JIM 4巻11号 (1994年11月)

特集 高齢者の総合診療

Editorial

高齢者診療の難しさ 高橋 隆一
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 高齢者の診療は,身体的な面ばかりでなく精神的および社会的な面での問題点が多く,それらを包括的に配慮して行わなければいけない,いわば総合診療そのものである.

Key Articles 高橋 隆一
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 高齢者診療に関する書籍はわが国でも少なくなく,大系のような分厚な本から雑誌の特集に及んでいるが,第一線の臨床医に役立つような,総合的かつ具体的な記載をした本は少ない.本特集が企画された理由もその点にある.

高齢患者の診療の基本

高齢患者の診察 宮崎 康
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 ■出会いを大切に.外見にとらわれず生活歴と人となりを理解する.

 ■訴えのみならず,身体・社会的特徴を踏まえ,積極的問診と評価を.

 ■マンネリズムに陥らない,予後判断を大切にしたフォローを.

 ■コ・メディカルとのチームワークで生活の質の向上を図る.

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 ■高齢者の将来を見通して,本当に必要な検査のみ行う.

 ■高齢者は全身臓器の機能低下を来しているので,注意が必要.

 ■得られた結果は本人のために最大限利用する.

高齢患者の薬物療法 三宅 貴夫
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 ■高齢患者の腎機能の低下などに伴う薬物動態の特徴を知る.

 ■高齢患者が服用しやすい処方の工夫をする.

 ■薬物療法の開始後,効果と副作用を定期的にチェックする.

高齢患者の外科治療 窪地 淳
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 ■術前にでき得る限り高齢患者の病状把握に努める.

 ■高齢患者は加齢に伴い生体の予備能が著しく低下し,術後合併症の発生頻度が高いことを念頭に置き,外科治療を行う.

 ■高齢患者の根治およびQOLを考慮した手術適応を決定すべきである.

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 ■高齢患者に対しては廃用性筋力低下,関節拘縮に注目する.

 ■高齢脳卒中患者は自力歩行にならない場合が多く,患者の訓練と並行して家族の介助指導を行う.

 ■高齢患者の退院は早期が望ましいが,地域と連携した家族の受け入れ体制を考慮して決める.

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 ■在宅医療は大きな流れとなっている.

 ■医療と福祉の連携により在宅医療を支えることが重要である.

 ■条件が整えられれば在宅ターミナルケアは可能である.

 ■訪問診療の基本は,患者・家族に安心感を与えることである.

高齢患者の診療のpitfall

転倒 加藤 恒夫
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 ■高齢者の転倒(J1)の原因には,①内因性(疾病),②外因性(環境)(J2),③医原性因子がある.

 ■転倒予防(J3,4)の目標は,できるだけ患者の行動制限を少なくし,心身の自立性を維持することである.

貧血 川西 正廣
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 ■貧血を診療する際,若い人と高齢者で診療のしかたに違いがあるわけではない.しかし高齢者の貧血診療に際しては,きめ細かな配慮が必要である.その具体的な対応を記す.

呼吸困難 佐藤 元美
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 ■呼吸困難を訴える患者が心電図や胸部写真で異常があるとは限らない.また心・肺疾患とも限らない.

 ■高齢男性で喫煙歴があり徐々に進行する労作性呼吸困難では肺気腫を第1に考える.

腰痛 衞藤 公治
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 ■3週間治療に反応しない腰痛は診断の原点に戻るべきである.加齢による変性疾患と少数の重大疾患,悪性腫瘍・結核・骨髄炎・大動脈瘤などとの鑑別が第一歩となる(表1).

 ■変性疾患(図1)による高齢患者の腰痛患者の治療に当たっては,「老化現象だから治りませんよ」は禁句(心身症的要因となりやすい).

体重減少 高見 茂人
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 ■1カ月で1kg以上,6カ月で5kg以上の体重減少は異常である.経時的な体重測定と,「食べたくない(食欲不振)」と「食べられない(摂取不能)」を鑑別することがまず第一歩である.

 ■高齢患者の診療に当たっては,うつ病(薬剤によることも少なくない),悪性腫瘍(特に消化器)を念頭に置く.

