忘れられない患者さんに学ぶ
癌の告知について
三上 勝利
1
1総合病院京都南病院
pp.967
発行日 1994年11月15日
Published Date 1994/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901325
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今からかれこれ20年ほど前になろうか,私が外科医になって数年くらいたったころ,62歳男性の胃癌患者さんを受け持った時のことです.その当時は,胃・十二指腸潰瘍の手術が胃癌のそれよりもはるかに多かったので,術前の説明は本人には胃潰瘍ということにして,家人にはもちろんありのままに説明しました.開腹しましたが,切除不能で閉腹しました.術後10日も過ぎたころ,回診の時,その患者さんは少し改まって,
「先生,おかげさまで随分良くなりました.ただ少し気になることがあるので,私の話を聞いてもらえませんか.」と切り出しました.話の要旨は,どうも家族の様子がおかしい,ひょっとして悪いものではなかったのかと疑っていること,自分は自営業であるが,多少資産も持っているし,子供も4人いるので,自分にもしものことがあった時には,残された妻を含めて,いさかいが起きないかと心配していること,等々.この話の後で,
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