臨床整形外科 30巻3号 (1995年3月)

シンポジウム 膝関節のUnicompartmental Arthroplasty

緒言 腰野 富久
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 膝関節のunicompartmental arthroplasty (単顆片側置換術)は,整形外科手術の中で最も誤解されている手術手技の一つである.開発は比較的早く,1967年頃より脛骨板がRA,OAに使われはじめ,Gunstonが初期のTKRを発表しはじめた頃にさかのぼる.Marmorのmodular kneeは完成品としては最も早いunicompartmentalarthroplasty用人工関節で,その当時は米国をはじめ世界中で使われていた.その後色々と改良が加えられて,種々の特徴ある種類の膝単顆片側置換用人工関節が出回って現在に至っている.

 歴史的に誤解されてきた理由は大別して三つに分けられる.

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 抄録:変形性膝関節症(OA)に対する手術療法の中での,人工膝関節片側置換術(UKA)の果たす役割,あるいはUKAの占める位置付けについて探るために,日本膝関節研究会会員に対するアンケート調査により,わが国におけるOAに対する手術療法の現状を調査した.

 過去2年間のOAに対する手術療法の内訳は,TKA 42%,HTO 22%,UKA 5%,その他31%であった.UKAの経験の有無に関しては,全く経験がない54%,行っている31%,以前は行っていたが何らかの理由でやめた15%であった.また,UKAの利点および改善すべき点についてのアンケート調査より,UKAに関しては現在,適応,術後のalignmentの設定,長期成績,およびbiomechanicalな解明などが問題となっていることが明らかとなった.これらに対しての文献的な考察を行った.

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 抄録:本邦の変形性膝関節症においては,内側大腿・脛骨関節に病変を有し,外側は正常に保たれた内側型変形性膝関節症がその大部分を占める.このため膝関節を温存する高位脛骨骨切り術あるいは侵襲の少ない単顆片側置換術の手術法が選択される,内側型変形性膝関節症に対する両手術法の適応の差を患者自身の要件と局所である膝の要件に分けて検討した.患者自身の要件のうちとくに重要な項目は年齢,肥満,日常生活上の活動性である,膝の要件では術前外反ストレス膝正面X線像,前十字靱帯の有無,術前の膝可動域,膝蓋・大腿関節症の重症度などが挙げられる.

 当科にて内側単顆片側置換術後2年以上経過した63例75膝を対象に成績を調査した.手術時年齢は平均71歳であった.膝機能では術前52点が術後平均5.2年調査時81点に改善し,立位膝外側角(FTA)は術前185.1°が調査時174.7°となった.可動角度は術前107°が調査時117°と有意な(p<0.01)改善をみた.

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 抄録:65歳以上の高齢者の変形性膝関節症において疼痛が強く,歩行障害があり,X線上に関節裂隙の消失を認める場合,人工膝関節の適応となる.内側または外側の片側罹患型の関節症で,反対側が保たれている場合,片側置換型の人工関節かまたは全人工関節置換術か選択に迷うことがしばしばある.今回当科にて経験した,片側置換例と術前片側置換も考慮した全置換例につき検討して両術式の適応を検討した.その結果,両術式の決定因子は,術前膝評価点数,膝蓋大腿関節の変化,骨破壊の程度,内外反変形の程度,関節の動揺性,屈曲拘縮の程度,術前体重,日常の活動性等であった.

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 抄録:片側人工膝関節置換術(UKA)はわが国ではまだあまり一般的には行われていない.UKAの手術を成功させるためには,正しい手術適応,耐用性のある機種および正確な手術手技が必要である.本論文では当院で行われた症例の術後成績を検討し,UKAの手術適応が3つに分けられることを報告した.すなわち1)理想的適応 脛骨切り(HTO)でも十分行えるが,年齢(70歳以上)や活動性からUKAを行う.術後成績は良好である.2)相対的適応 HTOの適応の限界例であり,かつ他のcompartmentが温存されており,人工膝関節置換術(TKA)を行うほどではない例.3)外側型膝関節症 外側型に対するUKAの成績は特に優れており, X線上でも緩みを全く生じない.

 またUKAをHTOおよびTKAと比較検討し,UKAの持つ長所と短所につき述べ,変形性膝関節症の手術的治療におけるUKAの位置付けを行った.

