理学療法ジャーナル 55巻3号 (2021年3月)

特集 重症化予防

EOI(essences of the issue)
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 本邦の理学療法は基本的動作能力の改善を図ることが第一の目的であるが,再発せずに活動し社会参加すること,まさに疾患や障害の重症化を予防することも極めて重要な目的である.本特集では,理学療法士が高い頻度で担当する代表的な疾患や障害における重症化のメカニズム,それに対応した重症化予防の要点や取り組み,理学療法の重症化予防へのエビデンス,対象者自身の行動変容(患者の理解と協力),環境調整などを解説していただいた.予防は理学療法の新しい分野でなく,当たり前の分野である.本特集は,理学療法士が重症化予防に大きな責任を有することを理解していただけるように構成されている.

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健康日本21と重症化予防

 わが国の平均寿命(2019年)は,女性87.45歳,男性81.41歳であり,世界有数の長寿国である.また,65歳以上の高齢者人口は2020年9月15日時点で3617万人で,総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は28.7%と世界一の高齢化率となっている.その結果,社会の高齢化に伴う生活習慣病,認知症,要介護状態の増加などにかかる社会保障費は増加を続け,深刻な社会問題となっている.社会の高齢化や疾病構造の変化が進むなかで,健康で自立して暮らすことができる期間(健康寿命)の延伸を図り,持続可能な社会を維持するためにも,「一次予防」(生活習慣を改善して健康を増進し,生活習慣病等を予防すること),「二次予防」(健康診査等による早期発見・早期治療),そして,「三次予防」(疾病が発症した後,必要な治療を受け,機能の維持・回復を図ること)1)は極めて重要である.

 少子高齢化や疾病構造の変化が進むなかで,生活習慣および社会環境の改善を通じて,子供から高齢者まですべての国民がともに支え合いながら希望や生きがいをもち,ライフステージに応じて,健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し,その結果,社会保障制度が持続可能なものとなるよう,健康増進法(平成14年法律第103号)第7条第1項の規定に基づき,「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」が定められた.平成15年厚生労働省告示第195号をもって告示された基本方針は,平成25(2013)年度に「21世紀における国民健康づくり運動[健康日本21(第2次)]」として見直され現在に至る2)

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Point

●脳卒中の重症化には,再発・disability trajectories・老年症候群が関与している

●重症化予防の中心は再発予防であり,生活習慣管理項目の是正が重要である

●身体活動促進を中心とした理学療法も重症化予防に寄与する可能性がある

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Point

●変形性膝関節症の重症化予防には大腿四頭筋の機能改善が重要となる

●変形性股関節症の重症化予防には脊柱のアライメントと柔軟性に着目するとよい

●関節累積負荷という指標は,治療プランを立案する際だけでなく,患者指導を行う際にも有効である

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Point

●環境支援を強調した活動と参加の促進は,脳性まひ児の運動活動を増加させ,身体的・心理的状態をより健康に導き,その重症化予防につながる

●楽しく,自己効力感が得られる活動への身体的,社会的,心理的かかわりを生態学的視点から評価し,支援することは理学療法士の役割である

●医療的ケアが必要な重度脳性まひ児の参加の継続を支援するうえで,発達過程を考慮した呼吸障害の重症化予防は重要である

フレイルの重症化予防 山田 実
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Point

●フレイルは要介護へと進展する可能性が高い一方で,適切な介入によって改善することが可能とされる

●運動プログラムの実施により,各種身体機能の向上および各種有害健康転帰の抑制効果が期待できる

●運動プログラムの効果を高めるためには,レジスタンス運動を取り入れ,十分な総実施時間の確保が必要となる

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Point

●認知症は近時記憶障害や見当識障害,言語障害,実行機能障害など多彩な症状を呈する疾患であり,認知機能の低下をより早期に発見して適切な対応をとる必要がある

●軽度認知障害の段階では,認知機能が正常範囲へ回復する可能性があり,生活習慣の見直しや運動習慣の構築,脳刺激を目的とした知的活動,二重課題トレーニングなどの取り組みが有効である