 ■まれに典型的症状を伴わない無表情甲状腺機能亢進症(apathetic hyperthyroidism)があるので注意する.

便通異常 立花 一幸
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 ■高齢者の便通異常は,下痢や交替制便通異常に比し,便秘の頻度が非常に高い.便通異常の原因(表1)は多くの病態が考えられるが,大腸癌は常に念頭に入れておくべき疾患であり,直腸診や腹部の入念な触診を怠ってはならない.

 ■慢性疾患治療中の高齢者では,薬剤の副作用(表2)としての便秘や下痢を起こしていることがあり,内服中の薬剤チェックも重要.

腹痛 北守 茂
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 ■腹痛を訴える高齢患者の診療においては,癌の存在を念頭に置いて鑑別診断を進める.

 ■検査・治療では,他の併存疾患(特に循環器系疾患)の有無に十分注意を払う.

 ■急性腹症の場合には迅速に対応する.随伴症状の特徴も併せて病態を的確に把握する.

排尿障害 福井 準之助
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 ■高齢者の排尿障害には尿失禁などの蓄尿障害と排尿困難などの排出障害がある.

 ■排出障害は主として男性に,蓄尿障害は女性にみられる.

 ■高齢者の排尿障害の多くは,複数の基礎疾患が複雑に混じり合っているため症状が複雑でその対応も難しい.また,基礎疾患の根治的治療が困難なことが多いため,対症療法を取らざるを得ないことが多い.

痴呆とせん妄 高玉 真光
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 ■内科外来で,家族に付添われ「物忘れ」を訴えて来院される高齢患者は,アルツハイマー型老年期痴呆として治療を開始する前に,「物忘れ」やせん妄を惹起する疾患を考えてみることが必要である.

不眠 朝長 昭光
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 ■高齢者の不眠の治療に当たっては,薬剤投与より生活面の指導が大切である.

 ■薬剤投与に当たっては,軽い抗不安薬,半減期が短く,筋弛緩作用の弱い睡眠薬を選択し,少量ずつ使用する.

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 「高齢者の総合診療」の特集の締めくくりとして,今月は在宅ケアの対象になっている患者さんを取り上げて,在宅医療の側から高齢者診療の全体の流れを検討します.

忘れられない患者さんに学ぶ

癌の告知について 三上 勝利
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 今からかれこれ20年ほど前になろうか,私が外科医になって数年くらいたったころ,62歳男性の胃癌患者さんを受け持った時のことです.その当時は,胃・十二指腸潰瘍の手術が胃癌のそれよりもはるかに多かったので,術前の説明は本人には胃潰瘍ということにして,家人にはもちろんありのままに説明しました.開腹しましたが,切除不能で閉腹しました.術後10日も過ぎたころ,回診の時,その患者さんは少し改まって,

 「先生,おかげさまで随分良くなりました.ただ少し気になることがあるので,私の話を聞いてもらえませんか.」と切り出しました.話の要旨は,どうも家族の様子がおかしい,ひょっとして悪いものではなかったのかと疑っていること,自分は自営業であるが,多少資産も持っているし,子供も4人いるので,自分にもしものことがあった時には,残された妻を含めて,いさかいが起きないかと心配していること,等々.この話の後で,

総合外来

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 ■臨床医の基本はhistory takingとphysical examinationである.これは,大病院,一般診療所など,診療形態を問わない.

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 ■3症例を挙げ,外国人労働者問題について院内の現場で当面の対策として試みたことを記したい.

総合外来 当直医読本

高齢者にこそ基本を 山城 清二
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 ■高齢社会になり,当直医としても高齢者の急病患者をみる機会が増えています.しかし,若年者と違い複数の既往歴や合併症をもって受診し診断に難渋することが多くみられます.曖昧で複雑な場合にこそ基本的なアプローチが必要となります.