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 抄録:1977(昭和52)年から1981(昭和56)年の間に当教室で施行したSavastano型UKA19例20関節(内側一次性OA 18膝,外側二次性OA 2膝)のうち現在も経過観察出来ている15例について,日整会OA膝治療成績判定基準により分類すると,成績優良群9例と不可群6例に分けられた.これら2群を年齢,体重,屈曲拘縮,骨粗鬆症,X線学的検討並びに手術時所見の各項目に関し比較検討を行った結果,UKAの成績不良要因として屈曲拘縮,porosis, over correction, componentの内反位設置,非置換コンパートメントの状態が挙げられた.中でもover correction, prosthesisの設置角度,非置換コンパートメントの状態は重要であり,UKAを施行するにあたっては非置換コンパートメントの変性が軽度なことを確認し,componentは無理なく設置することやtibial componentが真の荷重線に垂直に,またfemur componentのloading pointがその線上に来るように確実な手術手技に習熟することが肝要である.

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 抄録:われわれは単顆片側型変形性膝関節症に対する外科的治療法の一環として昭和53年より単顆片側置換術を行っている.昭和63年からはセラミック製単顆片側置換用人工膝関節を43関節に使用している.6カ月以上経過した36関節について術後成績を検討した.患者の平均年齢は73歳,平均体重は56Kgであった.JOAスコアは術前平均51.3点が術後82.1点,FTAは術前平均185.5°が術後175.8°となった.術後の屈曲角度は平均112°であった.術後経過の良好な症例の中に脛骨コンポーネントの経年的な沈下を認めることがあり,セラミックプレートを用いた場合の骨切り量が多いためではないかと考えられた,これに対し最近ではチタンプレートの脛骨コンポーネントを使用するようにして,骨切り量を少なくしている.

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 抄録:過去18年間変形性膝関節症に対し行ってきた単顆置換術は304関節であるが,そのうち38関節に術後の合併症のため再置換を要した.脛骨板の沈み,破損,ゆるみが24関節と最も多かった.再置換の方法は脛骨板交換16関節,TKA19関節HTO1関節,大腿骨側人工関節交換2関節であった.脛骨板破損は強度の問題であるが沈下は患者の体重,骨の強度,手術法,脛骨板の面積,術後経過年数,内反矯正の良否に影響された.10年以上経過例は71関節であるが再置換を受けた12例を含め53例が生存していてADLに支障はない.TKAの完成度は高いがUKAは未だ未完成であり,これからの研究によりさらに好成績が期待できる.

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 高齢化社会の進む中で,老人の人口は増加の一途をたどり,整形外科領域においても,特に老人を対象とする疾患は増加しているのが現状である.

 現代医学はめざましい進歩をとげ,新しい診断,治療法の開発とともに高齢者に対しても積極的な手術療法が行われ,画期的な治療効果もあげてきた.しかし,一方ではその妥当性が危惧されるような実態も最近見聞されるようになってきた.例えば手術療法についてみると,患者はあたかもエスカレーターのようなマニュアルに乗せられ,また末期に近い悪性腫瘍の患者もaggressive instrumentation治療や,スパゲッティ療法によりベッドにしばられ,職業的介助者に囲まれ,次から次へと行われる最新的な医療行為に,治癒への意欲を期待するよりは,むしろ恐怖感をいだいて闘病生活を送っている患者も決して少なくない.患者のQOLのための近代的な治療がむしろ患者の心を疎外し,次第に自閉的な状況に追込んでいるのも事実である.

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 抄録:変性腰部脊柱管狭窄症の手術にあたり,筆者らは,手術椎間に辷りなどの椎間不安定性を認めない症例や,多椎間に既に変性を認める症例には,固定術を併用せず,内側椎間関節切除術(以下MF)による神経除圧のみの手術を施行してきた.1986年以後,MFを施行した変性腰部脊柱管狭窄症60例の成績を調査した.日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)では術前平均10.1点が調査時平均23.2点で,術前と比較し悪化していた症例はなかった.しかし術後早期と比較し,経過観察中にJOAスコア上低下を認めた症例が16例あった.このうち5例に神経症状の再発を認め,4例に再手術を施行した.これらの症例は,X線写真上,術前既に椎間変性が進行し,椎間腔狭小化の程度が大きかった.椎間腔の狭小化の程度を評価するにあたり,disc height ratio (DHR)が有用であった.