●認知症の重症化予防には,認知症患者への対応だけでなく,家族や介護者,医療介護関係者の接し方の工夫,環境調整などが重要である

慢性呼吸不全の重症化予防 瀬崎 学
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Point

●慢性閉塞性肺疾患においては,増悪と呼ばれる疾患が急速に悪化する病態が重症化の鍵を握る

●重症化予防に対する薬物療法・非薬物療法のエビデンスは日々更新されており,呼吸リハビリテーションも大きな役割を担っている

●対象者自身による行動変容を目的としたセルフマネジメント教育が注目されており,チームの一員として理学療法士による介入も求められている

慢性心不全の重症化予防 猪熊 正美
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Point

●慢性心不全の重症化のメカニズムを知る

●急性期や心臓リハビリテーションでの重症化予防を知る

●遠隔での疾病管理(重要化予防)の取り組みを知る

糖尿病腎症の重症化予防 平木 幸治
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Point

●透析導入に至る原疾患は糖尿病腎症が最も多いことから全国規模で糖尿病腎症の重症化予防プログラムが行われている

●最近のメタアナリシス結果より,慢性腎臓病患者における運動療法により腎機能が改善することが示されている

●糖尿病腎症患者の運動療法は診療報酬の問題から在宅で患者が主体となって実施,継続できる内容を指導する必要がある

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Point

●包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の病態は虚血だけでなく感染や創傷により肢切断につながる

●CLTIでは重症度の指標としてWIfI分類が使用されている

●CLTIに対する理学療法は重症度に合わせたリスク管理を行いながら実施する

Close-up 特発性正常圧水頭症を知る

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はじめに

 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus:NPH)は,歩行障害,認知障害,排尿障害を三主徴とする進行性の疾患である.脳脊髄液の吸収障害に起因し,シャント手術によって症状の改善が得られる.正常圧水頭症は原因が明らかな二次性正常圧水頭症(secondary NPH:sNPH)と,原因が不明の特発性正常圧水頭症(idiopathic NPH:iNPH)に分類される.sNPHはくも膜下出血や髄膜炎を原因として発症するので診断は比較的容易である.一方,iNPHは緩徐に進行する疾患であり,同様に緩徐に進行するその他の変性疾患などとの鑑別が治療の面からも重要である.

 日本正常圧水頭症学会では,多施設共同研究としてこれまで2つの臨床研究を行ってきた.Study of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus on Neurological Improvement(SINPHONI)研究では,MRIでのiNPH診断の妥当性について1),SINPHONI-2研究では腰部くも膜下腔腹腔シャント術(Lumbo-peritoneal shunt:L-P shunt)の有効性について2)である.また,iNPHの診療ガイドライン第1版を2004年3),第2版を2011年4),そして第3版を2020年5)に発刊している.

 本稿では,iNPHの診断と治療について解説し,これまでに発刊された診療ガイドラインとSINPHONI研究について述べる.

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はじめに

 特発性正常圧水頭症のリハビリテーションでは,さまざまな心身合併症をもつ高齢者が対象となるため,「全人的な情報収集」に基づき,リハビリテーション阻害要因に向き合うことが求められる.「全人的な情報収集」の手法として「高齢者総合的機能評価」を用いることで問題点を整理して治療計画を立てやすくなると思われるので,活用をお勧めする.

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 本稿では特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)の臨床症候のうち,理学療法と関係が深い歩行障害,バランス障害,転倒について,先行研究やガイドライン,われわれの研究成果も交えながら解説するとともに,脳脊髄液排出試験やシャント術前後における理学療法評価のポイントについて解説する.

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特発性正常圧水頭症の特徴的な歩行障害と理学療法

 特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)の歩行障害は,ふらつきの自覚から始まることが多く,すり足,小刻み歩行,開脚歩行,すくみ足などの特徴的な歩容を呈し,転倒しやすくなることが知られている.また,これらの歩行障害は発症初期から出現するバランス障害と,失行性・失調性とも呼ばれる運動障害が互いに関係している.歩行障害が進行して,あまり歩かなくなり,下肢の筋力低下が増悪してから診断されて,手術を受ける患者も少なくない.下肢筋力低下を伴う重症の歩行障害を有する患者は,術後短期間で退院しても歩行に介助が必要であり,在宅生活が困難となることが予想される.

 そのため,理学療法を実施する際には,患者個々の病的歩容,バランス障害,下肢筋力低下の重症度を評価したうえで,患者の障害に合わせた課題指向型トレーニングが有効と考えている.シャント術後の課題指向型トレーニングでは,術後の状態に留意しながらも,早期から積極的に患者の歩行障害に合わせた課題の反復練習をできるだけ多く実施して課題を克服する.反復回数が多ければ多いほど課題を習得しやすい.

連載 とびら

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 「歩くことは体によい」ということは知っていても,「どれくらいの速度で」,「どれくらいの頻度で」,「どれくらいの時間行えば」,「どんな効果が得られるのか」という疑問については,なかなか答えられないのではないでしょうか?

