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I.はじめに
下咽頭癌は早期発見が難しく頭頸部癌の中でも予後が悪い疾患であり,食道癌との合併率が高いことが知られている。林ら1)は,国立がんセンター中央病院および東病院頭頸科において,原発巣切除術を行った下咽頭癌未治療例120例中17例(14%)に食道癌を認めたと報告している。また吉積ら2)は,下咽頭癌手術症例における胸部食道癌合併率が,同時・異時合わせて6%であったと報告している。
近年では,下咽頭癌の患者に対してルゴール液塗布による術前食道内視鏡スクリーニング検査がルーチン化され,早期食道癌の発見率が上昇してきた。合併する食道癌に対する治療としては,内視鏡的粘膜切除(EMR),非開胸食道全摘(食道抜去),開胸食道全摘などが行われている。食道癌が粘膜内癌であればEMRで治癒できる可能性は高く,下咽頭癌に対する再建のみで食道癌の再建は必要としない。しかし,食道癌が粘膜を超えて浸潤している場合は,下咽頭喉頭頸部食道切除術(以下,咽喉食摘術と略す)に加えて食道を全摘することになり,下咽頭から全食道の再建が必要になる。下咽頭・頸部食道癌に対する標準的な咽喉食摘術後の再建術式としては,現在では遊離空腸移植術が主流である3,4)。一方,胸部食道癌に対する再建術式では,胃管,大腸,小腸による再建が症例に応じて用いられているが,これら単独では咽頭喉頭食道全摘出術後の長大な欠損に対する再建は難しく,再建できたとしても再建食道末梢の血行が不安定で,部分壊死や瘻孔形成を生じる危険性が高いため,再建にも工夫が必要である。
本稿では,癌の発生部位や浸潤度に対する適切な切除術式やリンパ節郭清については成書に譲ることとし,下咽頭・頸部食道と上部消化管との重複癌の切除後に生じた消化管の欠損に対してわれわれが行っている再建方法について述べたい。
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