男性が受診に訪れた.

漢方診療室

膝関節炎 三瀦 忠道
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 慢性関節痛を漢方的に考えると,塞,水毒,瘀血が主な要素となりうる.このうち水毒と塞はしばしば相伴って出現する.また関節は表裏で考えると表に属する.したがって桂枝や麻黄を含有する方剤が見本となることが多い.

JIM Report

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一般内科は誰が教えるのか?

 千葉大学附属病院での卒後の内科ローテートが開始されてから20年になる.当時上層部の意向で第二内科だけローテートに加えてもらえずに非常に悔しく思ったのを今でも憶えている.現在各地であらゆる科を回るスーパーローテートがよいのか,内科だけのストレート方式がよいのかなど盛んに議論がかわされているが,こうした問題はいつの日も繰り返されるのであろう.医師になるのなら誰でもすべての分野の研修をしたいと考えるであろうし,初めから小外科に入ってしまっては,いわゆる「医師」としての自信がもてないかもしれない.大半の医学生は最低内科と外科の基本ぐらいは修得したいと考えているのではないだろうか.

 一方で限られた期間内にすべてをマスターするのが不可能なのは明らかである.例えば内科の9分野をすべて回るとなると,1つに3カ月としても2年以上かかるし,それに外科や婦人科,小児科まで加えることは現実的には不可能であろう.しかも各3カ月だけではそれぞれの分野をマスターするには程遠い.その有限の重要な期間に何をするかがまた問題である.厚生省の試案は2年間であるが,現実的にはいくつかだけを選択することになる.その後に一般内科を行いながら頻度の高い疾患を経験していけば,いわゆる臨床医になるためには十分と思えるが,問題は多くの教育病院では内科がsubspecialityに分化され,一般内科として研修することが難しくなってきていることである.

総合診療ウォッチング・1【新連載】

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施設の概要

 京都大学医学部附属病院は市内左京区の東大路通りに面していて,上京区にある京都府立医科大学とは鴨川をはさんでほぼ対岸に位置している.明治32年(1899年)に開院の古い病院で,現在の病床数は1,080床,1日平均の外来受診患者数は約1,800名である.

 総合診療部は現教授福井の就任した1994年3月をもって発足したが,実際に診療が開始されたのは外来が同年10月,病棟が同年12月である.1996年1月現在,外来診察室は3部屋,病床は10床が割り当てられている(稼働率により病床数は変動する).教官は教授1,助教授1,講師1,助手1(4月からは1名増員の予定)で,医員が6名,大学院生2名,研修医が6名で1995年度をスタートした.

診療機器ガイド

血液ガス分析装置 木村 光兵
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 ベッドサイドに持ち込んでも測定可能な小型・軽量で,メンテナンス不要の血液ガス分析装置を紹介します.

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 3年前に運転免許を初めて取った.50歳目前で.

 そして挑戦する目標を往診としてみた.「体力の続く限り往診を引き受けてみよう」と考え,この2年間は月に平均60回の往診をしている.

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 運動中の急死の原因となる心血管疾患としては,肥大型心筋症,QT延長症候群,WPW (Wolff-Parkinson-White)症候群,不整脈を生じる右室異形成,冠動脈起始異常などがある.しかしこれらの疾患の多くにおいて,急死の引き金となる病態生理学的機序については少ししかあるいは全く分かっていない.死亡や不必要な運動制限を避け,心血管疾患を有する運動選手の適格性に関する勧告を今日的なものとするため,利用できる最良の情報が使用されてきた.今週号におけるMaronらの報告は,運動中の急死の原因に関するわれわれの知識を広げ,悲劇的な死亡の原因として「心振盪」を認識させた.

 前胸壁に過度の力が加わっていない非穿通性鈍的外傷により,基礎疾患の存在しない心臓に振盪性外傷が生じて致死的心停止を招くことは,広くは認められていない.Maronらの症例では野球のボールあるいはホッケーのパックによる一撃が原因である.運動に関する他の心死亡と異なり,心振盪は通常,基礎心血管疾患のない若年者に発生し,心膜,心筋,冠動脈,大血管に外傷の痕跡を認めない.剖検時に心筋の外傷が存在しないことで,心振盪は心挫傷と鑑別される.

基本情報

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JIM
6巻7号 (1996年7月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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