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 抄録:変形性膝関節症76例に対し大型床反力計を用いた多数歩連続自由歩行による歩行分析を行い,その歩行特性について検討した.床反力波形では左右方向の外向き反力を示す初期の波形のピークが不明瞭で,その後の内向き反力を示す波高が増大するのが特徴であった.時間距離因子では歩速,歩調の減少が顕著となる.歩容因子ではすべての因子が悪くなり,特に動揺性は著しく大きくなる.これらの歩行評価と臨床,X線評価との関係では,臨床評価点数の減少とFTAの増大とともに歩速は減少し,各歩容因子は悪化していく.各歩容因子のうち円滑性は他の因子と比較して臨床評価点数,FTAともに高い相関がみられた.これらの結果から変形性膝関節症患者の歩行は,時間距離因子では歩速が,歩容因子では円滑性,動揺性がその特性のよいパラメーターとなり,疼痛,下肢アライメントによって強く影響を受けていると考えられた.

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 抄録:人工股関節のデザインには多くのものがあるが,cementlessのstemの新しいものを開発し臨床症例に使用し始めた.材料はチタン合金で軽量で強剛なもので,折損や内外反挿入を避けるために極めてstraightなものとし,もっとも特徴的な新機軸としてその表面に3mm感覚で上向き斜めの沢山のステップを付けたものである.その辺縁が鋭利に出来ているために,抜去して再置換が必要になった時に上向きに叩き出せばノミの機能をもって容易に周囲の骨を削って抜去が可能で,いわば破壊工学を先き取りしたデザインとした.横断面を円形として髄腔内占居率をよくし,回旋不安定性に対し長いスリットと大転子へ食い込む突起を付した.カラーを広くして骨皮質にも適度な圧力を分散させ廃用性骨吸収を阻止することも配慮した.

 今の所bipolar ceramic headとの組み合わせで大腿骨頚部骨折,変股症に対する人工股関節として使用している.

整形外科英語ア・ラ・カルト・31

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 前回のショック,血管や血液循環に続き,今回は輸血に関することを述べる.

●transfusion(トランスフュージョン)

 輸血を正式には,“blood transfusion”というが,通常は“transfusion”と省略されることが多い.一方,輸液などの場合には,“infusion”(インフュジョン)という.言葉の“transfusion”と“infusion”とに共通な“-fusion”は,ラテン語の動詞“fundere”(フンデーレ・注ぐ)に由来している.

基礎知識/知ってるつもり

ラウエンスタイン肢位 並木 脩
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 日常診療において股関節側面像の一つにラウエンスタイン像があるが,この撮影時の肢位については必ずしも一様ではないようである.そこで,ラウエンスタイン肢位というのは正確にはどのようなものであるかを調べてみた.

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 抄録:49歳女性で転倒受傷した環軸回旋位固定のため,経口腔進入により整復固定した1例を報告する.入院後38日間の保存的治療(種々の牽引)にもかかわらず整復不能であった.facet interlockingの状態であると考え,手術にふみきった.術式は経口腔進入でC1-2間にヘガール型持針器を入れ整復,同時に前方固定術を行った.従来,環軸回旋位固定の整復は非観血的に行われているが,稀ではあるが非観血的には整復不能な症例も存在する.そのような症例に対して,まず前方よりfacet unlockingし二期的にposterior fusionをした報告はみられたが,今回,われわれは本症例において,一期的に経口腔進入により,直視下に整復し前方固定術を行い得たので報告する.

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 抄録:坐骨神経痛を主訴とし,神経学的にはL5単根性障害を呈した第1-2腰椎椎間板ヘルニアの稀な1例を経験した.67歳の女性で,急激に発症した左下腿外側痛で来院した.入院後,MRI,脊髄腔造影,CT-Myelography等の所見から,L1-2およびL5―S1外側椎間板ヘルニアが疑われた.L5単根性障害およびSLR陽性などの所見よりL5―S1外側ヘルニアの方が,より責任病巣の可能性が高いと判断しL5神経根除圧術を行った.しかし,症状の改善はなかった.2週後L1-2椎間板ヘルニアに対して前方よりヘルニア摘出と前方固定術を行い症状は全く消失した.この症例では脊髄末端がL2椎体下縁と通常よりも尾側にあり,L1-2レベルはほぼ脊髄円錐上部に相当し,またヘルニアは左側寄りではあるが,ほぼ正中に突出していた.このためL5髄節からL5神経根が分岐した付近で,ヘルニアによる圧迫が選択的に生じ,L5神経根症状が生じ,また上位腰髄神経根障害を呈さなかったのではないかと考える.