日常診療のOne Point Advice

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■連載に際して

 最近,確信したことは,「多くの企業がバブル経済に翻弄されたように,医療も翻弄された」ということである.「心より物を」という国民の意識変化は,「いつでも,どこでも」たっぷりした量の医療の供給を要求した.企業やメディアも,薬をはじめとする新薬を紹介し続けた.全国の医療機関が,狂ったように増改築し,高額な医療機器を無制限に導入した.その不似合いな巨額な設備投資が終わったころ,バブルははじけた.医療費抑制が重要政策となり,すべての病院は赤字に転落した.死活を賭けて,なりふり構わない検診事業が開始され,病院の中を「金持ちで元気な,ドックのお客様」が横行している.また,大病院の土曜日完全休診が進み,一般の患者は圧排されはじめた.

 これらの状況もあり,昨今「24時間対応してくれる地元のかかりつけ医」という概念が提唱されている.

和漢診療ケーススタディ 主訴からのアプローチ・5

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和漢診療の基本的な考え方

 土佐 今月の症例のように,低体温傾向があり,顔色が青白い,非常に疲れやすいという体の元気がないタイプ,そして冷えっぽく,血圧も低いという人は,漢方的にいうと陰証で虚証のタイプです.また,下痢をしても腹痛を伴わない場合,漢方的には陰証の下痢と言います.

 寺澤 陽証の下痢というと,テネスムスというかしぶりばらが出たり,下痢のあとに肛門の灼熱感が出ることがあります.そうするとこの人は,陰,陽で分けると陰の状態です.したがって,太陰,少陰,厥陰のいずれかで,そして気血の量が衰えている.「気虚の診断基準」(J1)によると,疲れやすいとか下痢傾向があるというとかなり気虚のスコアが高くなります.つまり気虚の状態も伴っています.気血水論でいくと,この症例の場合主訴が下痢で振水音を認めるということで,水の異常,水滞の病態ですね.

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 今週号でKlassenらはブデソニドのネブライザーによる吸入で,軽症から中等症のクループ小児の回復がより速やかであったことを報告した.ウイルス性クループは3歳までの小児に最もよく認められる上気道疾患である.しかしその治療に関してはいまだに論争がある.テント内での加湿空気投与はクループで入院した小児に対するルーチン治療の1つである.この治療により分泌物に湿度を与えて喀出を容易にし,喉頭粘膜の炎症を鎮めて小児がより快適に感じるとされてきた.しかしクループによる声門および声門下浮腫に対する加湿空気の有効性を証明する証拠は少ししかない.いくつかある無作意調査の1つでは加湿空気テントは何ら効果を認めていない.

 ラセミックエピネフリン吸入は急性ウイルス性クループ悪化時の主たる対症療法である.ラセミックエピネフリンはαアドレナリン効果により粘膜の血管収縮を生じ,声門下の炎症による浮腫を軽減するとされている.ラセミックエピネフリン投与により臨床状態は改善され挿管の必要性は減じるように思われるが,その効果は投与後2時間以内に消失する.繰り返して投与する必要がある患者もいる.

リアルタイムの内科診療・最終回

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 知識や技術はだれでも習得できる.しかし観察力や判断力,決定力,すべて力なるものは習得できない.それは養われる.養われる場は正しい方法によるひたすらな実践である。一日も一歩も診療の現実から逸れてはいけない.

Palliative Medicineを日常診療に活用しよう・11

肝不全 持田 智 , 藤原 研司
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 ■感染症,消化管出血など肝不全の増悪因子を除去することが,治療の基本となる.

 ■肝性脳症の治療では,便通管理が最も重要.

 ■過度な蛋白制限は,肝不全を増悪させるのみならず,患者のQOLの面からも留意しなければならない.

イラストレイテッド臨床基本手技

中心静脈確保 松本 明子 , 大滝 純司
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 ■患者のセッティングから道具の準備,手技の手順,不成功時の対応まで一連の流れを念頭に置いて臨む.

 ■手技習得に必要な経験例数=50例.

レジデントのための Clinical Training 書類の書き方・2

病状説明書の書き方 八田 和大
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■保険診療

 わが国では,国民皆保険が達成されて以来,医師は保険診療を抜きにして診療を行えない.

 保険診療とは約束に従った契約診療であり,決められた診療指針に基づかなければならない.決められた枠の中で診療を行うのが原則である.これから外れた医療行為には支払基金から費用は支払われない.

基本情報

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JIM
4巻11号 (1994年11月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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