 私は,体育学部で4年,理学療法士養成校で3年,「体力」のことについて学び,健康増進施設,病院,診療所でリハビリテーションの仕事に従事してきましたが,この質問には明快に答えられませんでした.

連載 目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・8

AMRを知ろう 森本 ゆふ , 高橋 哲也
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Question 1. 何も対策をとらない場合,2050年までに,2013年のがんの死亡率を超えると考えられている世界的な健康問題は何でしょう?

連載 再考します 臨床の素朴な疑問・第3回

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はじめに

 膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)再建術後の最大のリスクは,移植した再建靱帯の再断裂である.Wigginsら1)のシステマティックレビューによると,ACL再建術後の再断裂率は全体では7%,25歳以下のスポーツ復帰したアスリートに限定すると11%であった.関東労災病院で2010年1月〜2018年12月の9年間で3,173件の半腱様筋による二重束再建術(初回片側)を行い,術後10か月以上のフォローが可能であった2,423症例(follow-up rate 76.4%)の調査では,同側の再断裂を生じた症例は134名,再断裂率は5.53%であった.

 このように,ACL再建術後に再断裂予防を含むリハビリテーションが行われているにもかかわらず,一定の割合で再断裂が生じている.当然ながら再断裂率は調査時の状況によって異なり,フォローアップ率が高く,追跡期間が長くなるほど再断裂率は高くなる.なお,本稿で述べる再断裂とは,再建靱帯が再び断裂してしまうことであり,対側のACL損傷は含まない.

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臨床実習のあるべき姿

 医学教育における知識偏重型の問題が指摘され,臨床実践能力を高める評価指標の整備と臨床教育のありかたが見直されてきた.この医学教育の潮流を変えた概念にMillerのピラミッド註1,1)があり,臨床で求められる認知から行動への過程が示されている.この概念はさらに発展しエキスパートに求められる知識や技術に態度が加えられたMillerのプリズムとして表され2),医学生の行動規範を示すモデルとなっている.

 理学療法領域の臨床実習形態は,この医学教育の潮流を受けてシステム整備が進められ,診療参加型臨床実習(clinical clerkship system:CCS)の実践が推奨されている.CCSは,指導者の診療に付き添いながら医療全体の流れを把握し,許可された医療行為を実践するもので,助手的にかかわりながら患者の病態把握のための検査と診断,そして治療手技の選択から実践に至る臨床推論と意思決定の流れを学ぶものである.また,医療従事者としての立ち振る舞いを習得し,専門職に求められるチーム内の役割を理解する機会を得る.

連載 国試から読み解く・第15巻

人工呼吸管理を理解する 正保 哲
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 人工呼吸器のモニターに示される気道内圧と肺気量位を図に示す.

 理学療法前後で図のような変化が見られた場合,呼吸器系に生じた変化として考えられるのはどれか.

連載 臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント—これだけは押さえておこう!・12【最終回】

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はじめに

 「この患者さんの担当をお願いします」と上腕骨近位端骨折患者の担当になったとき,まず何をするべきでしょうか.担当医師からの処方内容を確認すれば,患者さんと向き合っていくだけでよいのか.クリニカルパスやプロトコールに従って理学療法を進めるだけでよいのか.指示や決まりごとに従うだけでは,患者個人に合った最良の理学療法は提供できません.理学療法士は患者個人の症候学に準拠した治療者ということを忘れてはならないのです.

 症候とは患者が自覚的に感じる“症状”と他者が客観的に捉える“徴候”の短縮語です1).整形外科医は患者の病状を診断学に準拠して治療(手術や投薬)を展開しますが,理学療法士は患者固有の症候を把握して治療(運動療法)を展開していきます.つまり,理学療法はクリニカルパスなど定型的な治療の流れに準拠しながらも患者個人の症候から病態を解釈してオーダーメイドの治療を展開していくのです.そのため,理学療法士には多角的な視点が必要となります.本稿では上腕骨近位端骨折患者の診方を中心に,担当してから目標を決めるまでの流れ(図1)を合わせて紹介していきます.

連載 私のターニングポイント・第15回

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 私が物心ついたときには,ホテルで料理長として働く父がいました.父の働いている姿が見たくて,ホテルの裏口から厨房に入りこみ,父の仕事を邪魔しながら度々のぞいていました.そこには,資格を取得したうえで日々努力と研鑽に励み,チームで声を掛け・助け合い,目の前のお客様に“おいしい”と思ってもらうため,幸せや喜びを感じてもらうために,一皿一皿に想いを込めて仕事をするプロの姿がありました.その中心で働く父に憧れ,いつか自分も人のために技術を磨く仕事につきたいと思っていました.