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 抄録:母指MP関節ロッキングは若年者に好発する比較的稀な過伸展損傷である.われわれは最近4年間に8例を経験した.1例は徒手整復可能であった.残りの7例は徒手整復不能で,6例では観血的に副靱帯を切離して嵌入した掌側板を整復し,1例は関節鏡視下に掌側板の一部と思われる部分を鈍棒で掌側へ押し出すことにより整復した,鏡視下整復は不必要な侵襲を避け,治癒までの期間を短縮できる有効な方法であると思われた.本症の病態について確証が得られにくいのは術野を展開中に副靱帯を切離した時点で自動的に原因が除かれ整復されてしまい,術中所見がつかみ難いためである.またその特異的な病態より通常の牽引と屈曲による徒手整復法は適切ではなく.基節骨基部に軸圧を加え中手骨骨頭関節面に沿ってそれを背側から掌側へ滑らせるという方法が有効である.

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 抄録:MRIの発達により,特発性側弯症と診断されてきた症例の中には脊髄空洞症による神経原性側弯症が数多く含まれていることが明らかにされてきたが,下垂体性小人症をも伴った症例の報告は少ない.筆者らは骨盤位,仮死分娩の既往があり,脊柱変形を主訴に当科初診し,経過中,MRI検査を行ったところ脊髄空洞症を認め,また,低伸長を主訴に小児科受診したところ,精査の結果,下垂体性小人症と診断され,成長ホルモン投与治療開始したところ,身長の急速な増加とともに,側弯も急速に増悪した1例を経験した.近年,脊髄空洞症の発生原因は異常分娩もその一つに数えられ,また,異常分娩と特発性小人症は関わりが深いとされている.脊髄空洞症と下垂体性小人症は異常分娩を介し密接な関係があると推定され,それぞれの発生原因は示唆に富むものと思われる.

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 抄録:骨傷を伴わない尺骨頭掌側脱臼を2例経験したので報告する.症例1.19歳男性.ラグビー中前腕を回外強制され受傷.受傷日に単純X線,CTにて尺骨頭掌側脱臼と診断され徒手整復後6週間ギプス固定された.症例2.21歳男性交通事故にて受傷,受傷翌日に単純X線,CTにて尺骨頭掌側脱臼と診断され徒手整復後6週間ギプス固定された.両者とも数カ月の経過後も再脱臼を認めず経過は良好である.

 尺骨頭掌側脱臼は比較的稀な外傷であり,骨傷を伴わないものはさらに少ない.臨床的にも,また単純X線でも骨傷がない場合や受傷時の肢位等により単純X線で正確な側面が撮影できず脱臼の診断が付かない場合がある。その場合確定診断にCTがきわめて有用で,遠位橈尺関節における脱臼,亜脱臼の早期診断が可能になる.尺骨頭掌側脱臼の2例を報告するとともに,早期診断におけるCTの有用性について報告した。

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 抄録:人工股関節全置換術後,ステム周囲のゆるみとステム先端部の骨折をきたし,骨折部の内固定とロングステムによる再置換を施行した2例を経験した.症例1では皮質骨が比較的残存しており,AOダイナミック コンプレッションプレートで固定可能であった.対側もゆるみがあり,支持脚とならないため,早期荷重を確実にするためセメントを使用した.術後2カ月で仮骨を認め歩行を開始した.術後5年の時点では疼痛もなく骨折部のリモデリングも良好であった.症例2では,残存する皮質骨が極めて薄く,AOプレートによる固定は不可能であり,また,セメントの保持にも不十分な強度と思われた.対側股関節が骨性強直となっており支持脚として十分期待でき,患側の長期の免荷が可能であったので,髄内に大量の骨移植を行いセメントレスのロングステムで置換した.骨折部にはon lay graftを行い,Mennen plateとソフトワイヤーで保持した.術後3カ月で骨折部の骨癒合を確認し,術後5カ月より2本杖での歩行が可能になった.

基本情報

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臨床整形外科
30巻3号 (1995年3月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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