耳鼻咽喉科・頭頸部外科 76巻8号 (2004年7月)

特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている―

4.下咽頭癌の治療―切除範囲と再建―

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I.はじめに

 下咽頭癌手術症例では,治療成績の蓄積と再建方法の確立により術後のQOLを重視した切除,再建が求められる。下咽頭癌手術は,下咽頭全摘,亜全摘,部分切除とその切除範囲,切除方法により様々な皮弁の選択や再建が行われている。下咽頭部分切除術は喉頭機能を温存し気道発声が可能であるが,さらには術後の嚥下障害の生じない,摂食可能となる再建が求められる。

 下咽頭部分切除例の中でも下咽頭部分切除・喉頭半切除術は切除範囲が大きく,欠損の形態は複雑である。切除範囲は,喉頭部分として患側の披裂間切痕から披裂喉頭蓋ヒダ,声帯,甲状軟骨,腫瘍の広がりによっては輪状軟骨の切除が行われる。下咽頭部分としては梨状陥凹の粘膜が,喉頭側から咽頭側にかけ,上下方向には腫瘍の広がりによって食道入口部から舌根側にかけて欠損が生じる。その切除範囲は三次元的で広範囲にわたり,再建を行ううえでもその解剖学的な再構築の理解が必要となる(図1)。われわれは皮弁の選択として,欠損の三次元的な再現が可能で,喉頭腔に粘液の流入の生じない前腕皮弁を用いて再建を行っている。

 下咽頭部分切除・喉頭半切除術は,喉頭機能を温存できる術式として今後その術式の確立が期待される。われわれの施設では2002年2月~2003年6月の間,下咽頭部分切除・喉頭半切除例9例を経験したのでその再建方法について考察した。

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I.はじめに

 下咽頭癌切除後の再建は,DP皮弁や局所皮弁(door flap)による二期的再建から,微小血管吻合の技術を用いた遊離組織による一期的再建へと発展してきた。また,再建組織として様々なものが使用されている。近年では,QOLの向上や機能温存を目指した治療が積極的に行われ,下咽頭癌に対しても,その適応や安全性についての報告1~3)がなされている。今後のさらなる発展のためには,術後の機能評価が不可欠かつ重要な課題である。

 本稿では,主に下咽頭癌切除後の再建法と術後の嚥下機能について,自験例をもとに,喉頭温存した場合と摘出した場合に分けて述べる。

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I.はじめに

 下咽頭癌は早期発見が難しく頭頸部癌の中でも予後が悪い疾患であり,食道癌との合併率が高いことが知られている。林ら1)は,国立がんセンター中央病院および東病院頭頸科において,原発巣切除術を行った下咽頭癌未治療例120例中17例(14%)に食道癌を認めたと報告している。また吉積ら2)は,下咽頭癌手術症例における胸部食道癌合併率が,同時・異時合わせて6%であったと報告している。

 近年では,下咽頭癌の患者に対してルゴール液塗布による術前食道内視鏡スクリーニング検査がルーチン化され,早期食道癌の発見率が上昇してきた。合併する食道癌に対する治療としては,内視鏡的粘膜切除(EMR),非開胸食道全摘(食道抜去),開胸食道全摘などが行われている。食道癌が粘膜内癌であればEMRで治癒できる可能性は高く,下咽頭癌に対する再建のみで食道癌の再建は必要としない。しかし,食道癌が粘膜を超えて浸潤している場合は,下咽頭喉頭頸部食道切除術(以下,咽喉食摘術と略す)に加えて食道を全摘することになり,下咽頭から全食道の再建が必要になる。下咽頭・頸部食道癌に対する標準的な咽喉食摘術後の再建術式としては,現在では遊離空腸移植術が主流である3,4)。一方,胸部食道癌に対する再建術式では,胃管,大腸,小腸による再建が症例に応じて用いられているが,これら単独では咽頭喉頭食道全摘出術後の長大な欠損に対する再建は難しく,再建できたとしても再建食道末梢の血行が不安定で,部分壊死や瘻孔形成を生じる危険性が高いため,再建にも工夫が必要である。

 本稿では,癌の発生部位や浸潤度に対する適切な切除術式やリンパ節郭清については成書に譲ることとし,下咽頭・頸部食道と上部消化管との重複癌の切除後に生じた消化管の欠損に対してわれわれが行っている再建方法について述べたい。

5.放射線治療後再発喉頭癌の治療指針―フォローアップと手術の適応―

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I.はじめに

 喉頭癌は中年以降の男性に好発する疾患で,本人のみならず社会的にも重大な損失を招く。また,喉頭は嚥下,呼吸の機能を有し,個体の生命維持装置としても重要であるばかりでなく,発声という機能もあり,社会生活を円滑に遂行するにも重要な臓器であるといえる。したがって,喉頭を失うことは以後のQOLに重大な影響をもつ。その観点から,喉頭癌の早期発見は治療に際して機能温存の治療法の選択肢を残すことが重要である。その機能温存の治療法は,手術であるならば少しでも機能温存を考慮する方法が取られる。例えば,喉頭内視鏡下のレーザー蒸散,部分切除,亜全摘である。一方,放射線治療は喉頭の機能をほぼ完全に温存できるという観点から好まれることもある。10~20年後の放射線誘発癌の問題があるが,比較的高齢者に選べばよい治療法といえる。どのような治療法を取ったとしても,経過観察のポイントは早期に再発を発見することである。早期発見のポイントの1つは喉頭内視鏡検査にあるが,手術的治療法と違って放射線治療後の喉頭には声帯という臓器が完全に存在しているということである。したがって,放射線治療後の声帯粘膜の性状の変化を踏まえたうえでの内視鏡的な経過観察が重要になる。そのほか主に頸部のリンパの腫大,遠隔転移に対する配慮などが必用になる。