 そんな想いのなか,高校1年のときに骨折をして理学療法士と出会い,理学療法士になりました.最初に就職した病院では初台リハビリテーション病院の理事長であり,現・会長である石川 誠氏が定期的に講演をしてくださっていました.ネアンデルタール人が障害をもった仲間と共同生活をしていたことや,仲間が亡くなったときには悲しみ花を手向けたという歴史にノーマライゼーションの精神.機能や能力・参加など机上の目標を見るのではなく,その人らしさの回復にリハビリテーションがあること.そんな熱い想いに触れ,当時石川氏が開設されたばかりの病院に見学に行きました.そこには建物やその構造,出てくる料理や教育システムまで,いたる所に法人の理念が現実として表現されていることに衝撃を受けました.さらに,そこで働く人たちの表情や接し方から,いつか憧れたプロの姿を思い出し,見学に行った帰り道,感動冷めやらぬなか,地元名古屋を離れ千葉県にある現在の職場に入職することを決意しました.

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 昨今,理学療法士の質の向上の重要性や職場内教育の必要性が指摘されている.また,国民からの理学療法士へのニーズも多様化している.これらに対応するために,日本理学療法士協会(以下,協会)は,1994年から開始した生涯学習制度を2022年度に一新する.

 新生涯学習制度では,卒後5年間を義務教育的な位置づけとし,多様な障害像に対応できる能力を有する「ジェネラリスト」育成を行う.修了者には「登録理学療法士」の称号を付与し,さらにそれを5年ごとに更新する生涯学習を明確化した.これにより,生涯にわたる知識・技術の維持と更新を促進し,社会に対する理学療法士の質の担保の証とする.

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要旨 【目的】人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)後の膝屈曲可動域と膝蓋骨位置や膝蓋大腿関節裂隙間距離との関連についての報告は,筆者らが渉猟し得た限り見あたらない.本研究の目的は,膝屈曲可動域と膝蓋骨位置および膝蓋大腿関節裂隙間距離の関係性について検討することである.【対象と方法】対象は後十字靱帯温存(cruciate retaining:CR)型TKA後理学療法が施行された症例71例82膝とした.検討項目はBody Mass Index,術後3か月時の膝屈曲可動域,コンポーネント設置角度,大腿骨後顆の厚さ,joint line,Insall Salvati ratio,膝蓋骨傾斜角度,外側裂隙間距離,内側裂隙間距離とした.【結果】膝屈曲可動域は不良群が112.9±6.9°,良好群が131.0±6.0°と有意に良好群が高値を示した(p<0.01).膝蓋骨傾斜角度は,良好群に対して不良群は有意に高値を示した(p<0.01).外側裂隙間距離は,良好群に対して不良群は有意に低値を示した(p<0.01).内側裂隙間距離は2群間に有意差はなかった(p=0.78).膝屈曲可動域が低値を示すほど,膝蓋骨の外側傾斜は増大し外側裂隙間距離は狭小していた.【結語】膝屈曲可動域の制限因子として,水平面上における膝蓋骨の外旋拘縮が一要因となると考えられた.

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要旨 POEMS症候群に罹患し右腸骨骨髄腫のため下肢荷重が困難であった症例を経験した.POEMS症候群は多様な症状を示すため画一的なリハビリテーションはなく,装具療法やADL動作練習など代償的なリハビリテーションが行われてきた.近年,自己末梢血幹細胞移植を行うことで症状の改善が報告されているが,復職まで至った症例の報告は少ない.本症例に対しては,治療経過や全身状態を考慮しながら,末梢神経障害による過用性筋力低下に留意しつつ筋力増強練習や歩行練習を行ったことで,徐々に筋力の改善を認め歩行能力が向上した.また,長期間免荷されていた右下肢に対して,立脚期の筋活動を考慮した理学療法を行ったことで杖なし歩行が自立し,復職に至った.POEMS症候群は病態が複雑であり,予後の推察が容易ではない.そのため,集学的治療体制での治療と理学療法を行っていく必要がある.

