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若年スポーツ選手における急死
溝渕 和久
1
1今西医院
pp.658-659
発行日 1996年7月15日
Published Date 1996/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901890
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運動中の急死の原因となる心血管疾患としては,肥大型心筋症,QT延長症候群,WPW (Wolff-Parkinson-White)症候群,不整脈を生じる右室異形成,冠動脈起始異常などがある.しかしこれらの疾患の多くにおいて,急死の引き金となる病態生理学的機序については少ししかあるいは全く分かっていない.死亡や不必要な運動制限を避け,心血管疾患を有する運動選手の適格性に関する勧告を今日的なものとするため,利用できる最良の情報が使用されてきた.今週号におけるMaronらの報告は,運動中の急死の原因に関するわれわれの知識を広げ,悲劇的な死亡の原因として「心振盪」を認識させた.
前胸壁に過度の力が加わっていない非穿通性鈍的外傷により,基礎疾患の存在しない心臓に振盪性外傷が生じて致死的心停止を招くことは,広くは認められていない.Maronらの症例では野球のボールあるいはホッケーのパックによる一撃が原因である.運動に関する他の心死亡と異なり,心振盪は通常,基礎心血管疾患のない若年者に発生し,心膜,心筋,冠動脈,大血管に外傷の痕跡を認めない.剖検時に心筋の外傷が存在しないことで,心振盪は心挫傷と鑑別される.
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