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I.はじめに

 喉頭癌放射線治療後の再発癌に対しての基本的治療方針は,安全で確実に根治が望める治療方法である。したがって,喉頭全摘出術が最も推奨される治療方法である。その理由に,安全な手術術式で根治性が高いことが挙げられる。しかし,そこに機能温存をどう考えるかという問題があり,実際多くの患者は機能温存を希望している。再発時進行癌であれば,喉頭全摘出術以外に根治を期待できる治療法はない。再発癌が早期に発見できて治療を行うことができれば,機能を温存することが可能であることはいうまでもない。いかに効果的にかつ確実に早く放射線根治照射後の再発癌をみつけ出すかによる。そのためにはより効果的なフォローアップが必要となる。

3)部分切除の適応 浅井 昌大
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I.はじめに

 喉頭癌は予後の良好な疾患であり,特に早期癌は生存率は良好なために治療後のQOLを考慮した治療法が選択される。適応に制限が少ないことから,一般的には放射線療法が選択されることが多いが,残念ながらその制御率は声門型のT1aであっても90%前後であり,常に再発を生じることを覚悟しておく必要がある。

 再発に対する治療法としては外科的治療法に限られるが,その状況に応じて喉頭全摘,喉頭部分切除,レーザー蒸散が選択される。あとの2者は,音声が保存されるため患者側からの希望が大きいが,適応に制限があるため十分な検査とインフォームド・コンセントを必要とする。

 以下,その適応と実際の手術術式における留意点について述べる。

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 光線力学的治療(photodynamic therapy:PDT)は,海外では頭頸部癌に使用した報告が散見されるが1~3),本邦ではまだ保険適用がないため,ほとんど使用されていない。

 今回われわれは,喉頭癌の患者に使用し良好な結果を得たので報告する。

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I.はじめに

 1980年代に入って慢性副鼻腔炎の鼻内経由の手術法に内視鏡が積極的に導入され,内視鏡的副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)として確立された1)。従来の肉眼視による鼻内手術に比較して,手術の正確度,安全性に向上が認められ,現在標準的手術として国内外で普及している。さらに,鼻腔および副鼻腔の微細な観察が可能となったことによって,種々の鼻・副鼻腔疾患においても応用されるようになった。

 本稿では慢性副鼻腔炎に加えて,現在まで報告されているESSの種々の疾患への適応について論じる。さらに,コンピュータやIT(情報技術)の進歩によってESSの適応がさらに拡大する可能性があり,近未来のESSの方向についても論じる。

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I.はじめに

 Ramsay Hunt症候群(以下,Hunt症候群と略)は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:以下VZVと略す)の再活性化に起因する外耳道や耳介周辺の帯状疱疹,同側の末梢性顔面神経麻痺と同側の内耳障害を3主徴とする症候群である。3主徴のいずれかを欠く不全型Hunt症候群がある一方,稀に第Ⅶ,Ⅷ脳神経以外の脳神経症状を呈することが知られており,その多くは下位脳神経障害である1~3)

 今回われわれは,右の第Ⅴ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・XI・XII脳神経障害を呈したHunt症候群の1例を経験した。本症例のごとく多発性に脳神経障害を呈した症例は極めて珍しく,多発性脳神経障害を呈したHunt症候群の発生機序を考えるうえで示唆に富む症例と考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 頭頸部に発生する囊胞性疾患には貯留囊胞,皮膚囊胞,鰓原性囊胞などがあり1),耳鼻咽喉科医が比較的遭遇することの多い疾患である。鰓原性囊胞は第一~四までの鰓性器官由来の囊胞で,いずれの鰓性器官からも発生するが,日常臨床上最も頻度が高いものは側頸部に発生する側頸囊胞である2)。これに対して,喉頭に発生した鰓原性囊胞の報告は非常に少ない3)

 今回われわれは,披裂部に発生した鰓原性囊胞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 口唇癌の日本における発生頻度は欧米諸国に比べて低いとされる1~3)。口唇癌の治療としては手術が選択されることが多いが,機能上,美容上の問題を多く含む。

 今回われわれはdouble Abbe flapを用いて再建を行い,良好な術後経過を得られた下口唇扁平上皮癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

⑦顎下腺良性腫瘍摘出術 鈴鹿 有子
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I.はじめに

 内視鏡手術に代表される低侵襲手術などの医療技術の進歩だけでなく,術後管理方法の向上や簡素化なども日帰り手術や短期入院手術を可能にさせている。しかし,全てがそれに当てはまるものではなく,悪性腫瘍性疾患やリハビリテーションが必要なものでは従来どおりに長期入院は避けられない。一方,患者の立場においても全身麻酔下での痛みのない手術,術後しばらくの安静加療,入院管理は望むところでもある。手術法のみならず創部の固定方法や新材料の開発により術部管理も簡便化へと進歩する中,もしかの場合の当直医や主治医待機の体制も整えられていることを含めた医療チームの充実,また患者サイドにおいても自己管理を徹底するなどで無駄な入院は減らして,少しでも期間の短縮を図る努力はお互いに惜しんではならない。

 本稿では,顎下腺良性腫瘍摘出術に準じた疾患について考えてみるが,日帰り手術・短期入院手術に適さないとの意見もある。

鏡下咡語

言語聴覚士とその国家試験 廣瀬 肇
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 耳鼻咽喉科の領域で,言語聴覚士と協力しながら診療を進める機関が徐々に増えつつあり,日本耳鼻咽喉科学会でも言語聴覚士の問題がしばしば取り上げられ会員の関心も高まりつつある現状と考えられる。筆者は言語聴覚士資格制度の発足に直接,間接に関与してきたので,現況の一端をあらためて紹介してみたい。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
76巻8号 (2004年7月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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