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要旨 【目的】大腿切断術後の骨肉腫患者に対する化学療法中のレジスタンストレーニングにより筋力向上が得られ,義足歩行を獲得した症例について報告する.【症例】16歳男性.右大腿骨遠位骨肉腫の診断となり,化学療法と外科的治療を合わせた集学的治療が開始となった.術前に病的骨折を発症し,長下肢ギプスによる外固定となった.右大腿切断術後の化学療法終了後,局所再発および遠隔転移はなく自宅退院となった.【理学療法経過】術前は,活動量が大幅に減少し筋量・筋力が低下した状態であった.術後化学療法中および化学療法終了後は義足歩行獲得のため下肢・体幹の筋力強化を図った.継続したレジスタンストレーニングを実施することで筋力の向上,歩行速度の増加が得られ,ADLが自立した.【考察】化学療法中における継続したレジスタンストレーニングは筋力を増大させ,義足歩行獲得に貢献すると考えられた.

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●初のWeb開催

 第18回日本神経理学療法学術大会が「2020年のシュプレヒコール—理学療法における意思決定」という大会テーマのもと,COVID-19の感染拡大防止のためウェブ開催されました.

 大会長の大畑光司先生(京都大学)の挨拶から始まったこの大会は,特別講演5講演,大会長基調講演,教育講演2演題,シンポジウム5セッション,国際シンポジウム,一般演題発表と,通常の学会同様に内容の濃い学会となりました.

臨床のコツ・私の裏ワザ

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触診による股関節回旋アライメントの評価

 立位の股関節のアライメント(寛骨臼と大腿骨頭の位置関係)を評価することは,関節に加わるメカニカルストレスや股関節周囲の筋張力を考察することに役立つ.とりわけ股関節回旋アライメントの評価では,どこに基準を設定するかが重要だと感じている.そのため本稿では骨盤位置と大転子の位置関係を触診し,左右の相対的な回旋アライメントを評価する方法について紹介する.

 股関節幅で立位をとり,後方から上前腸骨棘と上後腸骨棘を触診して,寛骨が前方に偏位している側を確認して骨盤回旋を評価する.次に左右の大転子を触診し,大腿骨頭の位置を推定する(大腿骨頭は大腿遠位部に対して前方に約15°捻れているため,大転子は大腿骨頭の後方にある).骨盤と大転子の位置関係から,相対的な左右の回旋アライメントを評価する.図1aの場合は,骨盤は左回旋位,左右大転子を結んだラインは進行方向に対して垂直に位置しているため,右股関節外旋位・左股関節内旋位と判断する.図1bの場合は,骨盤は左回旋位,左右大転子を結んだラインも左回旋位に位置しているため,右股関節内旋位・左股関節外旋位と判断する.

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 私が就職した時代,動作解析装置などの客観的な評価ができる機器は高価で計測の手間もかかり,臨床現場で用いることはほとんどなかった.そのような機器は,臨床現場で使用するというより,研究者がデータを取るために用いるものというイメージが先行していた.そのため,臨床現場においては,動作分析などの多少の主観的な内容を含む評価のみとなり,その解釈に苦しむことが多々あった.しかし近年,安価で容易に計測可能な評価機器が多く開発され,臨床現場においても使用される機会が増えつつあり,使用している施設では科学的根拠に基づいたリハビリテーションを実施するうえで,必要不可欠なものとなった.

 その1つに表面筋電図が挙げられる.表面筋電図は安価に容易に計測できるようになり,かつては動作分析を行い筋活動を推測するという主観的な方法に頼っていた動作時の筋活動が,どのような動作を行ったときに,どこの筋が活動しているかという客観的評価が容易にわかるようになった.客観的評価が可能になったことで,問題点の具体化,それをもとにしてアプローチ方法の見直しなどを行うことが可能になり,より効果のあるリハビリテーションを実践するには必要不可欠なものとなった.しかし,表面筋電図を臨床現場で使用するにあたり,使用方法や解析方法など,使用したことのない人にとってはある種のアレルギーのように感じてしまい,その入り口が狭くなっているのも事実である.

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目次

文献抄録

バックナンバー・次号予告のお知らせ

編集後記 高橋 哲也
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 理学療法ジャーナル第55巻第3号をお届けします.

 新型コロナウイルス感染症は社会に大きな影響を及ぼし続けています.政府は2月2日,発令中の緊急事態宣言を10都府県で3月7日まで延長することを決定しました.新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち,高齢者と基礎疾患のある方は「重症化しやすい」として注意が必要とされたことから,「重症化予防」という言葉が広く一般にも広がりました.重症化のリスクとなる基礎疾患には,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓病,糖尿病,高血圧,心血管疾患,肥満が指摘されており,どれも理学療法の対象疾患です.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
55巻3号 (2021年3月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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